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[Narration]
一瞬、前が何も見えなくなるほどだった。
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[Narration]
視界のすべてを埋め尽くす、白い、花の雨。
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[Narration]
まっすぐにのび、エレベーターへと続いていく階段に敷き詰められた緋毛氈の赤の中に、よく見ると淡く、青、黄、ピンクなどに色づいた花びら。
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[Narration]
天井からふりそそぐシャンデリアの光を、それたちはまぶしいくらいにまとって、ゆっくり、ゆっくりと舞い降りてくる。
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[Girls]
ぁ……。
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[Narration]
港からポーラースターへと自分達を運んできた小船を下りたとたんのこの光景に、5人ほどの少女達は息をのむ。
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[Narration]
話には聞いていた、そして、秘かに憧れていたに違いない、この船の歓迎の儀式。実際に今、それを目の当たりにして、彼女たちはただ、息をのむ。
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[Narration]
目を輝かせながら、それでいて陶然とした顔でという離れ業で、この花吹雪を見つめていた。
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[Narration]
時は9月。長いバカンスの季節を終えて、洋上に浮かぶ巨大な花籠は、新しい小さな花を迎え入れる。
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[Narration]
ようやくほころび始めた、まだつぼみとも言えるほどの幼い花。
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[Narration]
しかし、この船での3年間で、どれほどの大輪へと自分は花開いてゆけるのか。
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[Narration]
そんな想いへと彼女達を駆り立てさせる、花吹雪だった。
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[Niki]
……あ、あの……。
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[Narration]
歓待の余韻もさめやらぬまま、エレベーターに揺られて、噴水のある広場まで案内された新入生達の前に、セカンドの制服の少女が現れた。
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[Niki]
……あ、うぅ……。
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[Girls]
?
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[Niki]
………………。
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[Girls]
………………。
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[Narration]
顔をうつむかせたまま、何か、話しかけようとしていることだけはうかがえるものの、初めて足を踏み入れた学園の上級生に対し、新入生たる彼女達は困惑するしかなかった。
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[Nicolle]
ほら、ニキ! しっかりしな!
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[Narration]
突然、ふりかかってきた声に、その上級生も含め、全員がびっくりして背筋を伸ばす。
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[Nicolle]
段取りはちゃんと最初に確認しただろ?
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[Narration]
少し離れたところ、ちょうど大廊下と小さな通路がつながるところに、上級生が二人、立っている。
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[Niki]
……う、うん……。
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[Narration]
その二人に小さくうなずくと、新入生の前にたつ少女は、抱えていたブリーフケースから、人数分のパンフレットを引き出すと、それを配り始めた。
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[Niki]
……こ、こちらを、お読みください……。
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[Narration]
おずおずと差し出されたものを、やはり、おずおずと受け取る。
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[Narration]
きれいなカラー刷りのパンフレットに、船内見取り図や施設の案内、スケジュールなどがまとめられている。
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[Niki]
……にゅ、入学式までの、予定や、この、学園での、生活の案内です……。
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[Niki]
な、なにか、わからないことが、あったら……、な、なんでも、きいてください……。
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[Narration]
時折、言葉につかえ、そのたびに、手をバタバタと動かしながらも、ニキ・バルトレッティは案内の役をつとめていく。
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[Narration]
その光景を、少し離れた場所から、ニコル・ジラルドとヘレナ・ブルリューカが見守っていた。
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[Helena]
……大丈夫みたいね。
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[Nicolle]
ん、まあね。上出来だろ?
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[Helena]
ええ……。それにしても、驚いたわ。
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[Nicolle]
ん? ニキのことかい?ははは、あたしもびっくりだ。ここまでうまくいくとは思わなかったね。
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[Helena]
いいえ、あなた達みんなのことよ。
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[Nicolle]
へ? あたしら?
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[Helena]
ええ。まさか、あなた達がそろって、新入生への案内役を買ってでるなんて、思ってもみなかったわ。
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[Nicolle]
え? あー……、うーん、そっか。
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[Helena]
アルマさんとソヨンさんは、不思議ではないけど……。あなたと、ニキさんがね。
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[Helena]
どういった心境の変化かしら。
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[Nicolle]
……たいしたことじゃないさ。あたしは単なる気まぐれさ。
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[Nicolle]
でも、ニキのことはほめてやってくれよな。そりゃ、あぶなっかしいかもしれないけど……。
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[Narration]
そう言って向ける視線の先で、まだ、ニキは伝わりにくいジェスチャーを交えながら、新入生を相手に奮戦を続けている。
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[Narration]
なんとしても十分な説明を受けたい、不安だらけの新入生の必死さもあいまって、それはどこか微笑ましい。
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[Helena]
もちろんよ。それは、今この場はどうしても不慣れでしょうけど、この先のことを考えれば……、とても頼もしいわ。
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[Nicolle]
へへ……。
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[Narration]
そうこうしているうちにやがて、なんとか説明をすべて受け取った新入生が、ぎこちなく頭を下げて、廊下の向こうへと去っていく。
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[Niki]
……お、終わった……。
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[Nicolle]
よしよし、よくやった!
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[Niki]
はぁぁ……。
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[Narration]
気疲れからか、ため息をつくニキの肩を、ニコルが優しく叩く。
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[Helena]
ご苦労様。大丈夫よ、明日はきっと、もっとうまくこなせるわよ。
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[Niki]
う、うん……。がんばる……。
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[Niki]
あ、あと……。あの、い、今の人たちの、中に……。
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[Helena]
……ああ、いたわね。
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[Nicolle]
ありゃ一目でわかるね。
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[Niki]
……ふふ……。
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[Narration]
大廊下の端、今にも視界から消えそうな新入生に、3人は視線を向ける。
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[Narration]
その中の特に一人、少し小柄な、黒い髪の少女の背中に。
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Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
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Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
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(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies