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Full text: 254 lines
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[001]あれから二ヶ月。
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[002]クラリスちゃんのバセドウ病も
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[003]花粉症の症状が治まると同時に少しずつ良くなって、
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[004]ひとまずは寛解、今日が退院の日。
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[005]ちなみにこはくちゃんは
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[006]春先の寒波で体調を崩したことで血糖コントロールが
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[007]効かなくなった、いわゆる管理入院だったから、
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[008]二週間ほどで退院しちゃってるの。
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[009]でも、学校がお休みの度に、
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[010]クラリスちゃんのお見舞いに来て、
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[011]ふたりで病室にいるのを見る度に、
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[012]山之内さんがニヤニヤしちゃって。
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[013]……ふたりは
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[014]こんなダメな大人になっちゃいけないよ?
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[015]――って言ってあげたいのに、
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[016]くわしく説明することで
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[017]ふたりの耳を汚しちゃいそうな気がして
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[018]何も言えない……くやしいっ!!
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[019]【クラリス】
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[020]「タイヘンお世話になりました!」
>

[021]クラリスちゃんがぺこりと頭を下げる。
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[022]隣にいるさゆりちゃんは、
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[023]もう涙目になっちゃってて……。
>

[024]【クラリス】
>

[025]「わたし、さゆりや、みなさんたちのように
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[026] 病院で働けるよう、勉強しようと思います」
>

[027]【クラリス】
>

[028]「ダディは、わたしがやる気があるなら、
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[029] 医者を目指してもいいって言ってくれました!」
>

[030]【クラリス】
>

[031]「それで、こはくのような病気の子を
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[032] 治してあげたいと思います」
>

[033]【やすこ】
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[034]「ほほぅ、ドクターかぁ……。
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[035] あっちの白衣もエエよねぇ……」
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[036]【はつみ】
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[037]「勉強も大事だけど、健康も大事よ。
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[038] 勉強のしすぎで、具合が悪くなるようでは
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[039] いけないわよ?」
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[040]【クラリス】
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[041]「大丈夫! わたしが熱を出すと
>

[042] こはくが悲しそうな顔をするから!
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[043] でも、夢があるから頑張ります!」
>

[044]【なぎさ】
>

[045]「……なーんか、
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[046] どっかで聞いたことがあるセリフだわねぇ」
>

[047]クラリスちゃんは
>

[048]最後にペコリと頭を下げて
>

[049]エレベーターに乗り込んだ。
>

[050]【さゆり】
>

[051]「クラリスちゃん……元気でね……」
>

[052]【クラリス】
>

[053]「さゆりも!
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[054] 今まで本当にありがとうございました!
>

[055] じゃ、シツレイします!!」
>

[056]エレベーターの扉が
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[057]ゆっくり閉まってゆく。
>

[058]完全に閉まってから、
>

[059]思わずポツリと呟いた。
>

[060]【かおり】
>

[061]「……ねぇ、
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[062] クラリスちゃんって、
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[063] わたしのことは完全無視なの??」
>

[064]そんなこんなで、
>

[065]病棟からクラリスちゃんがいなくなっても、
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[066]わたしたちは別の患者さんを受け持ちながら、
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[067]日々、忙しく過ごしている。
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[068]そして、明日は、
>

[069]久しぶりにふたり揃ってお休みの日。
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[070]今夜はさゆりちゃんとだらだらして過ごすんだ〜!
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[071]【さゆり】
>

[072]「あっ!!」
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[073]ケータイを見て、さゆりちゃんが声を上げた。
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[074]【さゆり】
>

[075]「ねぇ、かおりさん、見て!!」
>

[076]見せられた画面には、
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[077]プールで笑ってる、水着姿のクラリスちゃんと
>

[078]こはくちゃん。
>

[079]【さゆり】
>

[080]「あのふたり……、
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[081] プールでデートなんて味な真似を……」
>

