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[Narration]
ポーラースター少女探偵団による、レイチェル・フォックス尾行作戦は失敗に終わった。
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[Narration]
こうしている間にも、杏里の退学タイムリミットは刻一刻と近づいている。
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[Clare]
……とりあえず、杏里先輩はいっそ退学になっちゃった方がいいんじゃないかな?
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[Mirriela]
あの壊れっぷりを見ているとねぇ。
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[Narration]
教員室を見張る3人の後ろで、杏里は画用紙にクレヨンで「ソヨン」と題した絵を描いていた。
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[Narration]
できあがるたび、その絵に向かって「ボクが悪かった」だの「まだ愛してるんだ」などと呼びかけている。
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[Mirriela]
でも、それもソヨンちゃんに嫌われたのが、本当にショックだったんだと思えば……。
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[Coe]
でも、嫌われるようなことしたからいけないんだよ?
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[Eliza]
ほらほら杏里様、制服にクレヨンがついてしまいますよ?
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[Narration]
イライザにクレヨンを取り上げられてめそめそしている杏里は、見ていてかなりやばかった。
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[Narration]
……というより、人間として見ていて辛かった。
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[Clare]
ソヨンちゃんも相変わらずだし、やっぱりわたし達が頑張るしか道はないのよ!
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[Coe]
……でも、こうして見張ってるだけで証拠が見つけられるのかなぁ?
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[Narration]
クレアとミリエラも、それは痛切に感じていた。
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[Narration]
打開策が必要なのは確かだ。
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[Narration]
何かを考えていたミリエラが、ふたりを誘う。
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[Mirriela]
……ちょっといいか?
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[Narration]
3人は、コーの部屋に集まって作戦会議を開いていた。
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[Clare]
……強襲作戦!?
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[Narration]
その大胆なアイデアに、クレアが目を丸くした。
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[Mirriela]
……といっても、腕力でケリをつけようと言ってんじゃないぜ?
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[Mirriela]
ただ尾行するんじゃなく、尻尾を出しそうな状況を、こっちから作ろうって計画なんだ。
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[Coe]
そーだね、このままじゃ、ずーっとかわんないもんね。
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[Narration]
ただ見張りを続けるだけの単調な行動に退屈していたコーは、即座に賛成した。
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[Mirriela]
クレアはどう思う?
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[Clare]
危険はないかしら?
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[Mirriela]
それは、これから作戦を決めるときに考えることさ。
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[Mirriela]
まずは、やるか、やらないかだ。
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[Clare]
うん……。
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[Narration]
クレアは慎重に考えるふりをしていたが、状況打破の計画に賛成なのは見たところ間違いない。
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[Clare]
わかった、やりましょう。
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[Clare]
でもリーダーとして、危険なことは許可できないわ。作戦はあくまで慎重に、よ?
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[Mirriela]
……いつからクレアがリーダーに?
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[Clare]
え? ……最初からそうじゃない。
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[Coe]
ほへ?そうなってたの?
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[Mirriela]
異議があるぞ。選挙をやってない。
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[Clare]
3人で選挙はないでしょ?
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[Coe]
でもそれは民衆にあたえられた権利なんだよ。
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[Clare]
……だって、わたし以外の誰がリーダーをできるのよ!?
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[Mirriela]
いや、ちょっと、ちょっと待て……!
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[Narration]
ミリエラは全員の発言を手で制した。
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[Mirriela]
異議はあるけど、この問題については後でまた話し合おう。
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[Mirriela]
いまは、あの先生をどういう罠にかけるか、それを話し合うべきだ。
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[Clare]
……そうね、時間もないし。
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[Coe]
それでいいよ。
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[Mirriela]
さて、そうと決まったものの、どういった作戦を展開したもんかな──。
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[Coe]
あ、いいことかんがえた!
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[Narration]
手を挙げたコーに視線が集まる。
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[Coe]
お洋服を着換えるようにさせて、それを覗けばいいよ。
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[Clare]
着換え……?
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[Mirriela]
悪くないけど……どうやって?
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[Coe]
ん〜、ジュースを引っかけちゃうのは?
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[Clare]
そうねぇ……でも、上着をかえるぐらいの汚れじゃ意味がないわよ?
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[Mirriela]
そうだ。できれば裸にならないといけないぐらいのがいい。
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[Coe]
じゃあ……10リットルぐらい?
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[Clare]
……どういう状況で、10リットルもジュースを引っかけられるのよ……。
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[Clare]
他の方法を考えるべきじゃない?
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[Narration]
3人はしばらく押し黙り、うーん、と考え込んだ。
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[Narration]
やがて、ミリエラがポンと手を打つ。
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[Mirriela]
──プールに誘い出そう!
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[Tenkyouin]
……なるほど、大胆なことを考えたな。
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[Narration]
3人の作戦を聞いた天京院は、素早く内容をシミュレートした。
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[Tenkyouin]
成功すれば効果的なうえに、失敗した時のリスクも低めだ。
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[Tenkyouin]
証拠を掴んだ場合、即座に逃げる準備をしておかないとまずいが……。
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[Mirriela]
じゃあ、いいですね?
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[Narration]
意気込むミリエラを、ちょっと待てと制する。
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[Tenkyouin]
ソフィア教授の屋外授業を見てみたい──そう言って、レイチェル教員にプールまで案内させるのはわかった。
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[Tenkyouin]
そこからプールに、彼女を突き落とすのは?
