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[Narration]
杏里。ソヨン。そしてクローエ。
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[Narration]
三人は固唾を呑み、広場の中央に立つ一人の少女に注目していた。
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[Narration]
───少女ニキ・バルトレッティは、目をとじて、じっと耳を澄ましている。
>

[Narration]
ほかに人の姿もなく、広場は噴水の水音と4人の心臓の音だけが支配する。
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[Anri]
(……そういえば 大丈夫かい……? 噴水……)
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[Narration]
緊張にかたまっているソヨンに、杏里は小声で語りかけた。
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[Soyeon]
(は、はい……なんとか……)
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[Soyeon]
(本当は怖いんです……けど…… ちょっと大きめのお風呂だって 思って……)
>

[Anri]
(うん。偉いね)
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[Narration]
じょじょに噴水の勢いはゆるみ、完全に停止する。
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[Narration]
入学以来、彼女たちの経験したことのない静けさが、ベールとなって広場を覆った。
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[Anri]
ありがとう、クローエ。
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[Chloe]
───別に。
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[Chloe]
顔なじみの船員に、水質点検の時間をちょっとずらしてもらっただけ。
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[Chloe]
あまり長くは止めらていられないから。
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[Anri]
たぶん平気さ。カリヨンの鳴る間だけだもの。
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[Chloe]
カリヨンのゴースト?
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[Anri]
ニキはそう言っているんだ。確かに聞こえるって。
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[Chloe]
初耳ね。
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[Soyeon]
か、カリヨンを鳴らす……?まさか子供の幽霊たちが鳴らしているんじゃ……
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[Anri]
ふふっ……かもね?
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[Anri]
ニキは、ずっとこの音をさぐっていて、たまたまこの前はゴルフ場のコローネに行きついたらしい。
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[Soyeon]
そうだったんですか。ニキさんって、本当に耳がいいんですね。
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[Chloe]
良すぎよ。船を半分またいでいるじゃない。
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[Anri]
来てくれるかい、クローエ。
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[Chloe]
そうね。いいわ。
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[Chloe]
たとえゴーストといえども、わたしの知らない設備がこの船にあるなんて、落ち着かないもの。
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[Niki]
……………………
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[Narration]
杏里とニキが肌と肌を重ねた夜。船内をめぐっているうちに自分で見つけたものを、ニキはぽつぽつと語って聞かせた。
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[Narration]
ニキは唐突に杏里のもとにやってきて、自分の見つけたものを、語って聞かせた。
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[Narration]
カリヨンが鳴り終わったあと、どこからか、山びこのようにその響きを送り返してくるものがある、と───
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[Narration]
すぐに噴水の音に紛れてしまう、ごくかすかな音なのだが、それはとても素晴らしい音色に聴こえる、と。
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[Narration]
以前は、そんな音、聞いたことが無い。正体は何なのか……
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[Narration]
杏里にも原因を察することはできなかったが、どこかクローエの話と符合する部分があるのでは───そう、直感した。
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[Narration]
杏里は手の中の懐中時計に目をやった。
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[Anri]
(そろそろだ)
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[Narration]
───時刻ちょうど。自動演奏装置が最初のCの鐘を叩いた。
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[Narration]
天から降りそそぐ太陽の光と鐘の音を、ニキは一身に浴びている。
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[Narration]
杏里はそんな少女の姿を、目を細めて見つめた。
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[Narration]
メロディは終わりに近づき、最後にひときわ強く鐘が打たれると、広場にはふたたび静寂が戻った。
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[Niki]
…………
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[Narration]
少女はぴくりと瞼をふるわせた。胸元で手を握り合わせたまま、いっそう強く集中する。
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[Anri]
……なにか聞こえる?
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[Chloe]
……いえ。
>

