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[Anri]
あれ?
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[Narration]
普段通りの学園生活が送られるポーラースターの日常。
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[Narration]
その午後の最初の授業が終わった後、何気なく自分の手帳を開いていた杏里が、声をあげた。
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[Helena]
どうしたの、杏里。
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[Helena]
さっきの授業で、なにかわからないことでもあった? 教えてあげるわよ?
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[Anri]
あ、いや、そうじゃないよ。なんせ、さっきの授業はほとんど寝てたからわからないもなにも……。
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[Helena]
なんですって……? 杏里!
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[Anri]
わわっ、口がすべった! ごめん、ヘレナ、お説教はまた、今度にしてよ。ボクは今、重大なことに気づいたんだ。
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[Helena]
……あとでしっかり、復習させてあげますからね。それでなに? 何に気づいたの?
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[Anri]
うん、今こうして、手帳を見返していたんだけどね……。
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[Anri]
ボク、アイーシャの誕生日を知らなかったんだ!見て、ほら! どこにも彼女の誕生日を祝うスケジュールが書き込まれていない!
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[Anri]
ああ、なんてことだろう!そんな素晴らしい日を、ボクは今まで、知らなかったことすら気にせずにいたなんて!
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[Helena]
………………。
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[Anri]
アイーシャを初めて知った日も、言葉を交わした日も、そして、ともに夜を過ごした日も、欠かさず記録してあるというのに……。
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[Anri]
彼女がこの世に生を受けたその日を、ボクは知らずにいたなんて! ああ、このままではとても、アイーシャのすべてを愛しているなんて、ボクは世界中に告げることはできない!
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[Helena]
………………。
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[Anri]
ねぇ、ヘレナ……。君はアイーシャの誕生日、知ってる?
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[Helena]
知りません!
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[Narration]
バン、と杏里の目の前の机を叩いて、ヘレナは答える。それから、やや顔を赤らめて、杏里とその手帳を見比べる。
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[Helena]
ね、ねぇ、杏里……。
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[Anri]
なに?
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[Helena]
その手帳、何でも書いてあるみたいだけど……、その……、もしかして、私の部屋に泊まったこととかも……。
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[Anri]
ああっ! 心配しなくてもいいよ、ヘレナ! キミと過ごした日々のことだってちゃんと記してあるよ。キミとどれだけ愛を交わしたか、どこで……。
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[Helena]
な、何を考えてるのよ! 消して!今すぐ消しなさい!
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[Anri]
えええっ!? そんなことできないよ!
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[Helena]
ぼ、没収します、そんな手帳! 渡しなさい!
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[Anri]
ああっ、ダメだよ、ヘレナ! わ、わわっ!
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[Aisha]
え?
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[Narration]
息せき切って駆け寄ってきた杏里の、開口一番の質問に、アイーシャは面くらい、ただ、聞き返すだけだった。
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[Aisha]
ごめんなさい、杏里、なんて言ったの?
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[Anri]
だからさ!
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[Narration]
どこをどう捜してきたのか、この広いポーラースターを全力疾走してアイーシャを見つけだした杏里は、まだ切れる息をものともせず、言葉を続けた。
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[Anri]
ボクとしたことが、今までキミの誕生日を知らなかったんだ。この罪への罰ならいくらでもどんなものでも受けるよ。
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[Anri]
ただ、無知のままではいられないのさ。アイーシャ、キミの誕生日を教えてほしいんだ!
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[Aisha]
誕生日……。
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[Narration]
その言葉を、アイーシャは繰り返す。
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[Anri]
どうしたの?
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[Narration]
その緑色の瞳に翳りが浮かんだ気がして、杏里はアイーシャに問いかける。
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[Aisha]
ううん。
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[Narration]
わずかに首をふって、アイーシャは杏里に向き直った。
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[Aisha]
でも、そんなことを聞いてどうするの?
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[Anri]
そりゃもちろん!
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[Anri]
お祝いするのさ! なんて言ったって、キミがこの世に生まれてきた日だからね! キミが生まれてこなければ、ボクとの出会いもなかった。
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[Anri]
つまり、ボクとキミの幸せな日々もなかった! 今、キミとこうしていられる運命と幸福を紡ぎ出してきた日なんだよ!
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[Anri]
感謝しなくちゃ! キミを生んだご両親と、神様と、この運命に! パーティーはそのために開かれるのさ!
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[Aisha]
そ、そう……。
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[Narration]
まくしたてる杏里の勢いに押されて、アイーシャはぎこちなく笑って、半歩、下がる。
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[Anri]
あれ? もしかして、もう過ぎちゃった?でも、きっと、一日や二日、一週間やひと月ふた月くらい、誰だって気にしないと思うよ。
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[Anri]
キミのための祝祭なんだからね!
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[Aisha]
いえ、まだ……。
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[Anri]
まだなんだ! ワォ! それはいつなんだい!?
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[Aisha]
ええと……。
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[Narration]
アイーシャは一瞬だけ、視線をわずかにそらせた後、杏里に向かって、笑って答えた。
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[Aisha]
その、忘れちゃったわ。
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[Anri]
え?
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[Narration]
予想もしない言葉に、杏里は首をカタンと傾げて聞き返す。
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[Anri]
えっと? ふつう、誕生日なんて忘れないよね?
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[Aisha]
私、普通じゃないかしら……。
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[Anri]
うん、キミはとびきり素敵な女の子だ!
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[Anri]
それで、誕生日は?
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[Aisha]
ごめんなさい、思い出せないの。
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[Anri]
えーっ!?
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[Aisha]
ごめんなさい、杏里。それにほら、言うでしょう? 女性に年齢を聞いてはいけないって。
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[Anri]
それは年齢の話だよ!第一、アイーシャの年齢なら知ってるもの。ボクが知りたいのは……。
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[Aisha]
ごめんなさい、ね、杏里。
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[Narration]
そう言って、それでも最後まで笑顔のまま、アイーシャは杏里に詫びる。
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[Narration]
そして、杏里の追撃が途絶えた一瞬の隙をついて、その場をすっと離れた。
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[Aisha]
じゃあね、杏里。私、行くところがあるから。
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[Anri]
アイーシャ!
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[Narration]
捜しだしての会話の目的は果たされないまま、杏里はアイーシャの後ろ姿を見送るしかなかった。
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[Anri]
……なんだろう、どうしたって言うのかな、アイーシャ……。
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[Anri]
と言う具合で、なんか、うまくかわされちゃって。
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[Chloe]
お願いだから、杏里、そういうバカなことをした後に、わたしのところにこないで。
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[Narration]
カウンターに肘をついて話しかけてくる杏里に、クローエは手元に置いたハードカバーから目も上げずに答える。
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[Chloe]
きっと、杏里に教えたくなかったんでしょ。
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[Anri]
そんな意地悪な子じゃないよ、アイーシャは!
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[Chloe]
そんなもなにも、知ったことじゃないのよ。
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[Narration]
クローエはようやく、本から視線をあげ、杏里をにらみ据える。
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[Chloe]
杏里、そろそろいい加減にしてもらえないかしら?
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[Chloe]
あなた、いったい、なんの目的があって、わたしの読書時間と静寂を奪い取ろうというわけ?
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[Anri]
わわわっ、こ、怖いよ、クローエ。きれいな顔がだいなしだ!
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[Chloe]
あなたのきれいな顔と頭を粉砕してあげましょうか?
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[Anri]
わかったよ! 本題に入るよ!
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[Anri]
こういったわけだからさ、アイーシャの誕生日はクローエに教えてもらおうと思って。
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[Chloe]
わたしがあの子の誕生日を知っているわけがないでしょう?
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[Anri]
でも、図書室のコンピューターの扱いは知ってるだろう?
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[Chloe]
なるほどね……。
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[Narration]
杏里の意図をクローエは理解する。杏里は、クローエに全学生のデータが入っている図書室の利用者データを使って調べてほしいと思っているのだ。
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[Chloe]
はぁ……。
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[Narration]
それを知って、クローエはため息をつく。
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[Anri]
もちろん、キミに迷惑はかけないよ、クローエ。
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[Chloe]
迷惑なんて、今こうして、読書の時間を邪魔されている以上のものではないわ。わたしは、あなたのバカさ加減に呆れているのよ。
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[Anri]
え?
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[Chloe]
あのね、杏里。
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[Chloe]
もし、図書室のデータの中に、アイーシャの誕生日が入っているのなら……。
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[Chloe]
あなた、あんなに苦労することはなかったんじゃないの?
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[Anri]
え?
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[Narration]
杏里はクローエの問いかけの意味がわからずに、聞き返す。
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[Chloe]
あなた、あの子の正体を探ろうとして、ここで大騒ぎをしてたんでしょう?
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[Anri]
ああっ!
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[Narration]
クローエの言葉に、杏里はアイーシャと出会った時のことを思い出す。
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[Anri]
あれ? でも、あの時はアイーシャの双子のお姉さんがいるかどうかを捜してもらって……いや、それよりも、ボクは代本板を探して……?
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[Chloe]
あら、記憶障害?
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[Anri]
うーん、どうも図書室とは相性が悪いよ。しょっちゅう記憶が飛ぶんだ。
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[Chloe]
ご愁傷様。
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[Anri]
クローエ、ボクのこの記憶の混乱と、キミの行いについて、少しは考えを及ばせてもらえないかな?
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[Chloe]
そんな気はないわね。頭が悪いのなら、医務室に行きなさい。
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[Chloe]
ここは学ぶべき者のための場所なのだから。記憶力と学習能力を身につけてから、来てほしいわね。
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[Anri]
あ、そうか!
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[Chloe]
なによ、今度は。
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[Anri]
医務室のデータを見せてもらえばいいんだ! あそこなら絶対に、誕生日も登録してあるにちがいないものね!
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[Anri]
ありがとう、クローエ。キミのおかげで、この問題に光が射したよ! じゃ、早速行ってくる!
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[Narration]
そう言うなり、杏里はすっとカウンターから身を乗り出し、クローエの頬にキスを送る。そして、さっと身をひるがえすや、あっという間に図書室から出ていった。
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[Chloe]
なによ……。
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[Narration]
杏里の唇のふれた頬に手を当てて、クローエはひとりつぶやく。
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[Chloe]
まったく、もう少し考えてから行動できないのかしら。医務室が、杏里にそんなデータ見せてくれるわけないじゃないの……。
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