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[Narration]
静寂を愛する少女、クローエ・ウィザースプーンにとって、大図書室での読書の時間は、彼女の心の平穏にとって欠かせない時間と言えた。
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[Narration]
カウンターの内側で椅子に腰をおろし、机の上に本を広げて、指でページを繰る。視線は本に落としたまま、片肘をついて、その手の上にあごを乗せる。
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[Narration]
ゆるやかに流れる時間の中で、お気に入りの銘柄で淹れたコーヒーを傍らに、偉大なる先人の叡智に触れる。
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[Narration]
それはまさに、読書家にとって至福の時間であるだろう。
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[Anri]
やあ、クローエ。
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[Narration]
無法な闖入者に、クローエは視線もあげない。
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[Narration]
反応すらしないクローエの態度にこたえる風もなく、杏里はカウンターを乗り越え、その傍らに腰掛けた。
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[Anri]
やあ、大図書室の麗しき女神様。ご機嫌はいかが?
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[Narration]
クローエは小さなため息をついた。
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[Chloe]
五分前まではたまらなく幸せだったわ。でも、今はこらえきれないほど不幸よ。
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[Anri]
それはかわいそうに。いったい何があったんだい?
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[Chloe]
あなたがここに来たのよ。
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[Anri]
やれやれ、相変わらずだな。
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[Narration]
杏里は肩をすくめると、口を閉ざし、クローエを眺め始めた。
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[Narration]
確かに杏里は、しばしば大図書室で騒ぎ立て、クローエを怒らせている。
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[Narration]
しかし、クローエの意志と時間を尊重し、こうしておとなしく読書を待つこともある。ごくたまにだが。
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[Anri]
……あれ?
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[Narration]
杏里のつぶやきに、クローエの眉がわずかにあがる。
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[Anri]
クローエ、この本、何語で書かれてるの?
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[Chloe]
……中国語よ。
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[Anri]
そんなの読めたんだ。
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[Chloe]
読めるわけないでしょ。
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[Anri]
あとさ、この本、もしかして逆さまじゃない?
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[Chloe]
そうかもしれないわね。
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[Anri]
しれないって……。
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[Chloe]
杏里、うるさいわよ。わたしは静かな時間を過ごしているの。わたしにとって何よりも重要な時間よ。
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[Chloe]
どんな本を読もうと関係ないわ。本なんて関係ないの。いい、この時間の静穏を守れないと言うのなら……。
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[Chloe]
杏里、あなたを、どんなことになってもここから叩き出すわよ。わかってるわね。
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[Anri]
はい……。
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[Narration]
本から視線を微塵も動かさずに告げたクローエに、杏里はそう答えるしかなかった。
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List of all oneshots
List of all series

(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies