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Full text: 119 lines
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[001]今日も無事に仕事が終わった。
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[002]白衣を脱いで、私服に着替えるとホッとする。
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[003]【なぎさ】
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[004]「今日はどうする?」
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[005]【かおり】
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[006]「……お腹減りました……」
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[007]【なぎさ】
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[008]「沢井は色気がないなぁ、
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[009] 開口一番にお腹減った、だなんて!」
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[010]【かおり】
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[011]「じゃあ、なぎさ先輩は
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[012] お腹減ってないんですか?」
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[013]【なぎさ】
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[014]「んもー、拗ねちゃって、沢井ったら!
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[015] お腹減ってないなんて
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[016] 一言も言ってないでしょ〜!」
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[017]むにっと鼻を摘ままれる。
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[018]【なぎさ】
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[019]「そうやって、すぐむきになるところが
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[020] 沢井の可愛いところよねー」
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[021]【かおり】
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[022]「……うう、
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[023] なぎさセンパイのイジワル〜ぅっ」
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[024]ぷいっとそっぽを向いて、一歩
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[025]踏み出したその時――。
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[026]ヘナヘナとその場にへたり込む。
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[027]【かおり】
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[028]「…………」
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[029]今……、車が……。
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[030]【なぎさ】
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[031]「沢井!!」
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[032]わたし……、今、
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[033]車に轢かれそうになった……?
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[034]【なぎさ】
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[035]「沢井、大丈夫!?
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[036] 怪我はない!?」
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[037]【かおり】
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[038]「……は、は…い……」
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[039]ガクガクと身体が震える。
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[040]運転席で強張った運転手の顔。
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[041]驚いたような運転手の顔。
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[042]……笑っている、運転手の顔。
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[043]今の車の運転手さんは……笑ってた?
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[044]もしかして、わたしを狙って……?
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[045]  「そんなに驚かなくてもいいでしょう?
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[046]   あなた、イロイロな意味で目立つ人、だしね」
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[047]      「自分が目立っていると
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[048]       自覚してなかったんですか?
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[049]       ……はっ、おめでたい人」
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[050]     「わたし、あなたみたいな人って、
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[051]      ほんと大っ嫌い」
>

[052]……もしかして、さっきの車の運転手さんも
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[053]わたしの知らないところで、わたしを知っていて、
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[054]わかっていて突っ込んできた、とか……?
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[055]……わたし、
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[056]殺されちゃうの……?
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[057]【なぎさ】
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[058]「……にしても、
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[059] さっきのドライバー、運転荒いわねぇ!
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[060] ねぇ、沢井、大丈夫?」
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[061]【かおり】
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[062]「……ろされちゃうの?」
>

[063]【なぎさ】
>

[064]「沢井?」
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[065]【かおり】
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[066]「わたし、殺されちゃうの!?
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[067] ねぇ、わたし、狙われてるの!?」
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[068]目の前で、
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[069]わたしの顔を覗き込んでいる人に
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[070]縋りつく。
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[071]【なぎさ】
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[072]「ちょ、沢井!?」
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[073]【かおり】
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[074]「わたし、何もしてないのに!
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[075] それなのに、殺されちゃうの!?」
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[076]【なぎさ】
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[077]「さ、沢井……?」
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[078]【かおり】
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[079]「やだ! やだよう!
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[080] 殺されるのなんて、やだよぅ!!」
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[081]【なぎさ】
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[082]「そうね……。
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[083] 殺されちゃうのかもね」
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[084]誰かが耳元にささやいた。
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[085]やっぱり、わたし、
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[086]殺されちゃうんだ!!
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[087]【かおり】
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[088]「いやっ!
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[089] わたし、まだ死にたくないっ!」
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[090]【なぎさ】
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[091]「大丈夫よ、大丈夫。
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[092] あたしの側にいれば、大丈夫よ」
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[093]誰かが大丈夫だとささやいてくれた。
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[094]【かおり】
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[095]「大丈夫……なの……?」
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[096]【なぎさ】
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[097]「そうよ、大丈夫。
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[098] あたしが守ってあげるから」
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[099]その言葉で、
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[100]少し心が軽くなる。
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[101]【なぎさ】
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[102]「顔を上げて?
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[103] 顔を上げて、あたしを見て?」
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[104]言われるままに顔を上げる。
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[105]目の前には……優しく微笑む、なぎさ先輩がいる。
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[106]【かおり】
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[107]「……なぎさ、せんぱい……?」
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[108]【なぎさ】
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[109]「そうよ。
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[110] あたしが守ってあげる。
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[111] だから、大丈夫」
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[112]なぎさ先輩が、ぎゅっと抱きしめてくれた。
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[113]そのぬくもりに、
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[114]強張っていた身体の力が抜ける。
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[115]【なぎさ】
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[116]「部屋に帰ろう?
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[117] あたしが連れて帰ってあげる」
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[118]優しく立たされて、
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[119]わたしはコクリとうなずいた。
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Hana ni Arashi
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Honto no Kokoro
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