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時間は進んで、夕食後――。
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由布に一言断ってから、こそこそと奈岐の部屋にやってきていた。
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謹慎といっても、それほど厳しいわけではなく、
思いの外、自由に動いてもいいらしい。
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その理由として、巫女候補が謹慎中なんて他の学生に知られたら、御花会の尊厳に関わる――というものがある。
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「謹慎中、本当に外へ出ないつもりか?」
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「巫女の力を使って、また事故でも起こしたら、
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「……でも、何もしないのは暇だ」
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少し拗ねたように言った奈岐がベッドで横になる。
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その時、部屋のドアが元気よくノックされた。
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「やっほー、ナギっち、カナカナー」
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と、こちらも元気な八弥子さんの声が聞こえてくる。
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「禰津の奴か……入れてもいいぞ」
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部屋の主の許可が出たので、私は複雑な構造になっている鍵を
一つずつ外して、ドアを開ける。
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「二人とも元気してるー?(BROKEN:8_20)
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「耳が早いな、御花会で話があったか?」
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奈岐が身を起こし、八弥子さんに顔を向けた。
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「うん、今日の御花会でね。例の火事と落石の件も含めて、
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「私と奈岐の行動、全部明るみにされたわけですね」
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八弥子さんの頭についていたガジが飛び降りて、
奈岐のところへ駆けていく。
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「その情報は学園と松籟会の耳にも入るだろう。
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ベッドの上に来たガジを抱きかかえながら奈岐がため息をついた。
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「んー、穢れを独自に祓ってるって聞いたけどさ、
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「それは私と鼎だけの秘密になっている」
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「えぇ~……ナギっち、つれない」
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「前にも言ったが、危険なことだ。禰津は関わらない方がいい」
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「また、それ?(BROKEN:8_20)
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頬を膨らませた八弥子さんが空いているベッドで横になる。
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分かりやすく拗ねた様子に少しだけ苦笑してしまう。
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でも……危険なこと、か。
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以前に奈岐が八弥子さんは戦うべきじゃない、と言っていた。
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その理由は聞き損ねていたけれど……と考えていた時、
奈岐が視線で私を呼ぶ。
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「……?」
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私が歩み寄ると、小声で耳打ちしてきた。
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「――鼎、それは禰津と私の秘密だ」
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八弥子さんのため、触れない方がいい話なのかな?
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そういうこと、と奈岐が頷いていた。
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でも、気になってしまう……という考えを強引に振り払い、
奈岐のところにいたガジの喉を撫でる。
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「ね、カナカナ、次の模擬戦も一人で参加するつもり?」
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「うーん、奈岐を説得出来たとしても……
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「んー?(BROKEN:8_20)
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起き上がった八弥子さんが不思議そうな瞳で私を見る。
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「もし本気出して炎と氷でぶつかっちゃうと、
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「あー、そういうことかぁ……どーんっ、だよね?」
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「どーん、ですね。霧も出て、問題になるかもしれません」
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私と奈岐が謹慎中は静かだろうけど、また霧が出て、
騒ぎになるのは大問題だろう。
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「ナギっち、何かいい方(BROKEN:8_20)
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「まだ一度失敗しただけだ。二度目は時間をかけすぎて、
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「でも、どっちが助けるにしても相性悪いよね?」
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眉を顰めた奈岐が腕を組んで考え込む。
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「……お互いに衝突しない範囲を見極めるしかない」
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実戦……やっぱり経験が必要、かぁ。
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「どこかで練習出来たらいいんだろうけど……うーん?」
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「どこか、か……」
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何かを思いついたのか、奈岐が立ち上がると、机の上にある本を
片付けて、地図を広げた。
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「昼は論外として――夜、寮から死角になる場所を探す」
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私と八弥子さんが顔を見合わせ、奈岐のいる机に向かう。
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「ねえねえ、ナギっち、夜ってまた出歩くつもりなの?」
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「それしか試す方(BROKEN:8_20)
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奈岐が細い指を広げて、寮との距離を測っていく。
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「うーん……前に行った海岸は?」
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「森を抜けたところか。そうだな、あそこなら人目につかない
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奈岐の力を初めて見た海岸を思い出す。
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北に向かって起伏になっているなら、森の木々があの海岸を隠してくれるはず。
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奈岐がマーカーを取り出すと、地図に印を入れる。
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「鼎、明日にでも行ってみよう」
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「明日って……奈岐、謹慎は?」
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「処分より、私は鼎との関係を優先する」
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「関係を優先って……それ、ちょっと違う意味に聞こえたり」
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「そ、そんな意味じゃ……!」
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言ってから自分の言葉の恥ずかしさに気付き、
奈岐の顔が赤くなっていく。
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「ガジ、聞いた?(BROKEN:8_20)
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「ち、違うっ!(BROKEN:8_20)
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「えっ、言葉のあやなんだ……ちょっと寂しいな」
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心の中で、ちょっと寂しいのは本当、と繰り返しておく。
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「っ……か、鼎っ!(BROKEN:8_20)
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「お、修羅場の予感。こうなったらヤヤはお邪魔かなー?」
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「禰津、悪乗りするなっ!(BROKEN:8_20)
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奈岐はマーカーを放り出し、ベッドでシーツにくるまってしまう。
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私と八弥子さんはそんな奈岐を見て、吹き出すように微笑む。
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《ごめんごめん、ちょっと私も悪乗りしちゃった》
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と心の中で謝っておく。
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「……ん?」
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しかし、奈岐からの反応は無く、シーツにくるまったまま。
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「あーあ、ナギっち、拗ねちゃってる」
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「す、拗ねてないっ……!」
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シーツから顔だけ突き出して、八弥子さんに抗議する。
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あれ、さっきの聞こえてなかった……?
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「さっきの……?(BROKEN:8_20)
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「あ、ううん、何でもないっ」
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さっきの心の声が届いてない……?
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もしかして、シーツに隠れていたから?
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私が考えを巡らせていると、奈岐はどこか納得したように
口元を緩ませる。
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「ああ、そういうことか――」
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「この目で見ないと分からない仕組みだ」
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なるほど。そういえば……理事長は考えを読むことを、
覗き見る、と繰り返していた。
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そっか、テレパシーみたいな感覚で考えていたけど、
目で見て、ようやく知ることが出来るんだ。
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「ん~?(BROKEN:8_20)
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「ふふんっ、そんなところです」
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もう一つ奈岐のことが分かった気持ちが嬉しくて微笑んでしまう。
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「へぇ~、ヤヤが知らない間に二人ともラブラブだ」
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「ね、禰津っ……それは……その……なんでもないっ!」
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口籠もった奈岐が再びシーツの中に隠れてしまった。
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「あ、否定しなかった」
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「否定しなかったねー」
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「ううぅぅー……二人とも、覚えておけよっ……」
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一度照れ出すとなかなか戻って来られない奈岐を眺めながら、
私と八弥子さんは再び吹き出して微笑む。
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そんな楽しい時間を過ごしている間にも、
謹慎一日目の夜が更けていく――。
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Summer Fuse
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Cubic Starship
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The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
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