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[Narration]
翌朝。
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[Narration]
霧を割いてうっすらと朝日が差し込むなか、ソヨンは、船内時間6時00分00秒きっかりに飛び起きた。
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[Narration]
両瞼をつり下げたまま、はしはしと干し草を叩き、ちょうど手に当たった杏里の鼻を、しきりに押し込む。
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[Narration]
結局一睡も出来ないまま、うつらうつらと船をこいでいた杏里は、なにごとかと目を見開いた。
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[Anri]
痛い、痛いってば、ソヨン!それはボクの鼻!
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[Soyeon]
…………
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[Narration]
無言のままソヨンは馬房から出ると、ちょうど馬が喉を潤していた水桶の前にかがみこみ、じゃぶじゃぶと顔をゆすいだ。
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[Narration]
さっぱりして意識を取り戻すかと思いきや、その場で服の帯をほどきはじめ、呆然としていた杏里も、慌ててソヨンを押さえ込んだ。
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[Anri]
おはようソヨン! ところで、ここはキミの部屋じゃないんだ!
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[Soyeon]
ですよ……?
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[Anri]
着替えるのは、戻ってからにしよう!ね!?
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[Soyeon]
……ですよ。
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[Anri]
だめだこれは。
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[Narration]
どうにかこうにか、ソヨンを自室へと連れ戻し、扉を出てばったり出会ったのはクローエだった。
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[Chloe]
杏里……?
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[Chloe]
ここは確か……ソヨンの部屋じゃない?あなたまさか───
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[Narration]
クローエはさっと杏里を一瞥し、その充血しきった眼や、ほつれた髪、寝乱れた衣服の様子を見てとると、それ以上追求することなく無言で戦闘態勢に移行した。
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[Anri]
ちょ、ちょっと、待った! きっと何か勘違いしていると思うよ!
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[Chloe]
…………杏里・アンリエットらしからぬ往生際の悪さね。
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[Narration]
聞く耳もたず迫るクローエを、杏里は必死に説得した。
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[Anri]
だ、だったら、ソヨンに聞いておくれよ。中にいるから。今、制服に着替えてる。
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[Chloe]
いいでしょう……確かめさせてもらうわ。逃げたら……
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[Anri]
逃げない。逃げません。
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[Narration]
部屋の中に消えたクローエは、しばらくして、眉間を指で支えながら顔を出した。
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[Chloe]
……意味不明な返事だったけど、一応無事のようだったわ。
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[Anri]
ふぅ……だろ?ボクも部屋に戻ってもいいかい?
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[Chloe]
……それなら杏里?あなたどうしてそんなにやつれているの?
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[Chloe]
ポーラーベアとでも闘った?
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[Narration]
船名にひっかけ、ポーラーベア(北極熊)は、学園内で一番手強い教師や、試験を指して、学生たちが使う言葉だ。
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[Anri]
どうして、強敵だったよ。
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[Narration]
杏里は自室へと帰還する道すがら、昨夜から朝にかけての顛末を、かいつまんで説明した。
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[Anri]
というわけでね───
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[Chloe]
……あまり面白くなかったわ。
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[Anri]
いや、ジョークじゃないんだ……っと───
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[Narration]
足がもつれ、つんのめった杏里を難なくクローエが支えた。
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[Chloe]
まったく一晩夜を明かしたくらいで、だらしないったら……ホラ、肩を貸すから。
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[Anri]
ありがとう。ボクの愛しいクローエ。
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[Anri]
……あ……花の香りがするね。
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[Chloe]
くすぐったいって……
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[Narration]
襟元に鼻梁を寄せる杏里を、クローエはそのまま好きにさせている。
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[Anri]
……クローエはきっと花の生まれ変わりなんだね。
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[Chloe]
シャワーを浴びただけよ。トレーニングの後だから。
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[Anri]
まだやってたんだね……そういや、いつも朝早くから頑張っていたっけ。
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[Chloe]
ええ。続けなければ意味がないでしょ?
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[Anri]
……そっか、ボクもまた一緒にやろうかな。
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[Chloe]
お断りです。あんなにいいかげんなあなたが、あたしよりずっと上達が早いんだから。たまらないわ?
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[Anri]
ハハ……ずっと続けてるクローエにはかなわないさ。
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[Narration]
そんな軽口すら、上すべりして身が入らない。よほど消耗の激しい一夜を過ごしたようだ。
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[Chloe]
……朝の船内はいいわ。静かで、森には霧が立ちこめて……
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[Anri]
そうだね……
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[Narration]
だが、通路の角を通り過ぎてしばらくすると、そんな静けさはうち破られてしまった。
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[Anri]
…………?
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[Chloe]
あれは……何かあったのかしら……
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[Narration]
学生の一室にPSの制服がせわしく出入りしている。
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[Narration]
そのすぐ脇には数名のメイドと共に、イライザが神妙な面もちで待機していた。
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[Narration]
二人に気づくと、イライザは必死に目配せして合図する。
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[Chloe]
あ……杏里っ
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[Narration]
しかし、杏里はクローエを引きずるようにして構わず騒ぎの渦中へと踏み込んだ。
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[Anri]
どうしたの?
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[Eliza]
杏里様……!
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[Eliza]
杏里様……アイーシャ様が……!
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[Anri]
……アイーシャが?あれ? ちょっと!
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[Anri]
何だよ? 離せって!
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[Chloe]
あっ……
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[Narration]
訓練されたPSの動きは素早かった。杏里はクローエから突き離され、腕を掴まれて、背中へねじりあげられた。
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[Anri]
痛たたたッ! ひどいよ!ボクにはあいにくそっちの方の趣味は無いんだ!
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[Chloe]
やめなさい!彼女は、何も抵抗してないでしょう?
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[Narration]
PSは構わず、杏里を拘束する。
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[Narration]
その後、杏里には、ゆっくりと睡眠をとる時間など与えてはもらえなかった。
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List of all oneshots
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(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies