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[Narration]
事件は突然に起こった。
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[Narration]
正確には、事件の現場は、常に唐突に現れる、である。
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[Clare]
天京院せんぱーい!
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[Mirriela]
ちょっと、話聞いてくれないかな?
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[Coe]
杏里さんのことなんですけどぉー。
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[Narration]
そう言って、連れそろってビジターズ3人組は、天京院鼎の部屋のドアを開けた。
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[Narration]
まず、ここで彼女たちは不審に思うべきだったかもしれない。
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[Narration]
オートロックに電子ロック、指紋、声紋、網膜の認証など、その気になればいくらでも万全の警備体制を整えることができるポーラースター。
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[Narration]
学生の一個室とはいえ、ドアが簡単に開けられるケースなど、ほとんどありはしないのだ。
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[Narration]
しかし、幼い彼女達は、特に疑問に思うこともなく、そのドアを開ける。
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[Narration]
事件は、そこで彼女達を待ちかまえていた。
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[Visitors]
し、しんでるーっ!!
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[Narration]
そこには、その部屋の主、天京院鼎が大の字になって倒れていた。
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[Narration]
室内は、DVD−ROMやミキサー、本やミキサー、コードや書類やミキサーが散乱しており、それはまるで、被害者を埋葬しているようにも見えた。
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[Narration]
白衣の裾は大きく広がり、そして、彼女の長い髪もまた、床の上に波打って広がっている。投げ出された手、足。限りなく血の気を失った白い肌。
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[Narration]
天京院鼎は、短い人生をこの部屋で終えたのだ。
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[Clare]
て、天京院先輩!!
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[Mirriela]
え? ほ、本当に死んでるの!?
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[Coe]
殺人事件だぁ!
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[Narration]
部屋の入り口で事態をまず確認した3人は、現状保存の原則も忘れて、室内に駆け込む。
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[Clare]
そ、そんな……、天京院先輩……。
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[Mirriela]
どうして、こんな……。
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[Coe]
どんなパンツはいてるのかなぁ。
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[Narration]
3人は天京院鼎の死体のそばに立ち、その姿を見下ろす。
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[Narration]
もの言わぬ、変わり果てた体。この船最高の知性は、すでにその光を失っていたのだ。
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[Clare]
待って! 落ち着いて、二人とも!
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[Mirriela]
クレアがいちばん慌ててない? さっきから。
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[Coe]
スカートめくってもいい?
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[Clare]
こういう時は、まずは落ち着くの。冷静さこそが、事件を解決に導く鍵よ!
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[Mirriela]
この犯人も杏里さんなのかなぁ……。
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[Coe]
ねぇねぇ、パンツめくってもちっとも驚いてくれないよ?
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[Clare]
まず、死体には勝手にさわらない、現場は勝手に動かさない。
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[Mirriela]
あ、靴はいたまま入ってきちゃった。足跡、残るかな。
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[Coe]
はっ! 天京院さん、あんまりな時なのに、おばさんパンツはいてる!
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[Clare]
死体は雄弁に語る、よ。まずは鑑識を呼んで! 司法解剖して、死因を特定し、また、この部屋に犯人の遺留品がないか、調べるの!
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[Mirriela]
今、調べてもらうと、あたしらの遺留品ばっかり出てこないか?
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[Coe]
こういう時くらい、しょーぶパンツはいたらいいのに……。
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[Narration]
コーヒー……
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[Clare]
体はまだ、温かいわ。おそらく、そんなに時間はたっていないかも知れないけど、季節、気温、湿度によって死亡推定時刻には幅が出るから、注意が必要ね。
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[Mirriela]
いちばんありがちな展開って、実は事故だったっていうやつかなぁ。この場合、何かにつまづいて、転んで死んだ、とか。
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[Coe]
ねぇねぇ、ブラジャーもデザインと色、あわせてきてると思う?
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[Narration]
コーヒー……コーヒー……
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[Clare]
犯人の遺留品を探すなら、爪よ。犯人ともみあったりしたのなら、爪に細胞片が残っている場合もあるわ。
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[Mirriela]
バールのようなものってよく言うけど、なんでバールなんだろな。別に、棒状の凶器なら、ハンマーでも、鉄パイプでもいいような気がするんだけど。
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[Coe]
ねぇねぇ、そろそろ気がついてあげた方がいいんじゃないかなぁ。
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[Narration]
コーヒー……コーヒーを……誰か……コーヒーを……
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[Clare]
ね、ねぇ、何か聞こえない? 何か、人の声のようなものが……。
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[Mirriela]
な、なんだよ、変なこと言うなよ。き、聞き間違えだろ?
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[Coe]
やだよぉ、クレアったら、怖がらせないでよぉ!
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[Clare]
でも、ほら……! 耳を澄まして……!
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[Tenkyouin]
コーヒーを、くれぇ……。
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[Visitors]
きゃあああああっ!!
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[Narration]
天京院鼎は、ここに復活した。
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[Tenkyouin]
事態は深刻だ。
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[Narration]
起きあがり、なんとか椅子にはついたものの、天京院の憔悴は相当なもので、肩で息をつきながら、かすれた声を絞り出していた。
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[Tenkyouin]
このシナリオは、君達が出ていることからもわかる通り、本編のゲーム期間中、つまりあの3週間のどこか一日に起きていると設定されている。
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[Mirriela]
取り繕う気、まるっきりないんだね。
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[Tenkyouin]
あいにくあたしはリアリストだ。夢見る乙女の存在は、杏里が登場してきた瞬間に消えた。一回だけ暴発しちゃったりもしたが、それはまだ先の話だ。
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[Tenkyouin]
話は戻してつまりだ、今現在、杏里・アンリエットはあたしの助言に従って、手がかりを集めに学園内を奔走していることになっている。
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[Tenkyouin]
そうやって杏里が集めてきたヒントをもとに、土曜日にあたしが推理をし、犯人を追いつめていく。それは、ここまでこのゲームをやってきた君達ならわかっているはずだ。
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[Coe]
誰に言ってるんですかぁ?
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[Tenkyouin]
むろん、君達だ。つまり、このゲームのキーパーソンはあたしだ。このあたしが今、未曾有の危機に陥っている。
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[Tenkyouin]
コーヒーが切れたのだ!
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[Tenkyouin]
この褐色の脳細胞を活性化させるのに必要不可欠なアイテム、コーヒーがなんと、切れてしまった。
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[Tenkyouin]
豆もなければ粉もない! もう丸5時間も、あたしはコーヒーを口にしておらんのだ!
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[Clare]
あ、あの、買ってくればいいんじゃないですか?
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[Mirriela]
喫茶店とかに飲みに行ってもいいわけだし。
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[Coe]
天京院さん、お金持ちなんでしょ? いちおう。
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[Tenkyouin]
あまーい! この天才的頭脳は、特別なブレンドが生み出したアロマとテイスト、そしてカフェインにしか反応しないのだ。
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[Tenkyouin]
そんじょそこらの安っぽいブレンドコーヒーなど論外、高けりゃいいってもんじゃないスペシャルコーヒーにだって代わりはつとまらない。
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[Tenkyouin]
ついでに言わせてもらえば、あたしゃヒッキーだ。部屋の外に出て落ち着いてコーヒーを飲んでられるか!
>

[Clare]
うわ、ダメだ、この人。
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[Mirriela]
ひらきなおってるなぁ。
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[Coe]
頭いいのに、どうしてコーヒーが切れるまでに買い足しておかなかったのぉ?
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[Tenkyouin]
この世紀の大天才に抜かりはない。ちゃんと新しい豆を買っておいた。
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[Tenkyouin]
しかし……。ここからが本題だ。
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[Tenkyouin]
その新しいコーヒー豆が、盗まれたのだ。
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[Tenkyouin]
君達に課せられた使命は重大だ。
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[Tenkyouin]
盗まれたのは、コートジボワールから積まれたリベリカ種のコーヒーの豆、60kg。
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[Tenkyouin]
これは確かに昨日、ポーラースターの内港に荷揚げされ、検疫のため船倉に一泊してから、あたしの部屋に運び込まれるはずだった。
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[Tenkyouin]
しかし、これが、突如として今日、倉庫から消え失せている。
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[Tenkyouin]
君達には、なんとしても、このコーヒー豆の行方を探る手がかりを探してきてほしい。
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[Tenkyouin]
言っておくが、このままカフェインの切れたままでは、あたしの推理力は100%発揮されないどころか、50%の確率でファンブルだ。
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[Tenkyouin]
そうなれば、今、連続レイプ犯を捕まえるために走り回っている杏里は、健闘むなしく退学間違いなしだ。
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[Tenkyouin]
タイムリミットはわずかに一日。さあ、行け、ビジターズ! 学園の平和と、サフィズムの舷窓の未来は、実は君達にかかっていたのだ!
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[Clare]
というわけで、あたし達が天京院先輩のコーヒー豆の行方を探さなきゃいけないわけだけど……。
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[Mirriela]
まぁ、捜査のまねごとなら、本編でもやってたから、なんとかなるんじゃない?
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[Coe]
わかんないよぉ? だって、ここは幻想モードだもん。ヒントメモも、マップ画面もないんだよ?
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[Clare]
でもとにかく、捜査を始めなきゃ……。
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[Mirriela]
やっぱ、いろんな人に話を聞いて、情報を集めなきゃだよな。
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[Coe]
時間は午前と午後と夕方の3回しかないんだよぉ!?
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[Clare]
あーもう! ごちゃごちゃ悩んでいる暇はないよ!
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[Mirriela]
そうだな。情報を知っていそうな人から、とにかく話を聞こう!
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[Coe]
きっと、どんな情報だって、天京院さんがちゃんと推理してくれるよぉ。
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[Visitors]
がんばるぞ、エイエイオー!
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