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[Narration]
片づけるという行為を放棄して、天京院とソヨンはそのまま思い思いの場で眠りにつき、朝を迎えた。
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[Narration]
二人が目覚めてほどなく、杏里も目を覚ます。いつものように、よく寝た、と脳天気に言い放ち、背伸びをしながら。
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[Narration]
杏里は、少女のことは憶えていた。しかし、それは、体を明け渡す直前までで、その後はいっさい、先の目覚めまで何も憶えていないと証言した。
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[Soyeon]
はぁ……、夢だったみたいですね……。
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[Tenkyouin]
悪夢だな……。
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[Narration]
散乱した部屋を見渡し、天京院は吐き捨てるように言う。しかし、ソヨンには部屋の有様がそれほど悲惨なものには思えなかった。普段のこのよく部屋を知っていたため。
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[Soyeon]
あの人、どうしたんでしょうか……。
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[Tenkyouin]
さぁ? あたしの知ったことじゃない。
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[Narration]
どことなく、太陽の射し込んでくる窓の外を見ながら、ソヨンと天京院は短い会話を続ける。そこへ、杏里が入ってくる。
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[Anri]
帰ったんじゃないのかな……。
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[Soyeon]
帰るって……、どこにですか? まさか……、天国?
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[Anri]
そこまではわからない。天国かもしれないし、自分の思い出がある昔の学園かもしれない。もしかしたら、ボクが開けてしまった木箱の中かも。
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[Soyeon]
木箱……、ですか?
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[Anri]
うん! 船倉を探検していたら、見つけたんだ。少し古びた感じの桐の箱でね。お札が貼り付けてあった。
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[Tenkyouin]
頼むから、そんなものをうかつに開けたりしないでくれ……。
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[Narration]
どっかりと椅子に座り込んだまま、天京院がそうぼやく。
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[Anri]
彼女からちょっと話を聞いたんだ。なんでも、前の学園でいろいろ徘徊して気味悪がられていたんだって。
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[Anri]
そんなある日、彼女の前に三つ編みの学生が立ちはだかり、見事、彼女をその箱の中に閉じこめたという……。
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[Soyeon]
わわっ、ゴーストバスターズですね。
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[Anri]
彼女もかわいそうだよ。
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[Narration]
ふっと視線をさげ、杏里はそう言った。
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[Anri]
好きな人がいる、大好きな人がいる、それは素晴らしいことなのに、許されない時代があったんだね。
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[Anri]
相手が、女の子だというだけで……。
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[Anri]
ボクは、今という時代に生まれたことを神に感謝するよ。おかげで、こんなにも幸せな毎日を過ごすことができる。
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[Anri]
愛しい子猫ちゃん達に囲まれてね。
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[Tenkyouin]
それで、彼女に同情したというわけか。
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[Anri]
同情? とんでもない!
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[Narration]
さも心外と言わんばかりに、杏里は抗議する。
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[Anri]
彼女のことをかわいそうとは確かに言ったよ。でも、彼女に体を貸したのは同情なんかじゃないよ。
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[Anri]
なんて言ったらいいのかな……。うーん、そう、愛の証ってやつかな!
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[Tenkyouin]
……なんだって?
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[Narration]
喜々として出した杏里の答えに、天京院の反応する声が一段、低くなる。
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[Tenkyouin]
おい、まさか、あの幽霊は……。
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[Anri]
なんて不幸なことだよ! もし、彼女が自ら命を絶たず、しかも、ボクと同じ時に生まれてきてくれたのなら……。
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[Anri]
きっと、かわいい子猫ちゃんになってくれただろうに!
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[Tenkyouin]
……!!!
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[Soyeon]
あ、あの人、その、どの時点で区切ったらいいのかわからないけど、杏里さんより年下だったんですか……。
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[Anri]
そうさ! くわえて彼女は年上が好みなんだってさ。まさに、ボクらは運命の出会いを果たせたというのに!
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[Anri]
ああ、できれば、体を貸すのではなく、彼女の体をボクに預けてほしかった……。
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[Tenkyouin]
あ、あ、あ……、杏里〜〜〜。
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[Anri]
あれ? かなえさん、どうしたんだい?そんな十日もお通じがないような顔をして。
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[Tenkyouin]
何を考えてるんだ、お前はーっ!!
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[Soyeon]
わ、わわっ! か、て、天京院先輩、落ち着いて!
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[Narration]
「それは、季節はずれに蒸し暑い夜のことでした」
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[Narration]
「あの不思議な事件が起きるには、十分すぎる夜だったんです……」
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List of all oneshots
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(Recent Oneshots)

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That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
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(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies