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[Narration]
ふらりと杏里の前に現れたニコルは、杏里を鐘楼の見晴らし台へと誘った。
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[Anri]
コローネ……は?
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[Nicolle]
またニキだよ。ついでだから、あずけてきた。
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[Nicolle]
……まだ、口を聞いてくれないのかい、彼女?
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[Anri]
……え、誰がだって?
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[Nicolle]
バァカ。ソヨンだよ。決まってるだろ?
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[Anri]
…………うん。
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[Nicolle]
はぁ……やれやれ!杏里がそんなに落ち込むなんてね。
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[Anri]
ニコル……ボクは、間違ったことをしたつもりは無いんだ。ただ、自分に正直に……
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[Nicolle]
ハイハイ、わかってるって。杏里は杏里。ソヨンはソヨン。ついでに、あたしはあたし、だ。
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[Narration]
はるか水平線を望む鐘楼の側窓から、ニコルは身を乗り出し、亜麻色の髪を風になびかせた。
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[Narration]
鐘楼から見下ろせば、今、登ってきたばかりの円形のカリヨン広場がある。その外縁には空中庭園が広がり、さらに外側は一面の森だ。
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[Narration]
森が切れると、すぐに海がはじまる。船尾を向けば、巨大な煙突と後部の構造物が世界の壁のようにせまり、鐘楼と対峙している。
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[Nicolle]
……ここにいると、なんだかフィレンツェを思い出すなあ。
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[Anri]
……イタリア。トスカナのキミの故郷?
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[Nicolle]
うん。こんなに爽やかな場所じゃないけどねえ。
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[Nicolle]
ごちゃごちゃでさ。赤茶けていて、キッタない街なんだよ。歴史の重みっていうか、あれは、人の汗と血の色さねえ。
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[Nicolle]
……よく授業をエスケープして、こういう人気の無い、見晴らしのいい場所で吹かしていたっけ。
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[Anri]
あいかわらずパパ・ジラルドは、帰って来いってうるさいんだ?
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[Narration]
なぜそんな事を杏里が気にするのかといえば、時々当のパパ・ジラルドから、脅迫じみた電話がかかってくるからだ。
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[Narration]
なんでも、麻薬と臓器以外だったらなんでも扱う大親方、との話。
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[Nicolle]
ああ、自分で放り込んだくせにね。でも、あの息苦しい家に戻るよりは、この船にいるほうが何倍もマシだよ。しばらくは厄介になるさ。
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[Narration]
ニコルは、ぱっと振り向いた。
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[Nicolle]
いっそさ、気にしないってのは?スカッと忘れちゃってさ!?
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[Narration]
苦虫を噛んだような杏里に、ニコルはぽりぽりと頭を掻いた。
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[Nicolle]
……そうもいかないか。だいたい杏里、アンタ失恋したことあるの?
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[Anri]
……あるさ。
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[Anri]
すごく可愛いって感じた子が、年下かと思っていたら、実は年上だったり、年下でも実は男の子だったり……
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[Anri]
するとなぜか、めっきり興味が失せてしまうんだ……
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[Nicolle]
そーゆーのは、失恋とは呼ばない。なんなんだアンタはまったく。
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[Nicolle]
まあ、なんだ。ソヨンはいい娘だよ?あんたの生まれたキョートの通りみたいにまっすぐだ。
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[Nicolle]
まっすぐすぎて、フィレンツェのぐねぐね道に育ったあたしにゃ、正直ちょっと苦手だけど……
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[Nicolle]
ま、しばらくさ、ゆっくり様子を見守ってやりな? あの娘だって、落ち着いてくれば、きっと杏里の気持ちをわかって……
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[Narration]
それでもかわらず杏里は、げんなりとうなだれている。
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[Narration]
そして、またもや深いため息をつこうとする杏里の背を、ニコルはばんばんと叩いた。
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[Nicolle]
ああもうっ、とにかく元気出せよ!湿っぽいのは嫌いだ!
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[Anri]
ん……
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[Nicolle]
ほら、あたしの髪いじるか?好きだろ? 長い髪いじるの!今なら特別に無料サービスにとしていやるから!
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[Anri]
……えっ……ホントに? いいの?いつもはすごく嫌がるのに……あとから請求しても遅いよ……?
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[Nicolle]
いいって言ってるから、いいんだよっ!
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[Narration]
杏里はのろのろとした動作でニコルの背後に立つと、ほつれた長い髪の隙間に、ゆっくりと指を通す。
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[Narration]
見るからにブラッシング不足のニコルの髪が、杏里の指の谷間をくぐると、生まれ変わったように、さらさらとほどけながら、陽光に輝いた。
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[Narration]
くるくると髪を指先に巻いたりしているうちに、杏里はだんだんと明るさをとりもどしてきた。
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[Narration]
だが対照的に、背を杏里にあずけて寄りかかるニコルの表情は、暗く沈んでいく。
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[Nicolle]
……た、楽しいか?
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[Anri]
うん……とっても……ねえ、ニコル。一度、きみのドレスを選ばせてよ。そうだな。今日でもいい。
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[Nicolle]
……ハァ? い、や、だよ。そんなチャチなプレゼントで、あたしをつろうなんて。
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[Anri]
きみが女の子らしい姿をしたところが、見たいんだ。
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[Narration]
ニコルは肩をすくめた。
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[Nicolle]
皮肉のつもりかよ? だったら、石鹸にブラシに口紅もセットでなっ。
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[Anri]
きみの姿を、瞼に焼きつけておきたいんだ。
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[Nicolle]
……それ……どういう意味だよ。
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[Anri]
うん。もう来週には、ボクは……
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[Nicolle]
ば、バァカ、なにシケたこと云ってんだ。心配すんなって! 杏里は、きっと犯人を捕まえるさ!
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[Anri]
……その自信が、すでに今のボクには無いんだ。
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[Nicolle]
……まっ、まったくっ。んなわけないだろっ! バカッ、バァカッ! 脳味噌お天気娘!
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[Nicolle]
ファンクーロ! ポルカミゼーリア!
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[Narration]
杏里はそんなニコルの髪をすきあげ、名残惜しむように顔をうずめた。構わず、ニコルは罵声を飛ばし続けた。
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[Nicolle]
だいたい、あたしと大勝負した時の、あの杏里はどこへ行ったんだよ! 最後まで勝負はわからない、って言ったのは、杏里じゃないか!
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[Anri]
いやニコル……勝負はもう……
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[Nicolle]
だからッ、まだついてない! 時間はある! タイムリミットぎりぎりまで、絶対あきらめたりするなっ! 
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[Narration]
背を向けたまま、ニコルは吐き捨てるように言った。
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[Narration]
かすかだが、杏里に微笑みが戻る。
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[Anri]
……ありがとう、ボクの愛しいニコル。そうだね。まだ終わりじゃないんだ。うん……元気を出してみるよ。
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[Nicolle]
……ふんっ……世話かけさせなさんなっての……
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[Narration]
杏里の指がハープを奏でるようにひるがえり、ぞろ長い前髪の裏に伸びると、ニコルはびくりと身じろぎした。
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[Narration]
……だが結局は、自分の腕を交差させ、すがるように杏里の手を握りしめる。杏里の指先は、そっとニコルのまぶたに触れた。
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[Narration]
隠れて見ることのできないニコルの双眸は、ベールの下で、密やかに熱く濡れていた。
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[Narration]
そこには、杏里を想うニコルの心が、とめどなくあふれ出していた。
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[Narration]
杏里は無言のまま、ぎゅっとニコルの体をかき抱く。
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[Narration]
握り返すニコルの指にも力がこもった。ニコルの唇がわななく。
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[Nicolle]
い……行かないでよッ、杏里!
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[Anri]
…………ニコル。
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[Nicolle]
いやだ! 杏里がいなくなるなんて!あたし、いやだ、いやだよぉッ!
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[Narration]
ニコルは腕の中できびすを返し、杏里にしがみついた。
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[Nicolle]
行ったらやだ、行っちゃやだよぅっ!離ればなれになんか、なりたくないっ!行かないで杏里ッ、杏里ィ───
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[Nicolle]
うっ……ううっ……うっ……
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[Narration]
泣きじゃくり、跳ね上がるニコルの肩を、杏里は優しく包んだ。
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[Anri]
……そうだね……キミが一番不安だったのに……ずっと我慢していたんだね……
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[Narration]
ニコルはしゃくりあげ、杏里の胸に顔をうずめながら頷いた。
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[Nicolle]
あたし、もう、平気でなんかいられない……あと少しで、杏里とサヨナラだなんて……顔だって、もう、まともに見られない……
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[Nicolle]
ごめん杏里……最後まで、いつものニコルでいられなくて……
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[Narration]
杏里は唇をかみしめる。つきあげる衝動に、杏里は忠実に従った。
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[Anri]
……っ……ニコルっ
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[Nicolle]
……あ、杏里……んっ……んむっ……
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[Narration]
杏里はいっそう強い力でニコルを抱きすくめると、震える唇を強引に奪い去った。
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[Narration]
長い口づけのあと、二人はそっと体を離した。
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[Nicolle]
……っはぁぁ…………
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[Nicolle]
もっと……っ……杏里のキス……大好きィ…………
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[Anri]
うん……
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[Narration]
杏里は少女が満足するまで、唇を重ね合い、その舌を吸い続けた。
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[Nicolle]
……っ……はぁ……はぁ……ごめん……杏里を……励ましてあげたかったのに……あたし……逆に杏里に……
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[Anri]
ううん……いいんだよ、ニコル……んっ……十分、ボクは元気づけられたさ……
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[Anri]
そうさ。キミを置いていけやしない……
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[Nicolle]
え……も、もしかしてそれって……あ、杏里……あたしと、か、駆け落ち……?
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[Anri]
ぷっ。
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[Narration]
ニコルのあまりに神妙な様子に、杏里は思わず吹き出した。
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[Anri]
そ、そうじゃなくて……なんとかしてこの船に残るように頑張るってことさ?
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[Nicolle]
……あ……そうなんだ……
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[Narration]
ひどく残念そうに少女は肩を落とす。
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[Anri]
それとも、ニコルは駆け落ちしたかった?
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[Nicolle]
……やっぱり、いやだな。杏里、ぜんぜん生活力無さそうだもの。
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[Anri]
その時は誰かさんが養ってくれる。
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[Nicolle]
ば……バァカ……ッ
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[Narration]
ニコルは涙を指でぬぐって笑った。
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