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[Anri]
あとは、サードクラスのアイーシャ・スカーレット・ヤンか……
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[Narration]
杏里は、残る一人の部屋へ向かおうとした。ところが、またもや部屋の場所がわからない。
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[Narration]
一日の仕事を終えて自室に戻ろうとしていたイライザに、案内を頼み込んだ。
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[Anri]
勤務時間も終わったのに、悪いね。
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[Eliza]
構いませんわ。
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[Eliza]
私たちは、皆さんに快適な暮らしを送っていただくために24時間、学園に尽くしておりますから。
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[Anri]
立派だよ。以前のイライザからは、とても考えられない言葉だけど。
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[Eliza]
あら、そうですか?
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[Narration]
少女は、つんとすまし、おどけてみせた。金色の巻き毛が揺れる。
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[Eliza]
でも、私は今こそ、本当の自分でいられるような気がします。
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[Anri]
そうだね。素敵だ。
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[Eliza]
杏里様に見つけていただいたんですよ?
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[Anri]
……うん。
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[Anri]
イライザも、ボクも、近頃は忙しくて、ゆっくり話す機会がないね。
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[Eliza]
そうですか? ……ですね。
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[Anri]
ちょくちょく顔は合わせるけどさ。
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[Anri]
いくら遠慮のないボクでも、仕事の邪魔しちゃ悪いかなって思うし。
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[Eliza]
杏里様……
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[Eliza]
私の心は、いつも、杏里様のおそばに。
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[Anri]
……イライザ。
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[Narration]
杏里は廊下の陰に隠れるようにして、イライザを片腕で抱き寄せ、もう一方の指で耳の裏をくすぐった。
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[Anri]
ボクもだよ、イライザ。
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[Anri]
暗い霧に閉ざされた海だろうと、針のごとき薄氷に凍てつく海であろうと、ボクの愛はずっときみの傍らにある。
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[Eliza]
…………はい。
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[Narration]
杏里は廊下の陰に隠れるようにして、イライザを片腕で抱き寄せた。夜の静けさが二人を包み込んでいく。
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[Narration]
しばらくの間イライザは、杏里の指先が自分の耳を心地よくくすぐり、愛撫させるに任せていた。
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[Anri]
…………
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[Eliza]
……………お悩みですか? 杏里様
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[Anri]
…………うん。
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[Eliza]
……ソヨン様のことですね。
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[Anri]
…………うん。
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[Anri]
わかってたんだね、イライザ。
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[Eliza]
ええ。だって、私と一緒ですもの。今のソヨン様は。
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[Narration]
イライザはいっそう杏里に身をあずけ、体全体で杏里の存在を感じ取ろうとした。
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[Eliza]
私にも、漠然としていて、はっきりとは言えませんけれど……
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[Eliza]
でも、同じなんです。あのころの私と。
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[Eliza]
どうか杏里様、彼女の中の、本当のソヨンを見つけてあげてください。
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[Anri]
ボクがかい?
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[Eliza]
他にいらっしゃいまして?
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[Anri]
かなえさん曰く、彼女を助けられるのは、ボクだけなんだそうだ。
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[Eliza]
私も同感ですわ。
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[Anri]
……うん。ありがとう。
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[Anri]
だけどイライザは……
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[Eliza]
それ以上はおっしゃらないでくださいな。
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[Narration]
まぶたを伏せ、上向いて求める唇に、杏里は感謝のたけを込め口づけした。
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[Narration]
やがて自分から身を離したイライザは、振り向いて、巻き毛をふるんと跳ねさせた。
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[Eliza]
さ、まいりましょ。アイーシャ様の部屋へ。
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[Anri]
うん。
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[Narration]
部屋にやってきた二人だったが、どうやら不運にも彼女はいないようだった。
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[Anri]
弱ったな……
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[Eliza]
この時間に外出される方は珍しいですね。
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[Anri]
夜の散歩かな……?甲板に出てるとか。
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[Eliza]
PSに見つかったら、連れ戻されてしまいますわ。といっても、それは杏里様も一緒ですわね。
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[Anri]
仕方ない、書き置きを残しておくか……
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[Narration]
イライザの差し出したポーラースターの校章入りのレターヘッドに、杏里は流麗な筆記でペンを走らせた。
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[Anri]
……繰り返し、ご用心なさることを、申しあげます……あなたを案ずる後輩、杏里、アンリエット、と。
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[Narration]
杏里は、インクにふっと息を吹きかけると、二つにたたみ、扉の下から中に紙片を滑らせる。
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[Eliza]
少々、不安ですわね。
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[Anri]
本当は、もう少しここで待っていたいんだけど。
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[Anri]
見回りのPSに、変に疑われて尋問されたりするのは嫌だなァ……
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[Eliza]
そんなことになったら、正真正銘の謹慎処分にされてしまいますわ。
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[Anri]
えっ。そりゃまずい。
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[Narration]
と言っているそばからPSの制服が目に入る。
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[Narration]
二人はそそくさと部屋の前を離れ、それぞれ自室へと退散した。
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List of all oneshots
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(Recent Oneshots)

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That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
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