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[Narration]
そこは、大講堂の二階と一階をつなぐ、いくつもある階段の中で、メインスロープの役割を果たしていた。
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[Narration]
そこを、ゆっくりと降りてくる少女がいる。
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[Narration]
ゆるやかにひるがえるドレス。漆黒の長い髪が、一段一段おりるのにあわせて揺れる。
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[Narration]
ドレスは照明を照り返して純白に輝く。向けられたまぶしげな視線は、褐色の肌に吸い込まれる。鮮やかすぎるコントラストを一人で作り出していた。
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[Narration]
まっすぐに背を伸ばして、階段をおりてくる。誇らしささえある顔で、まっすぐに杏里を見つめる。
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[Aisha]
杏里……。
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[Narration]
淡く色づけられた唇が、杏里の名を呼ぶ。しかし、杏里には返事ができなかった。その姿に魅入られて、ただ、呆然と見つめるだけだった。
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[Aisha]
杏里……?
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[Anri]
あ、ああ。アイーシャ……。
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[Narration]
再び名を呼ばれて、やっと声が出る。杏里の答えに、アイーシャが微かに笑う。
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[Aisha]
そうよ。私よ、杏里……。
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[Narration]
囁くほどの声が、杏里の耳に入ると頭の中でこだまする。アイーシャだけに結像された視界の中で、その手が杏里に向かって差し出される。
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[Narration]
杏里の手は、それをとても自動的に受け止めた。
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[Narration]
杏里に最後の数段をエスコートされて、注視の中、アイーシャはホールへとおり立った。
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[Narration]
そのままホールの中央へと進んでいく二人を中心に置き、数メートルの空間をあけて、人の輪が形作られる。
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[Narration]
杏里とアイーシャが足をとめると、指揮者のタクトが振り上げられる。そして、オーケストラが円舞曲を奏でだす。
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[Narration]
三拍子のゆったりとした音の流れに、二人はそのまま体を乗せる。
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[Narration]
白いドレスの裾と結われた黒い髪が、アイーシャの体の揺れにあわせて広がり、なびく。
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[Aisha]
杏里、踊れたのね。
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[Narration]
ステップを踏みながら、アイーシャは少し杏里の胸にもたれるようにして踊る。その胸元からの囁きに杏里は答えた。
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[Anri]
うん……。それに、リードするのは慣れてるから……。
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[Aisha]
杏里らしいわ。ねぇ、このドレス、杏里が選んでくれたものよ。憶えてる?
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[Anri]
うん……。すごく似合ってる。
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[Aisha]
ほんと……?
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[Anri]
うん……。見とれた……。
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[Aisha]
嬉しい……。着てきてよかった……。
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[Aisha]
……遅くなってごめんなさい。
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[Anri]
そうだね……、少し待ったし、捜しちゃったけど……、すまなく思うことはないよ。
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[Aisha]
ありがとう……。なんだか、夢みたいよ。
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[Anri]
何が?
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[Aisha]
……船を降りる最後に、杏里とこうして踊れるなんて思わなかったから。
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[Aisha]
このまま、ずっと音楽が終わらなければいいのに……。
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[Anri]
ボクも、少しだけそう思う。今、アイーシャと踊ってることが、すごい幸せに感じられる。でも……。
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[Narration]
杏里は、すっと体をずらして、アイーシャから離れる。同時に、オーケストラは最終小節を奏で終える。
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[Anri]
終わらない曲っていうのはないよね。
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[Aisha]
そうね。
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[Narration]
わずかな距離を置いて、二人は向き合っている。
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[Aisha]
話があるって言ってたわよね、杏里。
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[Anri]
うん……。でも、ここじゃちょっとかな。
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[Aisha]
私は別にかまわないけど。……そうね、外に出ましょう。きっときれいよ、夕陽が。
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List of all oneshots
List of all series

(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies