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[Narration]
日曜の日中は、何事もなく過ぎていった。
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[Narration]
たっぷり休養をとった杏里に対して、一昼夜つきあったクローエは疲労困憊していた。
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[Soyeon]
クローエ先輩……頭痛、おさまりましたか?
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[Chloe]
……ソヨンは元気ね。
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[Chloe]
誰よ、レイプ犯の裏の裏をかいて昼間から見張ろう、なんて言ったのは。
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[Anri]
大丈夫、クローエ?でも、ゴルフって不思議なスポーツだよね。見ていて最後までよくわからなかった。
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[Chloe]
ボールを棒でひっぱたくだけじゃないの……ううっ……ちょっと横にならせて……
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[Anri]
ボクが看ていてあげようか?
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[Chloe]
あなたは、するべきことがあるでしょう。
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[Anri]
そうなんだ。そろそろ、ボクは行くよ?えーと、おフロに入ってから。
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[Soyeon]
あたしもアルマさんの方に戻ります。
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[Anri]
きみ一人でかい?
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[Soyeon]
あ、杏里さんだってお一人です。だって、今夜が正念場じゃないですか?
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[Narration]
額に乗せた氷嚢を支えながら、クローエがベッドから立ち上がった。
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[Chloe]
ダメよ、ソヨン……ひとまず天京院先輩の部屋に行くわ。
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[Anri]
ソヨン、きみは狙われているんだよ。危険なんだ。
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[Anri]
迂闊に動いたらいけない。敵の罠に、そのまま飛び込んでいくようなものだよ。
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[Soyeon]
アルマさんだって危険なんです!
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[Chloe]
アルマにはウェルズがついているわ。今日だって、ずっと影のように付き添って……痛っっ…………
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[Soyeon]
それに、杏里さんは……
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[Soyeon]
杏里さんだって、ずっと、まるで男の人みたいに振る舞っていますけれど、杏里さんだって女の子なんですよ!?
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[Soyeon]
一人でだなんて、危ないことはよしてください!
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[Soyeon]
PSにすべて事情を話して、あとはあの方たちにお任せしましょう!
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[Soyeon]
そうすれば……!
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[Anri]
PSに話してしまったら、ボクらがどれだけ犯人に近づいていても無駄になってしまうよ。
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[Anri]
かなえさんも言っていたろう?PSの情報は、みんな犯人に筒抜けになっているって!
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[Soyeon]
でも、杏里さんが……っ杏里さんに何かあったら、誰が助けてくれるんですか?
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[Chloe]
……頭に響くんだけど。
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[Soyeon]
あっ、ごめんなさい……っ
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[Chloe]
二人とも落ち着きなさい。
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[Narration]
息をあらげて言い争う二人の間に、クローエが割って入った。
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[Chloe]
……大丈夫よ、杏里は……。
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[Chloe]
杏里はか弱い女の子じゃないし、わたしたちの期待を裏切るようなことは決してしないわ。
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[Chloe]
信じなさい、杏里を。
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[Chloe]
そうすれば……まあ、救われないかもしれないけれど、気分だけなら楽になるわ。
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[Anri]
誉めたの?
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[Chloe]
ええ。手放しの絶賛。
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[Anri]
ありがとう。でも……なんだか複雑な気分。
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[Narration]
杏里は、クローエとソヨンを天京院の部屋まで送ると、部屋に戻って風呂を浴びた。
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[Narration]
本当はそのまま目的地であるプールに向かっても良かったのだが、気分を落ち着けたかったのだ。
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[Narration]
ソヨンと言い合った時の興奮が、いまだに収まらないでいる。
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[Narration]
こんなふうに時々、ソヨンとぶつかってしまうのは何故なのだろうか。
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[Narration]
ソヨンは決して我が儘な子ではない。ただ時々とても強情になる。
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[Anri]
よしっ。
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[Narration]
杏里は決心を声にして、浴槽から立ち上がった。
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[Narration]
もう一度、アルマに逢いに行こう。
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[Narration]
いつぞやの夜以来、自分はアルマを自然と避けてしまっていたような気がする。
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[Narration]
ソヨンの気持ちをムダにするわけにはいかない。
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[Narration]
付き人のウェルズに何と言われようと、アルマ本人にどう思われていようと、そんなことは問題じゃない。
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[Narration]
彼女たちに警告を発して足りないということは無いのだから。
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[Narration]
部屋を出る直前、天京院の部屋へと電話を入れた。
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[Narration]
『何を言ったんだ、杏里? ずいぶん、しょぼくれているぞ』
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[Narration]
杏里は、ソファに沈むソヨンの姿を思い浮かべた。
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[Anri]
そっか……
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[Anri]
……ねえ。伝えてほしいんだ、かなえさん。ボクが間違っていた。
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[Anri]
ソヨンはか弱い女の子なんかじゃない……ボクはソヨンを護ろうとして……本当は、何かを押しつけようとしていたんだ。ごめんね……って。
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[Narration]
『…………』
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[Anri]
それだけ……
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[Narration]
『わかったよ……』
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[Narration]
ゴッ…ゴッ……
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[Narration]
アルマの部屋を訪れた杏里は、扉にかかった重いノッカーを打ち鳴らした。
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[Narration]
きっとすぐに、ウェルズの渋い顔が現れるに違いない。
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[Narration]
ところが、いくら待っても反応は無い。
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[Narration]
不審に思った杏里は、またノッカーを持ち上げた。
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[Anri]
留守……かな?夕食とか……?
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[Narration]
部屋を離れてレストランのある区画へと足を向けた杏里は、急な不安にかられてまた扉の前に舞い戻った。
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[Narration]
扉を何度も拳で叩く。
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[Anri]
アルマ?アルマ!?
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[Anri]
杏里・アンリエットだ!頼むから!中にいるなら返事をして!?
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[Narration]
胸が高鳴り、こぶしを痛いほど扉に打ちつけた。
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[Narration]
ようやく内側から声がした。
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[Narration]
「いま、あけます」
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[Anri]
───アルマ!?
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[Narration]
ようやく少女の声を耳にして、杏里はほっと胸をなで下ろした。
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[Narration]
扉を開き、おずおずとアルマ・ハミルトンが顔を出した。
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[Anri]
こんばんわ、アルマ。
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[Alma]
まあ、こんばんわ杏里様。
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[Narration]
深々とおじぎをするアルマには、寝癖を隠すように、帽子が被さっていた。
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[Alma]
……あの、私、仮眠をとっていたものですから……すみませんでした。
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[Anri]
いやボクこそ。いきなり来て、睡眠を妨げてしまったりして……
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[Anri]
疲れたんだね、一日中ゴルフをしていたから。
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[Alma]
まあ……ご存じなのですか?
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[Alma]
そうなのです。熱中が過ぎて、それですこし陽に当てられてしまって……
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[Anri]
本当だ……熱っぽそうだよ?ゆっくり休んでね。
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[Anri]
そういえば、オバさ……いや、ウェルズさんは?
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[Alma]
ビッフェに。まだ夕食を済ませていないものですから、ウェルズさんに適当に見繕っていただこうと……
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[Anri]
じゃあ……今は一人なんだ。
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[Alma]
はい。ですが、すぐに戻られますわ。
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[Anri]
そっか……じゃ、時間が無いか。実は、正直に言うとね、今日───
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[Anri]
ボクや、ソヨンや、クローエは、きみのことをずっと見張っていたんだ。何者か怪しい人影が近づかないだろうかって……
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[Alma]
まあ……以前、ソヨンさんがおっしゃられていた、犯罪者のことですのね?
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[Anri]
うん、何でもいいんだけれど。身の回りで何か変わったこと、無かったかい?
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[Alma]
……いいえ? 特には。
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[Narration]
杏里は他にもいくつかの質問をしたが、アルマには覚えが無いようだった。
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[Anri]
───じゃあ、本当に、何も異常は無いんだね?
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[Alma]
はい。すいません。
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[Alma]
これ以上、杏里様とお話ししていると、またウェルズさんが……
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[Anri]
ああっ、そっかぁ……
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[Anri]
でも、いい? アルマ。少しでも変わったことがあったら、すぐに連絡してよ?
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[Anri]
ボクは、このまま張り込みで外に出てしまうけれど、かなえさん……
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[Anri]
天京院鼎の部屋にかけてくれれば大丈夫。そこにソヨンもいるしね。
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[Alma]
はい……承知しました。重ね重ね、ご配慮ありがとうございます。
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[Alma]
ソヨンさんにも、どうぞよろしくお伝えください。
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[Anri]
うん……それじゃあ……
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[Alma]
おやすみなさいまし、杏里様。
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[Anri]
うん、よい夢をね、アルマ……いや、それも変だね……
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[Anri]
考えてみたらさ、こんなふうに二人で話せる機会なんて初めてなんだ。
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[Anri]
ほんとうなら、朝までついていてあげたいんだけど……ボクは、真犯人を捕まえないといけない。
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[Anri]
まあ、親切にもあのウェルズさんが見張ってくれているわけだし……
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[Alma]
うふふ……本当に、すぐ戻られますから。
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[Anri]
そうだね……うん。じゃあ、とにかく、おやすみ。
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[Alma]
はい。おやすみなさい。
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[Narration]
扉の向こうに消えるアルマを、杏里は微笑みながら見送った。
>

[Narration]
アルマも可憐な微笑を杏里に返す。
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[Anri]
いい子だなぁ……
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[Anri]
ちょっとマイペースな気もするけどね。さ、そろそろ行かなきゃ!ボクの使命を果たしに!
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[Narration]
杏里は船首方向へと足を向けた。
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