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[Anri]
おはよ〜。
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[Narration]
眠い目をこすりながら、杏里は待ち合わせ場所に先に来ていたアイーシャに声をかける。
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[Aisha]
おはよう、杏里。……眠そうね?
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[Anri]
こんなに早起きしなきゃならないなんて思わなかった……。
>

[Aisha]
杏里ったら。そんなに早い時間でもないのよ?
>

[Narration]
時間は学園の一時限目授業が始まる少し前。しかし、最近、謹慎で生活のリズムが一定ではなくなった杏里には、タイミングによっては起きるのが辛い時間だった。
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[Narration]
そして、この朝はタイミングが悪い方のようだった。
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[Aisha]
さ、行きましょう。
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[Anri]
うん〜。
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[Narration]
やはり、少し時間が遅かったようだった。
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[Narration]
温室に入って、木々の世話を申し出た二人に対して、園丁は本日の朝の仕事は半ば以上終わっていることを告げた。
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[Narration]
もともと、熱意で申し出たわけではなかったので、杏里にはそれほどショックはなかった。
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[Anri]
ちょっと楽しみにしてたんだけどな。
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[Aisha]
そうね。
>

[Narration]
仕方なく、温室の散歩へと杏里は目的を切り換えていた。
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[Anri]
散水はこれからだって言ってたから、虹は見ることができるよね。
>

[Aisha]
そうね。
>

[Narration]
杏里の隣で、アイーシャが穏やかに笑いながら答える。
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[Aisha]
あ……。
>

[Anri]
どうしたの?
>

[Narration]
小さく声をあげたアイーシャが見つめる方向に杏里も視線を向ける。
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[Narration]
そこには、周囲の木々に埋もれるようにではあるが、熱帯の樹木が葉を広げていた。
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[Aisha]
この樹……。
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[Narration]
高さは葉の先までで三メートルほどの樹に、アイーシャは歩み寄って、その幹に手を当てた。
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[Anri]
椰子……なのかな?
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[Aisha]
私も、よくわからないの。ここって雑多に樹を植えているみたいだから。
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[Anri]
この樹が、どうかしたの?
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[Aisha]
うん……、この樹ね、私が初めてここでお水をあげた樹なの。
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[Anri]
へぇ……。よく憶えてるね。
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[Aisha]
うん。他に、することがなかったから……。
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[Narration]
少しうつむいて、そうつぶやくアイーシャ。しかし、すぐに杏里へ向けて顔をあげる。
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[Aisha]
この樹、もうちょっと背が低かったのよ。たぶん、一メートル近く伸びたんじゃないかしら。
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[Anri]
ふぅん、アイーシャが大きくしたんだね。
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[Aisha]
ちがうわ。私が毎日世話したわけじゃないもの。……でも、この樹が伸びていることに気づいた時は、嬉しかったな。
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[Narration]
アイーシャは樹の幹に額をつけて、微笑む。愛おしげなその顔に杏里の視線は吸いつけられる。
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[Aisha]
どうしたの? 杏里。
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[Narration]
自分を見つめる視線に気づいて、アイーシャが尋ねる。
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[Anri]
あ、うん、びっくりしちゃって。
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[Aisha]
え?
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[Anri]
アイーシャがなんかどんどん素敵に、綺麗になっていく気がして。ううん、ごめん、気のせいじゃないよね。
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[Aisha]
え、なに、それ……。
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[Anri]
ほんとにそう思ってるよ。なんて言うのかな、キミが内側から花開いていくのがわかる。
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[Anri]
それを見てしまったから。
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[Aisha]
……なんて答えればいいのよ。
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[Narration]
困惑の表情とかすかに紅くそまった頬で、アイーシャが答える。
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[Anri]
なんでもいいよ。
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[Narration]
自然に顔が笑う。
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[Aisha]
……きっと、杏里に影響されたんだわ、私。
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[Anri]
輝きはキミ自身のものだよ。ボクが手伝えたのなら、それは嬉しいんだけどね。
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[Aisha]
……輝き、なんて……。
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[Anri]
どうしたの?
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[Aisha]
……ううん、なんでもない。
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[Anri]
ねえ、アイーシャ、気づいてる?
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[Aisha]
え? 何に……?
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[Anri]
この樹を大きくしたのは、紛れもなくキミの力なんだよ。
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[Anri]
それが今、キミ自身を輝かせてる。ほんとだよ。まぶしくてしょうがないんだ。
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[Aisha]
………………。
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[Narration]
言葉を失ってアイーシャは立ちつくす。
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[Anri]
ねぇ、アイーシャ。
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[Aisha]
あ、はい……。
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[Anri]
もっと、ゆっくりたくさん、アイーシャが見たいな。一緒にすごす時間がほしい。ね、日曜日にデートしよう。
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[Aisha]
え……。
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[Anri]
ね、デートしよう?
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[Aisha]
……もう、なんかすっかり騙されているみたい。
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[Aisha]
でも、ありがとう。私も杏里に会いたい。
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[Aisha]
日曜日、楽しみにしてるから……。
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[Anri]
うん。ボクもすごく楽しみにしてるよ。
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List of all oneshots
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(Recent Oneshots)

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That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies