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部屋に戻り、背中で扉を閉めた。
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気付かない間に汗をかいていたのか、背中にキャミが張り付く。
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「おかえり、今日は早かったみたいね」
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寝る準備をしていたのか、既にパジャマ姿の由布が声をかける。
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文庫本らしきものを手にしてベッドに腰をかけていた。
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「た、ただいま……」
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「どうしたの?(BROKEN:8_20)
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「疲れてて……調子悪いのかも」
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そう言った時、突然ドアがノックされる。
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「ッ――!?」
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背中をドアにつけていた私はまた飛び上がりそうになってしまう。
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「由布?(BROKEN:8_20)
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「神住姉様?」
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由布は私を不思議がるように見た後、ベッドから立ち上がる。
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「今、開けます」
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そこ邪魔と由布に視線で言われてしまい、私はドアから離れた。
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すぐにドアが開き、遠山先輩の姿を見せる。
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「由布、ありがとう。高遠さん、ロビーでお待ち頂くようにと
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「すみません……ちょっと体調が悪くて……」
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「外出しようとしていた方に体調が、と言われましても……
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遠山先輩がここに来たということは、もう奈岐との話は終わった?
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理事長は遠山先輩に私達のことを知らせたと言っていた。
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もしかして、鬼子の――見鬼のことも?
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でも、そんなことを知ったら……遠山先輩なら、奈岐と話すことを避けるはず。
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「ちょっと……あんた、大丈夫?」
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「あ……う、うん……」
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由布につつかれて正気に戻ってくる。
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「少しお話をしたいところでしたが……日を改めましょう」
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「高遠さんと向山先輩の二人には謹慎処分が下る予定です。
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「謹慎処分って……」
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「心当たりがないとは言えないはずです」
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全部、知った上で――でも、奈岐はこの話を呑んだの?
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「朝には連絡が行くはずです。それでは、おやすみなさいませ」
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「あ、神住姉様っ、おやすみなさいっ」
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由布の声を聞いた後、遠山先輩が部屋から出て行く。
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そして、僅かな静寂の後、由布の視線が私に向かった。
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「謹慎って……あんた達、何したの?(BROKEN:8_20)
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「……ごめん、ちょっと横になるね」
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由布に一言だけ断って、おぼつかない足取りでベッドに向かう。
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そのまま倒れ込むようにして、枕に顔を埋める。
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由布が何か声をかけてくれるのが聞こえたけれど、
返事をする気力もなく、私は目を閉じたまま動けなかった。
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しばらくして消灯の時間が来たのか部屋の電気が落とされる。
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暗い天井を見上げたまま、ゆっくりと息を吐き出していく。
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私、何をこんなに……動揺しているんだろう?
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何をそこまで怖がっているんだろう?
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目を閉じれば、私の考えを全て覗き込んだ上で、
楽しげに笑う理事長の顔が思い浮かぶ。
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鬼子、見鬼――そんな言葉ばかり頭の中でぐるぐると回る。
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息を吐き出す唇がまだ震えていた。
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「…………」
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シーツをきつく握り締める。
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今の私……絶対に奈岐に会えない。
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頭からシーツを被り、怯えるように身を丸くする。
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こんな気持ちが知られたら、こんな気持ちを見られてしまったら。
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奥歯を強く噛み締め、必死に目を閉じる。
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色んなモノが怖く思えて、すがるようにお母さんの勾玉を握り、
私はシーツにくるまったまま、震え続けた。
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List of all oneshots
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(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies