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[Anri]
ふふーん、ふんふーん♪
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[Narration]
陽気なメロディを口ずさみながら、杏里は乱雑に服を床に落としていく。
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[Narration]
バスタブには、水音はげしく、お湯が全開で注がれている。
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[Anri]
こんにちは、新しい日々!新しい顔ぶれ、新しい恋!
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[Anri]
ボクも生まれ変わって、新しい自分になろう!昨日までのボクを脱ぎ捨てて!
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[Anri]
こんな日は、新品の封を切るべきだね。うん。
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[Narration]
杏里は下着姿のまま、浴室の棚をひっくりかえす。
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[Narration]
色とりどりのバスグッズの山から、真っ青な液体の入った小瓶を見つけて、杏里はにんまりとした。
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[Anri]
うん、これがいい。夜明けの霧の味? ……あ、霧の香りか。
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[Narration]
小瓶の中味をバスタブにあけると、勢いよく泡が立ち、爽やかな香りも広がる。
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[Narration]
一日の汗をシャワーで流すと、待ちこがれたようにバスタブに体をうずめた。
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[Anri]
ん───っ! いい香り。
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[Narration]
思い切り背伸びしてから息を吐くと、杏里は今日の出来事へと思いをはせた。
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[Anri]
ファン……ソヨンかぁ……
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[Soyeon]
ここがあたしの部屋です。
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[Soyeon]
わざわざ送ってくださって、ありがとうございます。杏里さん。
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[Soyeon]
ちょっと寄られます?
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[Anri]
いや、今日は遠慮しておく。
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[Anri]
ファーストクラスの部屋って、ぼくたちセカンドの反対側なんだぁ。同じ船内なのに、こんなに遠いなんて、不運だなあ……
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[Anri]
……いいかいソヨン。今夜からは、これまで以上に戸締まりに気をつけて。とにかく厳重に。
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[Soyeon]
はいっ。
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[Anri]
本当は一緒に泊まってあげたいけれど、寮長の目があるから、そうもいかないし、内線電話はすぐ届くところに置いて寝て?
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[Soyeon]
はい。何か異常があれば、すぐ杏里さんに報せます。
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[Anri]
うん。その時は、世界中のどんなヒーローよりも早く駆けつけるよ。
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[Anri]
それから、授業のことなんだけれど───
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[Soyeon]
ええ、それなら。
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[Soyeon]
あたし、決して成績はよくありませんけれど、これまで、出られるだけの講義にはぜんぶ出席して、単位はじゅうぶん足りているんです。
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[Soyeon]
ちょうど試験のシーズンも終わったばかりだし、しばらくのあいだお休みをとることは、もう先生にもお伝えしました。
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[Anri]
そっか。つきあわせてしまって悪い。
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[Soyeon]
いいえ、杏里さん。あたし自身の望みなんですよ。
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[Anri]
でも、クラス全員が出席する合同授業にだけは、ちゃんと顔を出した方がいい。
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[Soyeon]
そう……ですね。杏里さんがそう言われるのでしたら。
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[Anri]
うん。講師だけじゃない。きみの笑顔が見られなくなって、寂しがる人はたくさんいるさ。
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[Anri]
ぼくは正直、きみと一秒でも一緒にいたいところだけどね。
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[Soyeon]
あ、杏里さんっ。
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[Narration]
ソヨンはきちんと足を揃え、杏里を真正面に見た。
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[Soyeon]
杏里さん。
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[Anri]
うん?
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[Soyeon]
杏里さん。こんな行き届かないあたしですけど、どうぞよろしくお願いいたします。
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[Soyeon]
あたしは若輩者です。まだまだ知らないことばかりです。お近づきになるきっかけは、確かに残念なものでしたけれど───
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[Soyeon]
でも、杏里さんのように経験豊富な方に、色々なことを教えてもらう機会ができて、幸せです!
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[Soyeon]
杏里さんの足を引っ張ってしまわないよう、あたしがんばります! ですから、どうぞよろしくご指導願います!
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[Narration]
ソヨンは、いつにもまして背筋を伸ばし、しゃっちょこばった敬礼を送った。
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[Anri]
くすっ……それは?
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[Narration]
ソヨンはあたふたと掲げた手を戻す
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[Soyeon]
あっ……やっちゃった。ずっと我慢してたのに……あの、つい昔からのクセで、そのっ。
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[Anri]
気にしないでいいよ。とてもチャーミングだ。
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[Anri]
ソヨン、きみは今でもじゅうぶんに頑張っているさ。だから、もっとリラックスしていい。
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[Soyeon]
は、はいっ。
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[Anri]
それじゃあ、おやすみ、ソヨン。
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[Narration]
杏里は自分からも敬礼とウインクをソヨンに送り返した。
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[Soyeon]
あはっ!はい! おやすみなさい、杏里さん!
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[Anri]
…………
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[Anri]
……幸せです!
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[Anri]
……よろしくご指導ねがいます!
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[Anri]
…………
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[Anri]
……………………ああっ!なんてキュートなんだ!ファン・ソヨン!
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[Narration]
ソヨンの敬礼を真似てみた杏里は、自分の肩を抱きしめて、バスタブの中をぐるぐるばしゃばしゃと泳ぎまわる。
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[Anri]
ハァハァハァッ……
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[Anri]
だめだ、我慢できなくなっちゃうのは、ボクのほうだ。なるほど、犯人の気持ちもよくわかるな。
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[Anri]
あ、いやいや。こりゃまずいぞ。ど、どうしよう。
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[Narration]
両の頬に手をあてると、どんどん熱を帯びてくるのがわかる。
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[Anri]
ハァハァハァ……えーとえーと……そうだ! こんな時は───!
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[Narration]
杏里はバスタブにつかったまま、浴室専用の電話に手を伸ばした。
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[Tenkyouin]
『あたしだ』
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[Anri]
こんばんわ。かなえさんの心の友、杏里・アンリエットだよ。
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[Tenkyouin]
『ぶばっ───げほげほっ!』
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[Narration]
受話器の向こうで、おおいに天京院はむせている。
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[Tenkyouin]
『何だっ、事件に進展があったのか!?』
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[Anri]
大変な進展だよ。
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[Anri]
どうしよう、かなえさん。ボク、今すぐにでもソヨンを押し倒してしまいそうだよっ。
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[Tenkyouin]
『はァ、何いってる? きみが送りオオカミになってどうする! 頭を冷やせ!』
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[Anri]
でも、このままじゃ、どうにかなってしまいそうなんだ!かなえさん、助けて!
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[Anri]
ハァハァハァ!
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[Tenkyouin]
『知らん! バカと惚れっぽい奴につける薬は無い!』
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[Anri]
じゃあせめて、このほてった体を寝つけるように、しずめてくれる発明品を───
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[Tenkyouin]
『世話がかかるなァ!』
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[Tenkyouin]
『だったら、オナ……じ、自慰行為でも してねむれっ!』
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[Anri]
……あ、そっか! うん、ぜひそうする。終わったらまた電話していい?
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[Tenkyouin]
『馬鹿っ! 切るぞ!』
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[Anri]
うん、おやすみー……って本当に切っちゃったのか。
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[Anri]
かなえさんたら、お茶目さん。
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[Anri]
……おっと、しまった。そういえば聞き忘れたぞ。
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[Anri]
自慰行為って……一体なんだろう?
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[Anri]
………………
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[Anri]
……なんてね?
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List of all oneshots
List of all series

(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies