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Full text: 138 lines
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[001]朝の爽やかな空気を吸って、
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[002]わたしはまだ少し眠い気持ちを吹き飛ばした。
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[003]よし、今日も頑張ろう!
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[004]うーん、と伸びをしたその時、
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[005]ふと目の端を何か人影のようなものがかすめた。
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[006]あれ?
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[007]今の……なぎさ先輩?
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[008]階段のところに
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[009]なぎさ先輩の姿が見えたような気がしたけど。
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[010]なぎさ先輩のはず、ないよね。
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[011]見間違いかなぁ?
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[012]でも、わたしがなぎさ先輩を見間違うなんて……。
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[013]なぎさ先輩の部屋は三階だし、
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[014]用事でもない限り、
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[015]わざわざ上がってくることもないよね……。
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[016]ちょっと気になったものの、
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[017]ちょうどやってきたエレベーターで
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[018]そのままロビーに降りることにした。
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[019]【かおり】
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[020]「あれ?
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[021] なぎさ先輩?」
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[022]エレベーターから降りた途端、
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[023]玄関に向かうなぎさ先輩の背中を見つけた。
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[024]【なぎさ】
>

[025]「あ、おはよ〜!
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[026] ナイスタイミングだね」
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[027]【かおり】
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[028]「おはようございます。
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[029] 朝、ここで会うなんて珍しいですね。
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[030] なぎさ先輩の方がいつも早いのに」
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[031]【なぎさ】
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[032]「あ、今日はちょっち寝坊しちゃってさ」
>

[033]【かおり】
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[034]「そうなんですか」
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[035]見慣れた、なぎさ先輩の
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[036]照れたような微笑み。
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[037]ふと先ほどのことを思い出した。
>

[038]【かおり】
>

[039]「あ、そういえばなぎさ先輩、
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[040] 階段、使ってました?」
>

[041]【なぎさ】
>

[042]「え?
>

[043] 何のこと?」
>

[044]きょとんとしたなぎさ先輩の表情を前に、
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[045]わたしは軽く小首をかしげる。
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[046]……やっぱ見間違いだったのかな。
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[047]【かおり】
>

[048]「あ、いえ。
>

[049] エレベーターに乗ってこなかったから
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[050] 階段で降りたのかなって思って」
>

[051]なぎさ先輩は軽く首を振った。
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[052]【なぎさ】
>

[053]「ううん、エレベーターで降りたよ。
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[054] ちょっと前に降りてきて、
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[055] 出勤前のコーヒー一本飲んでたの」
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[056]なぎさ先輩の視線の先にはロビーの自動販売機。
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[057]そこで缶コーヒーを買って飲んでたらしい。
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[058]【かおり】
>

[059]「そうですか」
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[060]じゃあ、一階に下りていたエレベーターは
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[061]なぎさ先輩が乗ってたものなのね。
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[062]だとすると、さっきの人影は違う人ってことで……。
>

[063]わたしはチラリと階段に目を向ける。
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[064]それにしては、あれから誰も降りてこない。
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[065]……うう、何だか気持ち悪いな。
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[066]【なぎさ】
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[067]「さっきから気にしてたみたいだけど、
>

[068] 階段がどうかしたの?」
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[069]なぎさ先輩が心配そうにわたしの顔を覗き込んでくる。
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[070]わたしは慌てて笑顔を作った。
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[071]【かおり】
>

[072]「あ、いえ。
>

[073] なんでもありません」
>

[074]なぎさ先輩に変な心配かけちゃうのは
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[075]申し訳ないもんね!
>

[076]【なぎさ】
>

[077]「そう?」
>

[078]【かおり】
>

[079]「さ、行きましょ。
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[080] 急がないと遅刻しちゃいますよ」
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[081]そう、あれは気のせい。
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[082]うん、気のせいってことにしよう!
>

[083]わたしは何も見なかった!
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[084]四階にはわたし以外の誰もいなかったし、
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[085]寮内には不審者は誰もいない!
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[086]うんうん、あれは見間違い!
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[087]【なぎさ】
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[088]「遅刻はまずいけど、たまにはゆっくり出てみるのも
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[089] いいもんだねー」
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[090]【なぎさ】
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[091]「思いがけず沢井と『同伴出勤』なんて」
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[092]【かおり】
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[093]「……何ですか、『同伴』って。
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[094] 飲み屋さんじゃないんですから……」
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[095]【なぎさ】
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[096]「えー?
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[097] じゃあ、アイアイ出勤?」
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[098]【かおり】
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[099]「アイアイって……アイアイ傘の?」
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[100]【なぎさ】
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[101]「そうそれ」
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[102]【かおり】
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[103]「でも、アイアイ傘ってもう古いかも〜」
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[104]【なぎさ】
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[105]「じゃあ……、
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[106] 今風に言うなら、ラブラブ出勤?」
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[107]【かおり】
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[108]「ラブラブも、ちょっと古いような……」
>

[109]【なぎさ】
>

[110]「ええっ!?
>

[111] いまどきの子ってラブラブ言わないの!?」
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[112]【かおり】
>

[113]「いや、言いますけどね。
>

[114] でもラブラブ出勤ってのは
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[115] なんか違うような気がしません?」
>

[116]【なぎさ】
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[117]「うーん……、ラブラブ……、
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[118] アッチッチ……、チョベリグ……。
>

[119] しっくり来ない……」
>

[120]頭ぐるぐるのなぎさ先輩を横目に、
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[121]わたしはふと腕時計の針を見た。
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[122]ギョッ!?
>

[123]【かおり】
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[124]「ちょっ、なぎさ先輩!!
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[125] そんなこと考えてる場合じゃないです!」
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[126]わたしは自分の腕時計を示してみせる。
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[127]【かおり】
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[128]「急がないと着替える時間ないですよ!」
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[129]【なぎさ】
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[130]「うわっ、ホントだ!
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[131] 沢井、お先っ!」
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[132]【かおり】
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[133]「わっ、ずるい!
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[134] なぎさ先輩ったら、待ってくださいよーっ!」
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[135]駆け出したなぎさ先輩。
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[136]わたしたちは大慌てで病院に向かって駆け出した。
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[137]……でも、ラブラブ出勤、かぁ。
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[138]そういうのも、いいかもね!!
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List of all oneshots
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Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
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