[082]あ、さゆりちゃんのスイッチがまた入ったみたい。
>

[083]もう、変なところで負けず嫌いなんだから。
>

[084]【さゆり】
>

[085]「かおりさん、明日、海に行きましょう!!」
>

[086]【かおり】
>

[087]「う、海で泳ぐにはまだ寒いと思うよ……?」
>

[088]【さゆり】
>

[089]「いいんです!
>

[090] わたしが行きたいから行くんです!!
>

[091] ……それとも、かおりさんは嫌なんですか?」
>

[092]【かおり】
>

[093]「い、嫌じゃないけど……」
>

[094]【さゆり】
>

[095]「じゃ、決まりですね!
>

[096] 明日は早起きして、お弁当作らなきゃ!!
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[097] じゃ、わたし、帰りますね、おやすみなさーい!」
>

[098]【かおり】
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[099]「えっ……ちょ、え……ええーっ!?」
>

[100]今夜はさゆりちゃんとだらだらしながら
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[101]お話しようと思ってたのにぃ〜〜〜!!
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[102]6月の海は、まだちょっと冷たい。
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[103]でも、ほぼ真上から降り注ぐ太陽の光と熱に、
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[104]ひんやりした水は気持ちがいい。
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[105]【さゆり】
>

[106]「ずっとね、
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[107] かおりさんと海に来たかったんですよー」
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[108]さゆりちゃんがはしゃいでる。
>

[109]【かおり】
>

[110]「だったら言ってくれればよかったのに。
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[111] さゆりちゃんが学生の時なら、夏休みとか、
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[112] 遊ぶ時間を目一杯、合わせられたのにぃ」
>

[113]【さゆり】
>

[114]「ダメです。
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[115] わたしは看護師になってから思う存分遊ぶんだ、って
>

[116] 決めてましたから」
>

[117]【かおり】
>

[118]「んもう、真面目だなぁ……」
>

[119]でも、こういう真面目なさゆりちゃんが
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[120]どうしようもなく大好きなんだよね……。
>

[121]【さゆり】
>

[122]「実はね、こはくちゃんが教えてくれてたんですよ、
>

[123] 彼女が退院するちょっと前に」
>

[124]【かおり】
>

[125]「えっ?」
>

[126]【さゆり】
>

[127]「ずっと病室の窓から見てた同じ海なのに、
>

[128] クラリスちゃんと会ってから、
>

[129] 何だか全然違う海に見える、って」
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[130]さゆりちゃん、
>

[131]わたしの知らない間に、
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[132]こはくちゃんとそんな話してたのね。
>

[133]【さゆり】
>

[134]「そんなこと言うから、
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[135] それは恋をしたからじゃないかな、って
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[136] 言ったら……」
>

[137]【かおり】
>

[138]「言ったら?」
>

[139]【さゆり】
>

[140]「恥ずかしそうに微笑んでました」
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[141]ああ、
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[142]奥ゆかしいこはくちゃんらしい……。
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[143]さゆりちゃんが用意してくれてたお茶を
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[144]微笑ましい気分で、ゆっくりと飲む。
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[145]【さゆり】
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[146]「わたしが入院してた頃、こはくちゃんは
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[147] まだほんの子供で、引っ込み思案で、
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[148] 泣いてばかりいる子ってイメージだったけど……」
>

[149]【さゆり】
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[150]「でも、人は成長するんですね。
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[151] あの子、笑いながら、
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[152] 退院の日に告白するんだって……言ってました」
>

[153]【かおり】
>

[154]「そっか……。
>

[155] こはくちゃん、もう子供じゃないんだ……」
>

[156]【さゆり】
>

[157]「それで、こはくちゃんから
>

[158] 女の子同士の交際のコツを教えて欲しい、って
>

[159] 言われて……」
>

[160]【かおり】
>

[161]「げほっ!?」
>

[162]思わずむせた。
>

[163]【さゆり】
>

[164]「あら、大丈夫ですか、かおりさん?
>

[165] 急いで飲むから……」
>

[166]【かおり】
>

[167]「そ、それで、さゆりちゃんは
>

[168] 何て答えたのかなぁ〜?」
>

[169]【さゆり】
>

[170]「ふふ……そんなの簡単です」
>

[171]ニコッと笑って、
>

[172]さゆりちゃんは、わたしから視線をそらして、
>

[173]キラキラした海を見た。
>

[174]【さゆり】
>

[175]「相手のことが大好きな自分の気持ちに
>

[176] ちゃんと素直になること。
>

[177] ……そう教えておきました」
>

[178]【かおり】
>

[179]「…………」
>

[180]【さゆり】
>

[181]「クラリスちゃんがかおりさんに素っ気なかったのは、
>

[182] かおりさんのことが、
>

[183] 羨ましかったからでしょうね」
>

[184]【かおり】
>

[185]「羨ましいって、何が?」
>

[186]【さゆり】
>

[187]「もう……かおりさんって、ホント鈍いですよね!
>

[188] わたしがかおりさんのこと大好きだってことが
>

[189] わかったから、でしょう?」
>

[190]【さゆり】
>

[191]「……というより、誰かから
>

[192] 100%の気持ちを向けられるあなたが
>

[193] 羨ましくてならなかったんでしょうね」
>

[194]【かおり】
>

[195]「……わたしだって、
>

[196] さゆりちゃんのこと、大好きなのに」
>

[197]【さゆり】
>

[198]「わたしは極端ですから。
>

[199] 正直言うと、かおりさんさえいれば、
>

[200] 後はどうでもいいんです」
>

[201]【さゆり】
>

[202]「でも、かおりさんは違うでしょう?」
>

[203]【さゆり】
>

[204]「藤沢さんや山之内さん、主任さんがいて、
>

[205] 更にそこにわたしがいなきゃ嫌な、
>

[206] とっても欲張りさんですもんね」
>

[207]……う、そうかも。
>

[208]【さゆり】
>

[209]「だから、いつもわたしだけを見て、なんて
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[210] ワガママは言いません。
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[211] でも、ふたりきりの時に余所見したら……」
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[212]【かおり】
>

[213]「したら……?」
>

[214]近づく顔。
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[215]【さゆり】
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[216]「ふふ、暴れます、たくさん」
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[217]【かおり】
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[218]「それは大変!
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[219] まずはマウス・トゥ・マウスで口をふさいで、
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[220] 愛情を吹き込んであげたら元に戻るかな?」
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[221]【さゆり】
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[222]「やってみてください」
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[223]【かおり】
>

[224]「そ? じゃ、やっちゃおう。
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[225] ん……、んー……っ!?」
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[226]チュッと唇を吸うのとタイミングを合わせるように、
>

[227]さゆりちゃんが息を吹き込んできた。
>

[228]【かおり】
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[229]「ささささ、さゆりちゃんっ!?」
>

[230]【さゆり】
>

[231]「うふふ……、
>

[232] 愛情は吹き込まれるより、吹き込んで、
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[233] 吸い上げられる方がいいかもですね」
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[234]【さゆり】
>

[235]「吸い上げられれば吸い上げられるほど、
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[236] 胸の奥の方から、愛情がどんどん溢れて
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[237] こぼれちゃいそうになるような気がします」
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[238]【かおり】
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[239]「……さゆりちゃん、
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[240] その言葉はちょっとえっちだよ?」
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[241]【さゆり】
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[242]「ふふ、わざとですよ。
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[243] えっちなわたしは、嫌いですか?」
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[244]くすくすと笑うさゆりちゃん。
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[245]本当に困った子だなぁ。
>

[246]けど……。
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[247] 「嫌いなわけないでしょ。
>

[248]  どんどん溢れて、
>

[249]  わたしで一杯にしてあげたいくらい、大好きよ」
>

[250]      「……うふふ、
>

[251]       かおりさん、大好き……」
>

[252]     困った子だけど、可愛いんだよね。
>

[253]      ああ、困っちゃうなぁ、
>

[254]      さゆりちゃんが、可愛すぎて。
>

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