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[Narration]
時間は戻る。
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[Narration]
ドンドンと、せわしく扉が叩かれる。
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[Narration]
必死に呼びかける声が中へと、くぐもって届く。
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[Unknown]
…………杏里・アンリエットか。
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[Alma]
…………はぁ…はぁ…はぁ………っ
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[Unknown]
服を整えて、扉をあけてやれ……だが……
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[Unknown]
おかしな真似をすれば、お前も、奴も、二人とも殺す。
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[Narration]
そう冷酷に告げながら、怪人はアルマの目隠しを外した。
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[Narration]
怪人の姿よりも、先にアルマの目に飛び込んできたのは、一振りのナイフだった。
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[Unknown]
……いくらものを知らないお前でも、これが何かくらい解るだろう。
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[Narration]
湿ったシーツに手をついてぜいぜいと息をする、アルマの目と同じ高さに、カーボンスチール製の黒い刀身のナイフがつきつけられた。
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[Narration]
食卓のナイフ以外に、刃物など握ったこともないこの少女の瞳には、全長30センチに満たないナイフが、まるで大剣のように映った。
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[Narration]
徹底的に無駄を削ぎ落とされ、人を切り裂くためだけに鍛造された、人類究極の兵器───
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[Narration]
今にもそれは、使命を果たさんとする喜びに震え、部屋の空気を変えてしまう、どす黒いオーラを放っていた。
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[Unknown]
一突きで、骨の隙間から、肺を突き破る。悲鳴をあげるヒマなどは無い。ただ死ぬだけだ。
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[Unknown]
この意味がわかるな……
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[Alma]
……は……はい……
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[Narration]
鈍痛をこらえながら、のろのろとアルマは立ち上がり、スカートをひろいあげる。
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[Narration]
怪人は、ドレッサーからコロンをとると、アルマのほつれた髪へとふりかけた。
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[Narration]
情事の残り香は、強い人工的な香りに、うち消される。
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[Narration]
アルマが扉に向かうと、怪人は壁に寄り添い、すぐにアルマに届く場所でナイフを構える。
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[Narration]
ナイフの尖端を一瞥してからアルマは、震える指で扉の鍵を開いた。
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[Alma]
いま、あけます。
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[Narration]
ようやく扉を叩く音が止んだ。
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[Narration]
鍵を操作するうちに、アルマはふだんの微笑さえ取り戻し、夜の訪問者をむかえる顔を作っていた。
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[Narration]
果たして、息を切らした杏里が顔を出した。
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[Anri]
───じゃあ、本当に、何も異常は無いんだね?
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[Alma]
はい。すいません、これ以上、杏里様とお話ししていると、またウェルズさんが……
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[Anri]
ああっ、そっかぁ……でも、いい? アルマ。少しでも変わったことがあったら、すぐに連絡してよ?
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[Anri]
ボクは、このまま張り込みで外に出てしまうけれど、かなえさん……天京院鼎の部屋にかけてくれれば大丈夫。そこにソヨンもいるしね。
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[Alma]
はい……承知しました。重ね重ね、ご配慮ありがとうございます。ソヨンさんにも、どうぞよろしくお伝えください。
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[Anri]
うん……それじゃあ……
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[Alma]
おやすみなさいまし、杏里様。
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[Anri]
うん、よい夢をね、アルマ……いや、それも変だね……
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[Anri]
考えてみたらさ、こんなふうに二人で話せる機会なんて初めてなんだ。ほんとうなら、朝までついていてあげたいんだけど……ボクは、真犯人を捕まえないといけない。
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[Anri]
まあ、親切にもあのウェルズさんが見張ってくれているわけだし……
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[Alma]
うふふ……本当に、すぐ戻られますから。
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[Anri]
そうだね……うん。じゃあ、とにかく、おやすみ。
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[Alma]
はい。おやすみなさい。
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[Narration]
杏里は後ろ髪を引かれるようにして、その場を立ち去った。
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[Narration]
アルマの張りついた微笑の向こうで、果てしなくゆっくりと扉が閉じられていく。
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[Narration]
とてつもない恐怖に押しつぶされそうになりながら、アルマは我を忘れて叫び出したい衝動と闘う。
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[Narration]
再び扉を叩く音が聞こえるのではないか、そんな、はかない期待を手放せないまま、アルマはぽつぽつとつぶやいた。
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[Alma]
もう……行ってしまわれ……ました。
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[Unknown]
鍵をかけろ。
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[Unknown]
ウェルズはどうせ船倉賭博に入れ込んで、朝までは戻らない。
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[Unknown]
……ふっ……よい夢を……ね。相違ない。
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[Narration]
怪人が顎をしゃくると、アルマは示されるまま、よたよたとベッドへ向かった。
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[Alma]
……ハァ、ハァ、ハァ……ああっ……
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[Narration]
白い脚の合間から、アルマの破瓜の血と混じり合った、薄桃色の、ねっとりとした液体がつたい落ちた。
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[Narration]
駆けのぼるあまりの不快さに、アルマはその場にくずおれてしまう。
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[Alma]
い……っ、いやぁ…………ッ!!!
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[Narration]
ぷっ、ぷぷっ、と泡だちながら、濃い液体が漏れだし、内股をしたたっていく感触は、なおも続いた。
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[Narration]
床の上にうずくまり、顔を両手で覆いながら、少女はわなないた。
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[Unknown]
そんなところで一休みか?
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[Narration]
おどけたような仕草で、怪人がのぞき込み、嗚咽するアルマの腕を強引に掴みあげる。
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[Alma]
うっ……ううっ……っ……うっ……
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[Narration]
目隠しをはずされて初めて、アルマは相手の姿をまじまじと見つめた。
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[Narration]
それはアルマ自身もよく知る、女性───
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[Alma]
フォ……フォックス先生……っ……?
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[Narration]
怪人、いや、凶悪なレイプ犯、レイチェル・フォックスは、少女の脚の合間から、絨毯の中へと染みこんでいく液だまりを見おろし微笑んだ。
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[Rachel]
ハハッ! 俺の出したものをこぼさないよう、ずっとこらえていたのか?
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[Rachel]
奴に異変をさとられないよう、命がけで?奴をかばって?
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[Rachel]
すばらしい、アルマ! たいへんな精神力だ! 心から賞賛しよう!
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[Narration]
レイチェルは、ぱっと離した手を握り拳に変えて、アルマの顔を思い切りなぐりつけた。
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[Alma]
あがっ……ひっ……ひぃっ……!
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[Narration]
どさり、と床に投げ出され、血の味が口の中へと広がった。
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[Narration]
レイチェルは少女の顎を押さえつけて、馬乗りになった。
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[Unknown]
……そんなに杏里・アンリエットがいいのか? ええっ!? どうなんだ! お前もあいつに犯されたいのか!?
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[Alma]
うぐっ……ひっ…ううっ……
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[Narration]
答えにならないうめきをあげるアルマに、今度は、鋭い平手が飛んだ。
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[Narration]
もう一度。さらに、もう一度。
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[Narration]
腫れあがり、血や涙でぐしゃぐしゃになった少女の顔面に、レイチェルは頬を寄せた。
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[Narration]
愛おしむようにてのひらで包み込み、自分の顔を寄せる。
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[Rachel]
こんなに汚れて……痛かったでしょう……? ごめんなさい……ごめんなさいね……ハミルトンさん……
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[Narration]
レイチェルは、アルマの顔の汚れを丁寧になめとっていく。熱く燃える頬に、ひんやりとした感触が残った。
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[Alma]
ひっ……ひぐっ……ど……どうして……、どうして、こんなことをなさるのです……
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[Narration]
傷ついた舌をもつれさせながら、アルマはうめいた。
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[Rachel]
……あなたが……とてもとても可愛いくって……仕方がないのよ…………
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[Rachel]
可憐で……あどけなくて……この世の煉獄で這いずっている者たちのことなど……何も知らない……無垢そのもののフェアリィ……
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[Rachel]
だから……
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[Rachel]
どろどろに……汚してやりたくなる……!
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[Narration]
柔和なレイチェルの顔つきは、見る間に別人へと変貌していく。
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[Alma]
ア……アイーシャさんや、ほかの方々に、乱暴をしたのも、あ、あなただったのです……ね……
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[Narration]
アルマの問いには直接答えぬまま、レイチェルはうっすらと笑みを浮かべた。
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[Rachel]
乱暴……?…………確かに、おだやかとは言い難かったがな……
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[Rachel]
教えてやろうか、アルマ。
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[Rachel]
世の中には、ゆがんだ形でしか、おのれの愛情を現すことの出来ない者もいる───
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[Narration]
そう言うと、女教師は立ち上がり、下着の合間から、だらん、と半立ちになった肉茎を、誇示するように剥き出した。
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[Narration]
アルマは息を呑んだ。
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[Alma]
……こ、これはまさか……殿方の……?
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[Rachel]
殿方の……?アッ……ハハハハハッ……!
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[Rachel]
「殿方の……?」はよかったわね。そうよ。ほんの5分ばかり前まで、あなたの一番奥の奥まで、処女膜をぶち破って、出入りしていたものよ。
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[Narration]
めまぐるしく入れ替わる、レイチェルの人格に、くらくらとアルマはめまいを覚えた。
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[Alma]
あなたは……いったい……男性なのですか……?
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[Rachel]
男じゃない、しかし……女でもない。この胸も、ペニスも、自前のものさ。
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[Alma]
……ヘルマ……フロディトス……
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[Rachel]
そう……ご存じとはね。または、アンドロギュノス(両性具有)とも言うけど……要は“ふたなり”さ。
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[Rachel]
彫刻や神話の世界だけの存在じゃないの。いるのよ。どこにでも。ひっそりと、目立たないように隠れているだけ……迫害や、好奇の目を避けて。
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[Rachel]
……物心ついた時からずっと、私の心は男であると叫んでいたわ……だから、こうして女として喋っているのは、作りものの私。
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[Rachel]
私の両親はね、生まれたばかりの私に、よぶんな器官があるとわかった時、手術で切除して血を流すことを許さなかったのよ……
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[Rachel]
神が望まないのだと、頑なに拒んでね……私の神じゃないわ、彼らの神がよ?笑わせるわ……
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[Rachel]
そして……ただ彼らがそうであってほしいという思いこみだけで、女として育てられた……
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[Alma]
……おかわいそうに……
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[Rachel]
アハハハハハ……ッ!「おかわいそうに」?アハ、アッハハハハハッ……クックッ……
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[Narration]
レイチェルは腹を折って、けたたましい笑い声をあげた。アルマはびくりと体をふるわせた。
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List of all oneshots
List of all series

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