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[Narration]
──その夜。
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[Narration]
天京院の部屋からずっと考えていたことを、杏里は実行に移した。
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[Anri]
狙われているのは、ソヨンだけじゃない。アルマ……それにアイーシャ、彼女たちもだ。
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[Anri]
知ってたら、やっぱり放っておけないよな。
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[Anri]
かなえさんには悪いけれど、ここはボクの独断で動かせてもらおう。
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[Narration]
アルマの部屋近くに来ると、先客があった。
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[Anri]
(あの遠目にも見違えようのないシルエットは……)
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[Narration]
部屋の扉から、チョゴリの少女が押し出される。もちろんソヨンだ。
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[Narration]
その様子は付き人女性のボンネットスカートに、まるではじき飛ばされたようにすら見えた。
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[Anri]
(ソヨン!)
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[Wells]
ああもう、しつこいったら!おせっかいきわまりない!
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[Wells]
こともあろうに、アルマお嬢様が暴行犯人に襲われるですって?
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[Wells]
わたくしの目がまだ二つあるうちは、そんなことはあり得ません!
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[Soyeon]
すみません、ウェルズさん。でもっ、あたし、とにかくお伝えしなきゃと思いまして───
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[Anri]
(おのオバさんか───)
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[Anri]
(あの調子だと、授業の合間なんかにもトライして、追い返されたんだな……)
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[Narration]
ウェルズの背後から、そろそろとアルマが首を出す。
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[Alma]
お礼を言いましょう、ウェルズさん。
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[Soyeon]
アルマさん!?
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[Alma]
ソヨンさんは、わたしのことを心配されて、わざわざ出向いてくださったのですから……
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[Wells]
しかしながらお嬢様? ファン様については、そうはゆかないのです。
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[Alma]
あら、どうしてですの?
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[Wells]
ちかごろファン様は「あの」杏里・アンリエットとグルに、いえ、行動を共にすることが非常に多いと、大変よからぬ風評が届いております。
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[Alma]
まあ……杏里様と?
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[Wells]
ともすれば、杏里・アンリエットの尖兵となって、この部屋を伺いにいらしたのやもしれません……
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[Soyeon]
杏里さんは犯人なんかじゃないですよっ!
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[Narration]
詰め寄り返すソヨンの迫力に、ウェルズはたじろいだ。
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[Soyeon]
杏里さんは、違います!みんなあの人のことを誤解しています!
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[Soyeon]
杏里さんはっ、杏里さんは……っ、
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[Narration]
当の杏里は、すぐにも飛び出していきたい衝動を、やっとの思いでこらえた。
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[Anri]
(今出ていけば───ソヨンに、もっとばつの悪い思いを味あわせてしまう)
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[Anri]
(誰のせいでもない。ボク自身のせいで……)
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[Narration]
杏里のスラックスに、ぎりぎりと爪が喰いこんでいく。
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[Alma]
ウェルズさん。ソヨンさんは、わたしの大切なご学友ですよ?
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[Wells]
お嬢様!?
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[Alma]
勉学中でも、至らぬわたしの様子を何かと気にかけてくださって……とても、感謝しているんです。
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[Alma]
ソヨンさん。真心のこもった忠告、痛み入ります。重々、注意いたしますわ。
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[Soyeon]
あ、ありがとうございます、アルマさん。
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[Soyeon]
ウェルズさん。すみませんでした。
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[Narration]
ソヨンはまたウェルズに向けても、両手を揃え深々と頭を垂れた。
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[Narration]
その時間があまりにも長く、ウェルズはやがてあきれ気味に肩をすくめた。
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[Wells]
元気なのは結構ですけれど、皆さんも寝静まろうという時分に、あまり騒がないで。
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[Soyeon]
はい、ごめんなさい。こんな夜分に、本当に申し訳ございませんでした……。
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[Narration]
アルマとウェルズが室内に引き下がっても、まだソヨンは頭を垂れたままだった。
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[Narration]
やがて、静まり返った廊下を、一人トボトボと歩きはじめる。
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[Narration]
いつもより、いっそう小さく見えるソヨンの背中に向けて、杏里はつぶやきかけた。
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[Anri]
……ありがとう、ソヨン。
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[Anri]
ボクは地獄行き決定……かな。
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List of all oneshots
List of all series

(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies