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[Narration]
船首に置かれたデッキチェアに寝そべる杏里。
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[Anri]
ぼぉ──────
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[Tenkyouin]
どうした杏里、コーヒーが切れたみたいな顔をして。
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[Anri]
ぼぉ──────
>

[Narration]
ようやく事件が落ち着いた後───ファン・ソヨンは突然帰国する、と言い出した。
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[Narration]
軍につとめる父親が定年に達し、退任式があるということだった。
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[Soyeon]
ごめんなさい杏里さん……あたし、式へ出席するだけじゃなくて、父様とじっくりお話ししたいことができたんです。
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[Soyeon]
杏里さん、あたしが頂いた数々のご好意。本当にありがとうございました!
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[Soyeon]
杏里さんと一緒に過ごした、この三週間は、あたしの一生の思い出にします!
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[Soyeon]
どうかお元気で。さようなら杏里さん……杏里さん……杏里さん……
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[Narration]
そうしてすでに一月が過ぎた。
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[Anri]
ソヨン…………
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[Anri]
チョゴリ……おでこ……キムチ……猫さんパンツ……ぺったん胸…………………………
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[Anri]
ソヨン…………
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[Tenkyouin]
ふう……まるで抜け殻だな。どうしたらいいと思う。ヤーン。
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[Narration]
(ニャー)
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[Tenkyouin]
ニャアじゃわからん。もうすこし建設的な意見を。
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[Tenkyouin]
やれやれ……。ドジなソヨンも、かしましいビジターズもいなくなって、静かに研究に没頭できるようになったはいいが……これではな。
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[Anri]
かなえさん……
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[Tenkyouin]
なんだ、杏里。
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[Anri]
かなえさんは、一緒にいてくれるよね?ボクと……ずっと一緒に……
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[Tenkyouin]
杏里……あのさ。きみは、あたしが今年で学園を卒業するという事実を忘れていないか?
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[Anri]
……いてくれるよね?ボクは……ボク……は……
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[Tenkyouin]
ふぅぅ………………さあな。
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[Tenkyouin]
運命はどうなるかわからんさ。このポーラースターにしたって、いったいどこへ向かおうとしているのか、皆目わからん。
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[Teacher]
ここが我々の職場、大教室です───
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[Teacher]
なにぶん広いですから。以前は液晶プロジェクターや、レーザーポインターを使用して授業を行っていましたが、今では……
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[Narration]
案内役の女性教師が、パチンと指先を鳴らすと、黒板と思っていた場所は、スクリーンに変わり、大写しで教材の映像が現れた。
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[Narration]
手話に似た簡単な動作をするだけで、映像は早回しされたり、拡大されたりする。
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[Teacher]
───こんなふうに、身振りに連動して、AIが働きまして、自在に教材を閲覧することができます。
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[New teacher]
素晴らしいです。けれど……この最先端の設備が、私に使いこなせるか、すこし不安です。
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[Teacher]
もちろん、昔ながらの黒板とチョークが現役の方もいらっしゃいます。
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[Teacher]
まあ、今も昔も、変わらないのは、どんなに教材や設備が進歩しようとも、退屈な教師には見向きもしてくれない、ということですかね。ハハ……
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[Teacher]
結局、人間が人間を教えるのですよ。
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[Narration]
手元の資料に目をやった教師は、はたと立ち止まり、目をしばたかせた。
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[Teacher]
……おや? ファン先生は、この学園の卒業生でいらっしゃった?や、これは失礼しました。それでは、わたしなどよりよほど詳しいでしょう。
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[New teacher]
いえ……船内もずいぶん改装されて、見違えてしまいました。
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[Teacher]
ええ。順風満帆の航海ばかり、というわけでもありませんでしたから。狂った発明家の起こした、爆発とか大爆発とか大々爆発とか……
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[New teacher]
ふふ、そうですね……私が好きだった場所も、もう……
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[Unknown]
…………変わらないものもあるさ?
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[Unknown]
教師と学生。先輩と後輩。人と人。そして、自由な恋人たち───
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[New teacher]
……?
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[Teacher]
学園長!? そこにいらしたんですか?
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[Unknown]
うん……ここが一番寝ごこちがいい。
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[Narration]
そのよく通る声の人物は、最後部の席を立つと、あくびをかみ殺しながら、大教室の中央通路をしなやかな足どりで降りてきた。
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[Narration]
案内役の教師が頭を垂れる。その横で、若い新任教師は、じっと学園長を見つめていた。
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[Teacher]
こちら、本日付けで着任いたしました、医学博士で、身体運動学などを担当される、ファン・ソヨンさんです。
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[Principal]
ふぁ……おはよう、ファン・ソヨン。調子はいかが?
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[Narration]
新任教師は瞼を伏せて、深々とお辞儀をした。振りあげた顔には、さわやかな笑顔を浮かべていた。
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[New teacher]
はい、いたって好調です。これからお世話になります。
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[Principal]
うん。わがまま放題のお嬢様たちのお相手は、なかなか気をつかう大変な仕事だよ。
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[Principal]
でも、肩の力は抜いて、キミのやりかたで頑張ってみて。
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[Principal]
きっとキミは、彼女たちに心から慕われる、いい教師になれると思うから。
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[New teacher]
はい。ありがとうございます。
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[Teacher]
いや、まったく。毎日、ノイローゼになりそうな事ばかりで……
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[Principal]
キミは働きすぎだ。人生にアクシデントはつきものなんだから、それを楽しむ気持ちがなくっちゃ。
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[Teacher]
はぁ……
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[Narration]
学園長は、自分のこめかみを指でとんとんと叩いた。
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[Principal]
そうだな……午後の会議の準備でキミ、忙しいだろ。なんなら、案内はボクが代わるよ。
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[Teacher]
はっ……よろしいのですか? では、お言葉に甘えるといたします。あとは、よろしくお願いします。
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[Principal]
ウィ。お願いされた。
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[Soyeon]
…………
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[Anri]
…………行ったかな?
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[Narration]
案内の教師が教室から姿を消すやいなや、ファン・ソヨンは目前に立つ相手の胸のなかに飛び込んだ。
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[Soyeon]
杏里さん!
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[Anri]
やぁソヨン、また一段と美しく、んんっ……
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[Narration]
唐突に唇をふさがれ、虚をつかれた杏里は、そのまま長机の上へと倒れ込んだ。
>

[Soyeon]
ん……んんっ……ん……ん……
>

[Narration]
熱烈に舌をからめとろうとするキスに、杏里は体を開き、身をまかせた。
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[Soyeon]
…………っはあ……杏里さ……ぁん……
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[Anri]
すごいな……ハーバードはこんなキスも教えてくれるんだ? 
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[Soyeon]
杏里さんのバカ……あたし、寂しかったんですよ? 何度も何度もメールを出したのに……
>

[Anri]
ちゃんとぜんぶ目を通していたよ。キミがどんどん成長している様子がわかって、嬉しかった。自分をふりかえって、すこし、焦りもしたけどね。
>

[Soyeon]
勉強は楽しかったけど、杏里さんのいない毎日が、どれだけ辛かったか……
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[Anri]
ん……ごめんよ……
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[Narration]
杏里はソヨンを両頬をはさみこんでじっと見つめると、額に口づけた。
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[Soyeon]
返事をくれなかったのは、許してあげます……でも、まさかまた、新しい恋人を作ったりはしていないでしょうね?
>

[Anri]
…………えーと。
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[Soyeon]
…………やっぱり……!
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[Narration]
ソヨンは、杏里の胸に頭を乗せて、深いためいきをついた。そんなソヨンの頭を、杏里は優しくなでおろす。
>

[Soyeon]
本当にしょうがない人……でも嘘がつけない性格は変わっていないのですね。
>

[Narration]
それでも、杏里の腕にくるまれ、ソヨンは安堵したようだった。
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[Anri]
きみは? 浮気した? ハーバードには、きっと優秀で可愛い子がいっぱい……
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[Soyeon]
バカ。
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[Soyeon]
わたしは、杏里・アンリエットだけになつく、一匹の子猫です。
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[Anri]
ん……
>

[Soyeon]
……そういえば、ヤーンはどうしています?
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[Anri]
とっても元気さ。もうすっかり、かなえさんの使い魔だよ。そのうち、ミキサー猫に改造されちゃうかもしれないな。
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[Soyeon]
あら……天京院さん、あんなに嫌がってらしたのに……杏里さんがつれなくするから、きっと寂しいんですよ?
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[Anri]
んー。毎日、顔は会わせてるけどなあ。
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[Soyeon]
そ、れ、で、も。
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[Soyeon]
杏里さん、まだわかっていないんですね?本当に……いつまでも子供のような人。
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[Soyeon]
いいです。今、この時は、あたしだけの杏里・アンリエットですよ……
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[Anri]
ああ、ソヨン……
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[Narration]
ソヨンは杏里の襟元をあけてキスマークを残しながら、バックルをゆるめ、スラックスを脱がしてしまう。
>

[Narration]
負けじと脱がせようとする杏里の手も、そのひたむきな攻勢に、押されぎみだ。
>

[Anri]
……ソヨン。そんなに急がないで、ボクらの時間は、また始まったばかりじゃないか……
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[Soyeon]
ダメですよ……ハァ……ハァ……あたし……ずっと……ずうっと、杏里さんが欲しくてたまらなかったんです。
>

[Soyeon]
杏里さんのここだって……ほら……もうこんなにぬるぬるして……
>

[Anri]
んっ……ボクだって、どんなに今日が待ち遠しかったか……昨夜からずっとドキドキしていたんだ……
>

[Soyeon]
本当に……? それで、こんな場所で居眠りしていたんですか……くすっ……杏里さんらしい……
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[Anri]
ん……あっ……ああっ……とっても……上手だよソヨン……すごい……
>

[Soyeon]
はい……習った先生が良かったですから……
>

[Anri]
そんなキミも、今や一人の教師か……
>

[Soyeon]
ええ。ファン・ソヨンはもう、学生ではありません。だから、こんなことを教えてあげたりも……できます……
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[Anri]
うン……っ……ハっ、あっ、ああっ……いいよ……うっ……ううンっ……すごく感じる……ソヨン……た、たまらないや……
>

[Soyeon]
杏里さん……いえ……学園長……?
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[Anri]
ハァッ……ハァッ……な、なに……?あらたまって……うンっ…!
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[Soyeon]
あたし……レイチェル先生の記録を更新して、ポーラースターの最年少講師となったそうですね……
>

[Anri]
へ、へえ……そう……っ……?
>

[Soyeon]
確かにあたしも必死になって頑張りましたけれど……まさか、学園長が教師試験に手心を加えたりなんてことは……?
>

[Anri]
……さ、さあ……別に……
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[Soyeon]
……本当……ですか?
>

