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 満天の星の下でおこなわれた、ソフィア女史の授業は、彼女にとって興味ぶかいものだった。
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 ところが、折悪く海上に立ちこめてきた濃霧に、たちまち星々はおおわれ、授業も途中で切り上げられてしまう。
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 部屋へと向かう通路までが、なんだかしっとりと肌寒く、照明もぼんやりとモヤがかっているようだ。
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 長い絨毯の上を、ひっそりと足をすべらせながら、アイーシャ・スカーレット・ヤンはさきほどの時間に思いをめぐらせた。
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 天文学を専門とするソフィア女史だが、その晩、プールサイドで語られたテーマは、天にまたたく星ではなく、海上に輝く星、我らがハンギング・バスケット・ポーラースターの由来についてのものだった。
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 今こうして、彼女たちのまなびやとなり、同時に寄宿舎となっているこの巨船は、正式にはポーラースターⅣ世という名を与えられており、初代ポーラースターの誕生は、西暦一八世紀にまでさかのぼることを、アイーシャはこの夜、はじめて知った。
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 海洋演習船として、多くの女性船員を世に送りだした、先代のⅢ世。
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 第二次世界大戦下に、特に女性のための難民船として活躍したⅡ世。
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 そして……伝説の海賊船、H・B・ポーラースターⅠ世。
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 「海賊船」という、その粗野ながらもロマンティックな響きに、女生徒たちは深い感銘をおぼえた。
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 いやが上にも期待は高まり、注目のⅠ世の逸話にさしかかったところで、突然、霧によって授業は中断となった。
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 女史に続きをせがむ生徒たちを尻目に、アイーシャはプールサイドをそっと離れた。
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 老教師のふしぶしに、霧はこたえるのだろう。
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(あまり、先生に無理をさせないとよいのだけれど……)
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 そう、おもんばかりながらも口にできぬまま、ただ、そそくさと消え去ることでしか配慮をあらわせない自分が、情けなかった。
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 長々とした廊下の果てにある、自分の部屋の前までくると、扉から薄く漏れる光に気がついた。
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 扉が開け放してある。
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 自動鍵のついた扉を、閉め忘れることはむりだ。
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 他人が部屋に入ろうとするなら、指導部に厳重に管理されている合鍵が必要になる。あるいは高度なピッキング技術が。
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 どうにも不穏な匂いがする。
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 濃霧がかもしだす不気味な雰囲気もあって、アイーシャはだんだん心許なくなってきた。
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(すぐに……PSに報せるべき? でも……)
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 しかし、万が一、そういった常識の通用しない相手が……
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 実は、自分の見知った誰かが、この部屋で待っていたのだとしたら……
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 友人がPSに連行されていくなんて、そんなのとんでもないことだ。
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(ありえるとしたら……)
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 それは誰だろう。
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 たとえば、どんな場所にでも神出鬼没な、アンシャーリー・バンクロフト。
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 あるいは、言わずもがなの、杏里・アンリエット。
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(…………うん)
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 それ以上は迷わず、アイーシャは扉を押し開いた。
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「杏里……? それとも……アンなの?」
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 読書灯のともった薄暗い室内は、すぐそれとわかるほど、乱雑に引っかき回されていた。
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(……これは……)
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 違和感を感じたアイーシャは、扉の下に目をやった。
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 扉と床の隙間には、閉め切られないようにか、用心の布きれが詰められていた。
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 偶然に何かが扉をふさいでいたのならともかく、杏里やアンシャーリーであれば、そんなことは絶対にしない。
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(……!)