[Soyeon]
…………
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[Narration]
やや離れた場所に立つ彼女たちには、やはり何も聞き取ることはできなかった。
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[Narration]
大廊下のアーチをくぐり抜けていった鐘の音も、しまいには外の波間へと旅立ち、どこかに反響を隠しているようには思えなかった。
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[Narration]
耳に手を当て懸命に耳を澄ますソヨンも、同様らしい
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[Anri]
…………ふぁーあ。
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[Narration]
思わずあくびが出る。ニキがおずおずと振り向いた。
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[Anri]
あ……ごめん。静かにしなきゃね。
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[Soyeon]
杏里さん、ニキさん……呼んでいるのでは?
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[Anri]
……え?
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[Narration]
ニキは杏里の足下をじっと見つめている。
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[Narration]
三人が近寄ると、少女は首でリズムをとり、指揮者が乗りうつったように指先を動かした。
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[Narration]
メロディが終曲に達する。ニキは、最後の一打をシンバル奏者へ指示するがごとく、水面を鋭く指さした。
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[Narration]
───その瞬間、水面は平坦なままでいながら、水中にあった落ち葉に、ざわめきが生じた。
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[Anri]
……!
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[Narration]
魔法のように、水中でふわっと浮き上がった葉に、目を見張る。
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[Narration]
また水音が戻ってきた。
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[Narration]
噴水の中に出現した水柱は、たちまち魔法の痕跡をかき消してしまう。
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[Narration]
しかし確かに彼女たちは見た。
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[Niki]
…………
>

[Narration]
ニキは物憂げに視線を落とすが、逆に杏里は興奮気味になってきた。
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[Anri]
なんだろう、今の!見たよね? ね!
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[Narration]
問答の必要もなく、ソヨンもクローエもこくりと頷く。
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[Narration]
クローエは顎に手をやって黙考した。
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[Anri]
いったいどこで鳴っているんだ。
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[Anri]
……どう、クローエ。何かわかった。
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[Chloe]
…………
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[Narration]
つい、とクローエは歩き出す。腕組みしながら広場を大股で横切るクローエは噴水からやや離れた場所に立った。
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[Chloe]
水が音をつたえやすいのは、さすがの杏里でも知っているわね?
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[Chloe]
噴水の配管はこの下を通ってるの。上水がこちら、下水があちらよ。
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[Chloe]
カリヨンのゴーストが潜んでいるのは、おそらく、このどちらかの方向に違いないわ。
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[Anri]
よし! それだけ分かれば!
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[Narration]
杏里たちは手分けして配水管の先をさぐった。
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[Narration]
4人は背をかがめて、真っ暗な通路を進んでいく。背後から差し込んでいた光も、じょじょに薄らいできた。
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[Narration]
クローエはぶつぶつと愚痴をこぼした。
>

[Chloe]
手抜き工事だわ。
>

[Chloe]
徹底的に糾弾しないと。
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[Chloe]
現場監督は断罪されるべきよ。
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[Anri]
まあまあ、クローエ。おかげで発見できたんだから。結果オーライだよ。
>

[Chloe]
まったく……隙間をしっくいで塗り隠すなんて……
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[Narration]
ゴーストの探索中に、一休みしようとしたクローエが壁に手をつくと、その途端に壁がごっそりと抜け落ちた。
>

[Narration]
開いた隙間に倒れ込んだクローエは、したたかに頭を打ちつけたのだった。
>

[Chloe]
別にいいのよ、醜いものは醜いままで。身の程を知らずに取り繕うのって、いちばん醜悪だわ。
>

[Anri]
はいはい。クローエが美しくてよかったよ。
>

[Chloe]
人の話を聞きなさいよ。
>

[Narration]
4人はガラガラと瓦礫を踏み分けながら、肩幅ほどしかない隙間へと分け入る。
>

[Narration]
カビくさく、むせかえる程に空気はよどんでいる。誰もこの場所を通ったことが無いのは瞭然としていた。
>

[Narration]
先頭を進む杏里の足下には、造船時から残っているらしい、瓦礫とも工事中のゴミともつかぬ有象無象の物体が堆積している。
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[Anri]
(犯人も知らないような場所じゃ、 捜しても無駄かな……)
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[Anri]
イテっ!
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[Narration]
飛び出したパイプに頭をぶつける。
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[Soyeon]
大丈夫ですか!?
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[Anri]
う……ここ、飛び出してるから気をつけてね…………アイタッ!
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[Soyeon]
杏里さん!?
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[Anri]
くぅぅ……っ今度はスネを……ううう……
>

[Narration]
これ以上痛い思いをしたくない杏里は、よぎる不安を追いやって、障害物へと集中した。
>

[Narration]
やがて進む先から、ぼんやりとしたオレンジ色の光がとどいた。
>

[Anri]
これは……
>

[Soyeon]
……ど、どこなんですか?まだポーラースターの中ですよね?
>

[Narration]
ひろがる世界は、まるでカタコンベ(地下墓所)のようだった。
>

[Narration]
杏里はもちろん、クローエにとっても初めて目にする場所だ。
>

[Chloe]
石壁に……石畳……?悪い冗談だわ。
>

[Anri]
また学園名所が増えてしまったみたいだねえ。
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[Narration]
どこから電力が供給されているのか、ところどころにオレンジ灯がともり、かろうじて足下を照らしている。
>

[Narration]
歩くぶんには問題はなさそうだ。
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[Narration]
地下道は一本の大きな通りになっている。自分たちが出てきたのは、その細い枝道の一つだった。
>

[Narration]
クローエは道の奥へ目を凝らして言った。
>

[Chloe]
広場から進入してきた方向からして、こっちが船首、こちらが船尾ね。
>

[Anri]
また二択かい?
>

[Chloe]
……手分けしましょう。時間が惜しいわ。
>

[Anri]
危険だよ。
>

[Chloe]
それはそうね。だったら二人ずつで。
>

[Anri]
うーん、それなら……
>

誰と組もうか───?
>

ソヨン、一緒に行こうね?
>

[Soyeon]
───あたしとですか?は、はい!
>

[Anri]
じゃあ、クローエはニキと頼むよ。
>

[Chloe]
ええ。了解したわ。
>

[Soyeon]
クローエ先輩、ニキさん、気をつけてくださいね?
>

[Chloe]
ソヨンも気をつけてね。特に、すぐ近くにいる要注意人物に。
>

[Anri]
えっ! だだだ誰誰誰?どこに何が隠れてるって?
>

[Chloe]
……無事をお祈りしておくわ、ソヨン。
>

[Soyeon]
…………だ、大丈夫ですよ?
>

ボクとおいで……ニキ。
>

[Anri]
(ニキの身振りに一番通じているのは このボクだ……だったらここは……)
>

[Narration]
杏里が目くばせをすると、ニキはそっと杏里の影に寄り添った。
>

[Anri]
じゃあ、ボクはニキと行くよ。
>

[Chloe]
わかったわ。くれぐれも頼んだわよ。ソヨン、行きましょう。
>

[Soyeon]
はい、クローエ先輩。杏里さんたちもお気をつけて!
>

[Anri]
ウィ。
>

しょうがないなあ、クローエは。
>

[Anri]
しょうがないなぁ〜、クローエ。やっぱり、きみにはボクがついてなきゃねえ〜。
>

[Chloe]
どこに手をまわしてるの。なれなれしい。
>

[Chloe]
だいたいあなた、本気?ソヨンとニキを二人で行かせるなんて。
>

[Anri]
もちろん、二人にだってボクがついていくよ。なにしろボクは、彼女たちの身を保護すべき先輩なんだもの!
>

[Chloe]
それはわたしも同じ。だったらどうして私と組むの。
>

[Anri]
だって、クローエも好きなんだもの!
>

[Chloe]
そういう問題じゃない!
>

[Chloe]
それじゃあ、4人対0人でしょう。手分けした事にならないじゃない!
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[Anri]
あ、そうか。
>

[Anri]
ああ、このボクが2人いれば!
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[Anri]
いやいっそ4人!8人! 16人!
>

[Anri]
えーと16の倍は……
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[Narration]
 
>

   
>

ガンッ
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[Anri]
────────がっ!!
>

[Chloe]
真面目に決めなさい。
>

[Anri]
はーい……
>

で、誰と組もうか───?
>

ソヨン、一緒に行こうね?
>

[Soyeon]
───あたしとですか?は、はい!
>

[Anri]
じゃあ、クローエはニキと頼むよ。
>

[Chloe]
ええ。了解したわ。
>

[Soyeon]
クローエ先輩、ニキさん、気をつけてくださいね?
>

[Chloe]
ソヨンも気をつけてね。特に、すぐ近くにいる要注意人物に。
>

[Anri]
えっ! だだだ誰誰誰?どこに何が隠れてるって?
>

[Chloe]
……無事をお祈りしておくわ、ソヨン。
>

[Soyeon]
…………だ、大丈夫ですよ?
>

ボクとおいで……ニキ。
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[Anri]
(ニキの身振りに一番通じているのは このボクだ……だったらここは……)
>

[Narration]
杏里が目くばせをすると、ニキはそっと杏里の影に寄り添った。
>

[Anri]
じゃあ、ボクはニキと行くよ。
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[Chloe]
わかったわ。くれぐれも頼んだわよ。ソヨン、行きましょう。
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[Soyeon]
はい、クローエ先輩。杏里さんたちもお気をつけて!
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[Anri]
ウィ。
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