[Anri]
ひゃっ……うくっ……し、してない……はぁっ……してないったら……
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[Soyeon]
………………
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[Anri]
……あっ……そ、そんな……一緒に耳を噛んだりしたら……だめだよ……あっ……ああっ……ごめん……実は……した……しました……
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[Soyeon]
……やっぱり……
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[Anri]
で、でも……結局、駄目だったんだ……船長にバレちゃってさ……
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[Soyeon]
え……っ?
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[Anri]
ほうぼうの有名教授に書かせた推薦文、ぜんぶ破り捨てられたよ……だから、きみが実力で試験に受かった時は……本当に嬉しかった……
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[Soyeon]
さすが船長……まだまだ健在ですね。
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[Anri]
おかげでこっちは毎日大変さ。PSと指導部と船長、そんなこわもてに囲まれて……まさに中間管理職さ……
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[Soyeon]
ふふ……お仕事ご苦労さまです……で、も……そんなズルをした杏里さんは、おしおきです……
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[Anri]
そんなぁ……堪忍しておくれよソヨン……
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[Soyeon]
……この船で杏里さんと過ごしたあいだに、あたし……何回イかされたでしょうね……?覚えています?
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[Anri]
そんな……か、数え切れないよ……二人きりの時は……さ……いつもだったから……
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[Soyeon]
ええ……そうです。あたしがいくら、もう寝ましょうって言っても、やめてくれませんでしたよね……風邪をひかれた時だって、添い寝してほしいだなんて言って……
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[Soyeon]
そうして、あたしばかり何度も何度もイかされて……ひどい人……
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[Anri]
だって……きみが可愛くて仕方なかったんだ……
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[Soyeon]
じゃあ杏里さん……? 今度はあたしが杏里さんをイかせてあげます……足腰が立たなくなるまで……数え切れないくらい、たっぷり……
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[Anri]
ええ……数え切れないって……一体?……数えられないくらいか……だね……そっか……
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[Soyeon]
いいですか、杏里さん……子猫はね、いつかメス猫になるんですよ……?
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[Anri]
今だって、ソヨンはボクの子猫ちゃんだよ。
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[Soyeon]
……はい……嬉しい……
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[Narration]
突然カリヨンの調べが教室に響きわたった。二人はびくりと、身を硬くする。
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[Anri]
あっ……大変だ。午後の授業が。ごめんソヨン、この続きはまた夜に……
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[Soyeon]
……杏里さんは、あたしが授業がある時でも、ベッドから離してくれませんでしたよ……?
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[Anri]
そ、それとこれとは───
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[Soyeon]
だぁめ……さあ、イッてください……杏里さん……天国をお見せしましょうか……? それとも地獄がお好きですか……?
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[Narration]
そうするうちにも、学生たちの笑いさざめく声が教室に近づいてきた。
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[Anri]
ソ、ソヨンっ頼むよっ……そ、そうだ、扉に鍵を……施錠ッ!
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[Narration]
杏里が指を鳴らすと、大教室のすべての扉が勢いよく開かれた。
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[Anri]
違うっ! 閉めるんだってのに!このポンコツ! 施錠、施錠、施錠ッ!
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[Narration]
ムキになり杏里が何度も指を鳴らすと、今度は黒板のスクリーンに光が灯った。
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[Narration]
室内カメラがパンし、二人の寝そべる長机がスクリーンに大写しになる。
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[Anri]
うわあっ
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[Narration]
少女たちは、物音にいぶかりながらも続々と教室に入室してきた。二人はガヤガヤとした賑わいに取り囲まれた。
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[Narration]
広大な黒板いっぱいに投影された、学園長と教師の痴態に、少女たちは息を呑み、頬を赤らめながらも、くいいるように見いった。
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[Anri]
ソヨン……ねえっ……みんなに見られてるよ……っ!?
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[Soyeon]
そう……みんな、熱心なんですね……
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[Soyeon]
いいじゃないですか、杏里さん……?恥ずかしいけど、いい機会ですし……お嬢様たちに、愛について教えてあげましょう……?
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[Anri]
ちょっとソヨンッ……本当にまずいよっ……あっ……あっ、ああっ……また……すごいっ……どこでこんな事……じゃなくて……ううっ……ハッ……ハァ……ッ!
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[Soyeon]
うふ……ふふ……どうです……こういうの? 体がフワって浮きません……? 杏里さんも知らなかったでしょう? こんな感じ……
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[Soyeon]
ふぅっ……ふふっ……あたし、人間の体のこと、いっぱい勉強したんです……博士号はね……ダテじゃないんです……
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[Anri]
あっ……ソヨン……だめだったら……また船長に怒られちゃうから……あっ、ああっ……いけないよソヨン……ソ……!
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[Anri]
………あっ……あああああああ……ッ!!
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