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 すぐさまきびすを返し、廊下に戻ろうとしたアイーシャの肩に、ごりっと、冷たく硬い筒先が押しあてられる。
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「アンを呼ぶな!」
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 強い硝煙の香りに、アイーシャは従順に反応した。
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「扉を閉めろっ……それで、こ、こっちを向くんだっ……」
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 押し殺した声が、唾を飲みこみ、せいいっぱいすごんでみせながら告げる。
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 いわれた通りに、扉に詰められていた布を取って、ゆっくりと振り返る。
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(……子供……)
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 そこには、彼女より頭一つ、いや、もっと背の低い、青い目の少年が、無骨な銃を構えて立っていた。
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 目の粗い羊織物のズボンに、まるでぼろ雑巾のような、くたくたのシャツ。小さな頭には、しゃれこうべのバンダナをきっちりと巻きつけている。
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 小さな海賊、という言葉がぴったりの出で立ちだった。
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 また同時に、汗と、濃い潮の香りが混じった、悪臭が鼻をついた。
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 震える両手で構えるのは、まるで棍棒のように太くて頑丈そうなマスケット銃。
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 子供だからといって、油断はしない。
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 ただ、つきつけられた銃口を見つめるうちに、恐怖が薄れ、ひっそりと醒めゆく自分の胸の内を、アイーシャは寂しく思った。
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「あなた……誰?」
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 淡々と、アイーシャはたずねる。
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「どこだ!? どこにある、教えろっ!」
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 にらみあげるようにして、少年が迫る。
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「何を?」散らかった部屋をゆっくりと見渡す。「お金なら、ないわ。宝石も、たいしたものは……」
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 するとその途端に、景気よく少年の腹が鳴った。
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 陽に焼けた顔を、さらに赤らめる。
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「その……た……」
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「……食べ物が欲しいの? 簡単な物なら、冷蔵庫にあると思う」
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 冷蔵庫という言葉を聞いても、少年は怪訝な顔をするばかりだ。
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「その、部屋の奥にあるキッチンのかどよ」
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 ごつい銃をつきつけたまま、少年はアイーシャを手招きして案内させた。
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 アイーシャを壁に立たせたまま、なんとか片手で冷蔵庫のパネルをあけると、ひやりと流れ出した冷気におののきながらも、その中をごそごそとさぐった。
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 夢中だった。
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 手にふれた果物やチーズを、皮ごと包みごと、バリバリと口に放り込む。
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 そのあいだにも、アイーシャは少年の様子と、自分の置かれた状況を、冷ややかに見つめなおしていた。
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 少年が、粗野で空腹なのは、よくわかった。
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 握りしめられた銃は、年代物ながら、確かに本物らしい威圧感を匂わせている。
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 ただし、その装弾数は一発きり……。
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 見ると、すぐに引き金から指が離れてしまう少年の様子では、あまり銃の扱いにも慣れていないようだ。
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 それに、だぶついた服に隠されてはいるが、随分と非力で、きゃしゃな体つきに思えた。
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(なんとか……なるかもしれない……)
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 アイーシャは落ち着いて、自分に語りかけた。
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 もちろん、ピストルは危険だ。
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 だけれど今、自分が手を打たなければ、その弾丸は、大切な誰かを傷つけるかもしれない。
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(…………)
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 アイーシャは、ごくかすかにうなずいた。
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「ふっ……むぐっ……」
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 食べ物を詰め込みすぎてむせる少年に、アイーシャはうながした。
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「下の段に、飲み物もあるわ」
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 ない。嘘だ。
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 下段は、空っぽのワインセラー。
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 淡々と促しながら、少年が銃を握る腕の脇へ、そろそろとにじり寄る。
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「ええ、そうよ。そのボタンを───」
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 少年があわててボタンに手を伸ばすと、間近に立っていた少年の膝を押しのけるようにして、ワインセラーがスライドした。
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「……っ!」
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 少年がよろめく。
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 その隙を、アイーシャは逃さない。
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 さっと少年の背後にまわり、思い切り抱え込んだ。
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「……ぁがったなッ……!」
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 少年がうなり、猛然と暴れだす。
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「……銃を……離してっ……!」
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 覆いかぶせるようにして掴んだ少年の手は、やはりきゃしゃで、今にも折れてしまいそうだ。
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 必死にあらがうが、体格で勝るアイーシャが渾身の力を振り絞ると、かろうじて押さえ込むことができた。
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 しかし、いつまでもこうしてはいられない。
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 二人もみあい、キッチンに体をぶつけながら、ぎりぎりと拳銃の引き金へと指を伸ばす。
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「ともかくっ……弾を……撃ってしまえば……っ……」
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 なんとかなる、と信じたその時───
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「こんばんは、アイーシャ」
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 なんの前ぶれもなく、来客があった。
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 くすくすと顔をほころばせ、部屋を跳ねながら横切ってきたのは、アンシャーリーだった。
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「とってもファンキーでクレバーな新作を届けに来たのだわ?」
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 部屋の散らかりようにも、かかっていたはずの鍵にも、まるで気をとめることなくずかずかと……
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 ふっと目が合う。
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 ようやく事態を把握したアイーシャが血相を変える。
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「何してるの?」
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 キッチンでもみあう二人に、アンがキョトンと語りかける。
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「来ちゃだめっ、アンッ!」
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「……ッ!」
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 アイーシャの警告と同時に、少年はバネ仕掛けの人形を思わせる動きで、猛然と腕をふりあげ、闖入者めがけて撃ちはなした。
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 はなばなしい筒音が響き、少女は派手にぶったおれる。
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「アンシャーリーッ!」
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 反動で、思わずアイーシャにもたれかかった少年の頭から、バンダナがほどけ落ちる。
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 結いあげられていた髪が、はらりとほどけ、腰までとどく蜂蜜色のブロンドが目前に広がった。
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 アイーシャは息をのむ。
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「あなた……っ……」
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 とっさに撃ち倒してしまった相手を凝視し、身をすくませる少年の、その素顔は───
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List of all oneshots
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That Red on Me
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Missing Rink Side:Rina
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(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
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