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バシャバシャと音を立てて、波打ち際から浜辺へ向かう。
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トンデモなことをしたけれど、私も奈岐も怪我一つ無く、
全身ずぶ濡れになる程度で収まってくれた。
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「うぅ……靴の中の海水が気持ち悪いぃ……」
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踏み出すたび、スニーカーの中で雑巾を絞るかのように、
海水が溢れ出していく。
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「…………」
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同じく海水を滴らせる奈岐の表情は――とても不(BROKEN:8_20)
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無理矢理、勾玉は取り返したようなものだったし、
一緒に海へ落ちるなんて真似までさせてしまった。
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「えーと……奈岐?」
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「……すごく不(BROKEN:8_20)
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表情を見て分からないのかと奈岐が頬を少し膨らませる。
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私は手の中に戻ってきてくれた勾玉を再確認してから、
波打ち際で佇む奈岐の手を取った。
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「奈岐、助けてくれてありがとう」
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「そうさせたのは……鼎自身だ。あんなやり方は卑怯だ」
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「あはは……でも、ああでもしないと勾玉を無くしちゃうし、
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眉間に皺を寄せた奈岐が長い息を吐き出す。
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「はぁ……海に落ちた時、頭を打ったのかもしれないな」
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「えっ……?」
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そういう意味じゃないと奈岐は首を少しだけ振るう。
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「鼎に勾玉は返す。盗んだことも謝る」
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淡々と言い放った後、奈岐の瞳が私を見上げる。
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「それから……鼎のことを信じてみようと思った」
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「奈岐……?」
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まばたきをする私を奈岐の双眸が見つめていた。
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私のことを信じてみる……それって……。
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「鼎は、あんな無茶をするぐらい奈岐を信じてくれていた」
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「崖の上から生身で飛ぶなんて、悪い夢を見ているみたいだ……。
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勾玉を奈岐が投げ捨てた時、
私は迷わずに飛び降りることを選んでいた。
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私を守ると言った奈岐の言葉が絶対だと信じられたから、
迷うことなんて無かったんだと思う。
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「鼎が信じてくれている分だけ……
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「奈岐……」
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少し冷たい奈岐の手が私の手を握りかえしてくれた。
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「ただ一つだけ――鼎が巫女になるなら、奈岐も巫女になる」
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「鼎の一か八かに、奈岐も賭けてみる。鼎と一緒に行く」
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そう告げてくれた奈岐の瞳は決意に満ちたものだったけれど、
何故かすぐに視線を逸らしてしまう。
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「奈岐……?」
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「鼎は……今回みたいに、またとんでもない無茶をしでかすかも
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照れながらもはっきりと言葉にしてくれた奈岐に、私は微笑む。
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「奈岐……ありがと」
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そして、繋いだ手を離す代わりに、水浸しの身体を抱きしめる。
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「……やっぱり奈岐は頭を打ったのかもしれない」
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「ふふっ。それって、すごく都合のいい場所を打ってくれたね」
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「まったくだ」
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苦笑しつつ答えた奈岐が私の背中に手を回す。
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寄りかかるように密着して、互いの距離をゼロに近づける。
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「ずぶ濡れでこうするのって何だか変な感じ」
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「でも、嫌じゃない」
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「あ、素直だ」
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「だって……」
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口籠もった奈岐が私の腕の中でもぞもぞと動く。
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「だって?」
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「服が濡れているから……いつもより鼎の体温を感じるし」
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「そうだね、私も奈岐がよく分かる」
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触れ合った部分が温かくて心地良い。
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体温が奈岐の存在を身体に教えてくれているようにも思えて、
もっと触れていたくなる。
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繰り返される潮騒を耳にしながら、奈岐の後ろ髪を撫でていく。
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「あ、あれ……?(BROKEN:8_20)
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「だって、ずぶ濡れだし……奈岐は髪の量が多いから……」
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「あはは、早く帰って洗った方がよさそうだね」
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そう言って離れようとした時、奈岐の腕が一際強く私を抱いた。
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「奈岐?」
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「もう一回だけ……こうしてていい?」
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消え入りそうな小声だったけれど、ちゃんと聞こえたから、
私は頷いておく。
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それから、もう一度、奈岐の体温を求めるように身体を寄せ合い、少し強いぐらいに抱きしめる。
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「鼎……海水を流すだけなら、いい場所があるから」
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「いい場所?」
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「うん、いい場所――奈岐のとっておき」
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私に身を預けながら、奈岐は心地良さそうに言っていた。
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「鼎、こっち。行こう」
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身体が離れ、その代わりに再び手と手が繋がる。
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そして、奈岐に誘われながら、私は浜辺を歩き始めた。
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The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
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Hayate X Blade
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