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[Anri]
……やあ、かなえさん。遊びに来たよー。
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[Narration]
珈琲臭の立ちこめる室内に笑顔で飛び込むと、部屋の主はひょいと肩をすくめた。
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[Tenkyouin]
……珍しく、落ち込んでいるね。
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[Anri]
そう見える?
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[Tenkyouin]
うん。
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[Anri]
……実はそうなんだ〜。
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[Narration]
杏里はヘナヘナと椅子に座り込んだ。
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[Tenkyouin]
ファン・ソヨンが襲われたって?
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[Anri]
うん……まさしく、かなえさんの推理した3人のうちのひとりだよ。
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[Anri]
ボクがアルマでなく、最初にソヨンを選んでいたら……ひょっとして助けられたんじゃないかと思うと……。
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[Tenkyouin]
らしくないな。
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[Narration]
あくまで素っ気なく天京院は言った。
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[Tenkyouin]
ファン・ソヨンを助けられなかった、ではなくアルマ・ハミルトンを助けることができたと考えたらどうだ?
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[Tenkyouin]
少なくとも、いつもの杏里の思考はそうだと思うがね?
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[Anri]
なんて脳天気な奴だ。今度、杏里・アンリエットに会ったらそう言っておいてくれ。
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[Tenkyouin]
……少しは調子を取り戻したかい?
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[Anri]
……うん。
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[Tenkyouin]
そうか……あぁ、そうだ。
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[Tenkyouin]
アルマが知っているかどうか知らないが、彼女の実家は大変なことになってるようだな。
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[Anri]
なにそれ?
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[Tenkyouin]
大掛かりな環境破壊裁判の係争中でな。環境保護団体を中心に、毎日のように抗議デモが押し寄せているらしいぞ。
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[Anri]
……あぁ。
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[Narration]
昨日、アルマから聞いた話を思い出して、杏里は眉をしかめた。
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[Anri]
毎日のように……って、家まで?
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[Tenkyouin]
ここ半年は特にひどくて、抗議団体が集まりすぎた結果、ハミルトン家の近所に村がひとつできたそうだ。
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[Tenkyouin]
話を聞いて、ますます環境保護活動家が終結しているらしい。
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[Tenkyouin]
そのまま、環境保護活動のメッカになるかもしれないぞ。
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[Anri]
(ひょっとして、アルマの父親は彼女を家から遠ざけようとしたのかな?)
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[Narration]
だとしたら、彼女の自由は皮肉な結果ということになる。
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[Anri]
……さて。
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[Narration]
まだ表情は浮かなげではあったが、杏里は笑みをたたえて立ち上がった。
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[Anri]
落ち込んでいられる状況じゃないものね。じゃあ、行くよ。
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[Tenkyouin]
なんだ、コーヒーぐらい飲んでいけばいいのに。
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[Anri]
ううん、いいんだ。愚痴をこぼしに来ただけだから。
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[Tenkyouin]
杏里、時間は……。
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[Anri]
わかってる。
>

[Narration]
立ち去りながら、杏里は背を向けたままで答えた。
>

[Anri]
大丈夫だよ、かなえさん……。
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[Narration]
天京院は言葉を続けず、杏里を見送った。
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List of all oneshots
List of all series

(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies