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Full text: 193 lines
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[001]昨日は結局、なぎさ先輩から連絡がなかったな。
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[002]もう顔も見たくない、か……。
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[003]ショックだったけど……。
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[004]でも、なぎさ先輩の気持ちを考えると、
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[005]なぎさ先輩がそう言うのも当たり前だよね……。
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[006]【かおり】
>

[007]「……はぁ」
>

[008]詰所に一歩足を踏み入れる。
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[009]珍しく師長と主任さんが揃っていた。
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[010]なにやら物々しい雰囲気に、
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[011]心がザワリと嫌な予感に震える。
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[012]【常盤師長】
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[013]「申し送りの前に、
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[014] みなさんにお話したいことがあります」
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[015]ギクリと、足がすくむ。
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[016]ダメ……、聞いたらショックを受ける……。
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[017]全身の細胞が叫んでる。
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[018]でも、足が動かない……!
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[019]指も、腕も、身体が動かない、
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[020]耳をふさぐこともできない!
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[021]【常盤師長】
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[022]「昨日、当院屋上から藤沢さんが転落しました」
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[023]【かおり】
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[024]「…………!!」
>

[025]【常盤師長】
>

[026]「幸い、命に別状はありませんが、
>

[027] 未だ意識が戻りません」
>

[028]【常盤師長】
>

[029]「警察の人による現場検証から
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[030] 飛び降り自殺を図ったのだろうと断定されました。
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[031] 病院側も異論はありません」
>

[032]師長さんの声が遠くから聞こえてくる。
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[033]飛び降り自殺……?
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[034]誰が……なぎさ先輩が……?
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[035]【常盤師長】
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[036]「今日、内科病棟にも事情聴取に来ると
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[037] 先ほど連絡がありました」
>

[038]【常盤師長】
>

[039]「仕事を中断することになりますが、
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[040] みなさん、協力してください」
>

[041]【常盤師長】
>

[042]「またわかっていると思いますが、
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[043] このことを関係者以外に口外することを禁止します」
>

[044]遠くで師長さんがまだ何かしゃべってるけど、
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[045]何も聞こえてこない。
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[046]なぎさ先輩が、飛び降り自殺……?
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[047]そんな……。
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[048]頭がぐらぐらする……。
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[049]昼休み、
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[050]屋上へ続く階段をあがってみた。
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[051]けれど、屋上へのドアは施錠された上に
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[052]頑丈な鎖で封鎖されて、
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[053]もう誰も入れなくなっている。
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[054]【やすこ】
>

[055]「沢井!
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[056] ぼーっとしてんと、昼、行きや!」
>

[057]【かおり】
>

[058]「…………」
>

[059]【かおり】
>

[060]「……はぁ」
>

[061]お弁当は、膝の上に乗せただけ。
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[062]フタを開けることさえしなかった。
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[063]なぎさ先輩は
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[064]何を思って、屋上から飛び降りたんだろう……。
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[065]考えれば考えるほど、気持ちが沈んでゆく。
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[066]【さゆり】
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[067]「もう、何をしてるんですか!
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[068] 仕事中なんでしょう?
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[069] ちゃんと仕事してください!!」
>

[070]【かおり】
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[071]「……あ、うん、ごめん……」
>

[072]【さゆり】
>

[073]「ごめんで済んだら
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[074] 警察はいらないって言ってるでしょ!
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[075] だいたい、あなたは……」
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[076]堺さんがまた何か言ってる……。
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[077]ちゃんと聞いてあげないと、
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[078]もっと怒らせちゃうのがわかってるのに、
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[079]堺さんが何を言っているのか、
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[080]ちゃんと聞くことができない……。
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[081]事情聴取も受けた。
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[082]……けれど、警察の人が
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[083]何を言っているか、理解できなくて、
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[084]自分も何を言ったのか、よく覚えていない……。
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[085]……なぎさ先輩は、どうなったんだろう……?
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[086]【かおり】
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[087]「……なぎさ先輩……」
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[088]ベッドの上、ポツリとつぶやく。
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[089]頭が混乱しているのか、
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[090]それとも、わたしがバカになっちゃったのか、
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[091]よくわかんなくなってる……。
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[092]【かおり】
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[093]「…………」
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[094]あれ……、
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[095]あの音って、何だろう……?
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[096]【???】
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[097]「沢井さん?
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[098] いるんでしょう?」
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[099]あの声……、誰だっけ……?
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[100]【???】
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[101]「悪いけど、
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[102] マスターキーを使って開けるわよ!」
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[103]【はつみ】
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[104]「……いるのなら、返事くらいしなさい」
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[105]主任さんがわたしを見下ろしている。
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[106]【かおり】
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[107]「……すみません……」
>