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[Clare]
ジャンケンで負けたコーがやります。
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[Coe]
がんばるー。
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[Tenkyouin]
じゃれつくふりをして突き落とす。更衣室で着換えるように誘導する。それを覗く。
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[Tenkyouin]
万が一のときは、ソフィア教授の授業に出ている学生に助けを求めるんだな?
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[Mirriela]
そういう事態にはなりたくないけどさ。
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[Tenkyouin]
そうだな。どっちにしろ気づかれた場合は、逃走を最優先にしたまえ。
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[Tenkyouin]
……焚き付けたのはあたしだが、君らに何かあれば杏里にもソヨンにも顔向けができない。
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[Tenkyouin]
……本当なら、こういう強引な作戦の時こそ杏里に頼みたいところだが……。
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[Clare]
いえ、わたし達がやります。だって、わたし達の作戦だから!
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[Narration]
顔を輝かせて宣言する少女たちに、天京院はただ笑顔だけを向けた。
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[Tenkyouin]
そうか──健闘を祈る!
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[Narration]
明かに元気なく、とぼとぼと歩いていたソヨンは、背後からかけられた明るい呼び声に振り向いた。
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[Soyeon]
あ……み、みんな?
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[Clare]
ソヨンちゃん、元気出してね?
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[Mirriela]
あたしたちも、頑張るからさ!
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[Coe]
じゃあ、急いでるからまたねー!
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[Soyeon]
あっ、ちょっと……。
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[Soyeon]
……頑張るって……?
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[Narration]
ギリシア建築風に造られた、どこか異世界のような風景のプールは、その見た目から、水泳以外の目的に使用されることも多々あった。
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[Narration]
本日の役目は──陰謀である。
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[Narration]
もうすぐ、クレアがレイチェルを連れてくるはずだ。
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[Narration]
コーは頭の中で、何度も何度も行動計画を繰り返していた。
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[Coe]
(……この作戦を成功させて……)
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[Coe]
(ソヨンちゃんからの信頼あーっぷ。さらに3人の中でのリーダー資質をしめして、うまくいけば学園のえーゆーにもなれるかもしんない……)
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[Coe]
(ふっふっふっ、ちょろいもんよー)
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[Narration]
──と、コーが取らぬ狸の何とやらを妄想していると、クレアとレイチェルの声が聞こえてきた。
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[Coe]
きたきた……。
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[Narration]
計画はばっちりだ。飛び出すタイミングはクレアが台詞で教えてくれる。
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[Narration]
そうしたら、全力で突っ込むだけだ。
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[Coe]
(おちつけおちつけおちつけ……)
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[Narration]
クレアの声が、柱の向こうにハッキリ聞こえるようになってきた。
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[Clare]
すいません、先生。わざわざ案内してもらっちゃって……。
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[Rachel]
いいのよ、大事な教え子だもの。
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[Clare]
先生って、話しやすいから……。つい、お願いしちゃうんです。
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[Rachel]
あらー、嬉しいわね。
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[Coe]
(もーすぐだ……)
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[Clare]
でも、今日も暑いですね。
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[Narration]
クレアの口から、準備せよ──のメッセージが放たれた。
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[Clare]
でも、明日は雨かな?
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[Coe]
(ここだーっ!)
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[Narration]
柱の影から、思いっきりコーは飛び出した。
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[Coe]
わーい、わーい、レイチェルせんせーっ!
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[Rachel]
──えっ?
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[Rachel]
きゃあっ!?
>

[Narration]
スピード、タイミング、すべてが計画どおりの、完璧な体当たりだった。
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[Narration]
しかし、誤算がひとつだけ。決定的なものがあった。
>

[Narration]
……コーの体重は軽かったのである……。
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[Narration]
ばっしゃーんっ!!!
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[Clare]
あーっ、コー!?
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[Rachel]
た、たいへんっ!
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[Narration]
体格の差に跳ね返されて、自分がプールの中に沈んでいったコーは、意識の片隅で冷静に考えていた。
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[Coe]
あー、そりゃそーだよねー。
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[Narration]
後の祭であった。
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[Narration]
プールに落ちたコーはすぐに助けられたものの、とうぜんびしょぬれだった。
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[Narration]
レイチェルはすぐさまコーを抱きかかえると、更衣室に走った。
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[Narration]
濡れたままでいると風邪をひく──と、言いながら。
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[Clare]
……それで、さっき、更衣室に入っていったんだけど……。
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[Mirriela]
体重差は考えてなかったな。……けど、そうすると見かけより重いのかな、あの先生?
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[Clare]
……それより、コーはどうする?
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[Mirriela]
どうするって……どうにもならないだろ?
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[Coe]
ああんっ、せんせー、自分でできるよー!
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[Narration]
先ほどから、更衣室の中ではコーとレイチェルの会話が聞こえてくるのだが、どうやらコーが不利である。
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[Rachel]
だーめ。ほら、こんなにビショビショ。はしたない子ねぇ……ほら逃げないの。
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[Coe]
そこはいーよぉ。自分でできるー、さわんないでー!
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[Rachel]
はーい全部ぬぎぬぎしましょうねー。
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[Clare]
……コー、かわいそう。
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[Mirriela]
戦いに犠牲はつきもんだからさ……。
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[Rachel]
ほら、こんな濡れちゃったパンツは先生がもらって、じゃなくて処分してあげるから。
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[Rachel]
かわりにこのシルク100%のパンツをあげましょう!
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[Coe]
やだー、パンツ返してー!
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[Narration]
……作戦は失敗した。
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