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[Eliza]
──さて、ここはもういいわね。
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[Colleague]
お疲れさまー。
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[Eliza]
それでは、サウナルームの仕事に行ってまいります。
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[Narration]
同僚に礼をして、イライザは軽やかに歩き出した。
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[Narration]
この時間、シルビィとクリミアがサウナに居るはずだ。
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[Narration]
個室をひとつ借り切っているから、ぜひ声をかけてください……と言われている。
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[Narration]
彼女らと仲直りして以来、イライザも仕事が忙しくて、結局なかなか会う時間は作れないでいる。
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[Narration]
仕事中はあまり親しげに話さないで……とイライザが頼んでいるので、ふたりとしては何とか機会を作ろう、ということだろう。
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[Eliza]
……だからって、わざわざサウナでねぇ……。
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[Narration]
苦笑しながら、イライザは更衣室に向かった。
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[Narration]
サウナルームは、共同の水風呂やシャワーを中心に、いくつかの個室が用意されている。
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[Narration]
他人と一緒では落ち着かない──などのわがままに応え、1人用から十数人対応まで複数のルームが予約制で使用できる。
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[Narration]
イライザは湯浴み着をまとって仕事のふりをしながら、シルビィから聞いたナンバーの個室に近づいた。
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[Eliza]
おふたりとも、こんにちは。
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[Narration]
気安く声をかけて扉を開いたイライザの眉根が寄った。
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[Eliza]
あら……?
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[Sylvie]
な、なんですか、イライザ様?
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[Crimea]
ど、どうかしましたかぁ?
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[Narration]
個室に入って扉を閉めながら、首をかしげる。
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[Narration]
この熱気の中では、匂いなどよほど気をつけていなければ判然としない。
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[Narration]
だからそれは、臭気というより気配だった。
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[Eliza]
あなた達……なにも、こんなところで始めなくてもいいでしょう?
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[Narration]
ふたりが真っ赤に──といっても、すでにサウナの熱気で赤かったが──染まった。
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[Narration]
どうやら、他人の目がないのを良いことに睦みごとに耽っていたらしい。
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[Eliza]
もう……のぼせるわよ?
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[Sylvie]
いえ、そんな……ちょっと、だけです。
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[Crimea]
はい、そのぉ、ちょっとだけ……。
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[Eliza]
別に悪いとは言わないけれど、気をつけなさいね。
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[Narration]
ふたりにこういう事を教えたのは自分だけに、イライザも偉そうなことは言えない。
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[Narration]
……と言うより、自分と杏里がこれまでにやった危ないプレイに比べれば、全然かわいいものだった。
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[Eliza]
でも、あれからもふたりで、ずいぶん仲良くしていたのね?
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[Sylvie]
いえ、あの、そんな……。
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[Narration]
つい意地の悪い訊き方をすると、シルビィは俯いて困ってしまった。
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[Eliza]
ふふ、ごめんなさい。せっかく、こうしてお話しできる機会なのにね。
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[Narration]
イライザが笑ってとりなすと、クリミアが潤んだ瞳で見上げてきた。
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[Crimea]
あのぉ……いつも、イライザ様を思い出してぇ、慰めていたんですぅ。
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[Eliza]
……え?
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[Sylvie]
イライザ様がこうしてくださったね、ああしてくださったね……と。
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[Crimea]
はいぃ……。
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[Narration]
ふたりの少女の憧れのような表情に、イライザは何だかいたたまれない気持ちになった。
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[Sylvie]
あのぅ、イライザ様……。今度、私たちのお部屋に、来ていただくことはできませんか?
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[Crimea]
夜に……。
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[Eliza]
え……っと、それは……。
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[Narration]
それが彼女たちの「お誘い」なのは明白だったが、イライザは即答できなかった。
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[Eliza]
わたし達は、夜間に学生個室に出入りするのは禁じられているから……。
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[Narration]
それは本当だが、言い訳としては嘘である。
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[Narration]
実際には、親しくなった学生の部屋に深夜遊びに行く職員はいるし、何よりイライザも杏里の部屋へは行っている。
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[Sylvie]
ダメですか……?
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[Crimea]
ですかぁ……?
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[Eliza]
………………。
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[Narration]
イライザは心の中でため息をついていた。
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[Eliza]
(……これって、やっぱり浮気かしら? 杏里様もやっているからって、わたしが ……ねぇ)
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[Eliza]
(それに、どちらかというと、この子 たちの方を騙すことになる……)
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[Narration]
どちらが「遊び」かと問われれば、やはり杏里の方を本気と答えるだろう。
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[Narration]
しかし杏里との関係を守るためにも、彼女たちを手なずけておく必要があるのは確かだった。
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[Eliza]
──わかったわ、今度、うまく抜け出せそうな日に連絡するから。
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[Sylvie]
はい!
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[Crimea]
お待ちしていますぅ!
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[Narration]
シルビィらの顔がぱぁっ、と明るくなり、同時に恥ずかしそうに笑った。
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[Narration]
イライザにしてみれば、昔ならともかくいまでは「何でわたしなんか……」という気持ちしかないのだが、ふたりにとってはいまだ崇拝する女王様らしい。
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[Eliza]
(杏里様には内緒に……できるかしら? あの人、ときどき妙に鋭いし……)
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[Narration]
ばれたらどうなるだろう、と考えて、イライザは暗鬱なような、ウキウキするような、妙な気分にとらわれたのだった。
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List of all oneshots
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First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
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Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
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(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
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Strange Babies