[108]【はつみ】
>

[109]「……別に叱ったわけではないのだけれど。
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[110] まぁいいわ、あなたが無事で」
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[111]主任さんがわたしの隣に座る。
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[112]ベッドがたわんで、
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[113]わたしの身体が傾いた。
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[114]自然、主任さんにもたれる形になったけれど、
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[115]……身体を動かす気になれない。
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[116]【はつみ】
>

[117]「藤沢さんの意識が戻ったわ」
>

[118]【かおり】
>

[119]「!!」
>

[120]主任さんの言葉にはっとした。
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[121]目の前に、白い何かがぶら下げられる。
>

[122]膝の上に置かれたものは、コンビニ袋。
>

[123]【はつみ】
>

[124]「……藤沢さんから返しておいてと言われたの。
>

[125] あなたが買ってきたものよね?」
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[126]コンビニ袋から、わたしが買ったお酒と、
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[127]お菓子の箱が覗いている。
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[128]高校時代、なぎさ先輩が新発売だよと
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[129]買ってきてくれた、懐かしいお菓子……。
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[130]【かおり】
>

[131]「……っ……」
>

[132]ポロッと涙が出た。
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[133]わたしからの差し入れは、
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[134]なぎさ先輩には受け取ってもらえなかった……。
>

[135]【はつみ】
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[136]「藤沢さんに、退職したいと言われたわ。
>

[137] 病院側としては、彼女の退院を待つけれど
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[138] ……きっと復帰はないわね」
>

[139]【はつみ】
>

[140]「藤沢さんを外科に異動させた
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[141] わたしのミスだわ……。
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[142] また看護業界からひとり看護師が消えたのよ」
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[143]主任さんの言葉も遠く聞こえる。
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[144]  「最悪よ!
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[145]   あんたの顔なんて、もう見たくもないわ!!」
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[146]なぎさ先輩と交わした最後の言葉が
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[147]あんな言葉だったなんて……。
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[148]       「久しぶりね、沢井!」
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[149]  「んー、今日のところはあたしが奢っちゃう!
>

[150]   だから沢井も一緒にぴよぴよしてぇ〜」
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[151]         「…………!!」
>

[152]  「沢井が何も怖がらずに、よく眠れますように」
>

[153]   「ねぇ、沢井……、
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[154]    ……ドキドキしてる?」
>

[155]あんなに信頼し合ってたのに、
>

[156]どうしてこんなことになってしまったの……?
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[157]どうしてわたしは
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[158]なぎさ先輩を助けられなかったんだろう?
>

[159]【かおり】
>

[160]「…………」
>

[161]そっと、指で唇に触れる。
>

[162]最後のキスの感触が残ってる気がする。
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[163]……なぎさ先輩を追い詰めたのは、
>

[164]このわたし……。
>

[165]高校の時、あんなに目をキラキラさせて
>

[166]看護師になる夢を語っていたなぎさ先輩は、もういない。
>

[167]どこにもいない。
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[168]わたしが、壊してしまった……。
>

[169]【はつみ】
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[170]「……あなたは、どうするの?」
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[171]主任さんの強い視線が、わたしを貫いている。
>

[172]その視線は、同時に、
>

[173]わたしを優しく包み込んでるみたいな感じがする……。
>

[174]わたしは……。
>

[175]置き去りにされた、
>

[176]コンビニ袋が目に入る。
>

[177]【かおり】
>

[178]「わたしは……」
>

[179]ぎゅっと、拳を握り締めて。
>

[180]主任さんにもたれていた身体を起こして。
>

[181]【かおり】
>

[182]「……辞めません」
>

[183]あの頃のなぎさ先輩の夢……。
>

[184]わたしが引き継がなければ、消えてしまう。
>

[185]なぎさ先輩の夢を壊したわたしが……。
>

[186]零れ落ちる涙を、ぐいっと拭い去った。
>

[187]【かおり】
>

[188]「わたしは、
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[189] なぎさ先輩のなりたかった看護師を目指します」
>

[190]そう、なぎさ先輩の代わりに。
>

[191]あの人がいなくなった病棟で
>

[192]あの人のなりたかった看護師になる。
>

[193]――この恋心を、封印して。
>

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