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[Narration]
杏里は汗だくになってニキの部屋の扉を叩いた。
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[Anri]
ニキ!ボクだよ、杏里・アンリエットさ!
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[Anri]
ねえ、ニキ!聞こえてるよね?あけてくれないか?
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[Anri]
どうか、話を聞いてくれ!きみを怒らせるつもりは、毛頭なかったんだ!
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[Anri]
ごめんよ! きみと一緒の時間を台無しにしたりして……ボクに配慮が足りなかった!
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[Anri]
本当にごめん……この通りだ!
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[Anri]
ニキ! お願いだよ!
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ドアをあけておくれよ!
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頼むよ……ニキ。
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[Narration]
杏里は息を切らせながら扉に腕をついた。鼻先から、ぽたぽたと汗が落ちる。
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[Anri]
ハァ……ハァ……本当に……バカだなあ……ボクは……
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[Narration]
───ニキという少女は、あまりに寡黙なため、自分の殻に閉じこもったまま、外世界に一切の関心を持たずにいるように見える。
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[Narration]
しかし実際はその逆に、周囲のごくささやかな物事にまで、並々ならぬ集中力を注いでいるのだ。
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[Narration]
ひとたび部屋から外出するだけで、たいへんな精神的負担を強いられる。
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[Narration]
出逢ったのが他人であれば、それはなおさらだった。未知の恐怖は何倍にも増幅されて、彼女を押しつぶそうとする。
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[Anri]
……ねえ、ニキ……?
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[Anri]
頼むよニキ……いったいどうしたら、この扉は開くんだい……
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[Narration]
悲嘆に暮れた杏里の前に、カードキーがすっと差し出される。
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[Anri]
───え?
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[Narration]
振り返ると、そこには他ならぬニキ本人が立っていた。
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[Anri]
へ、部屋の中にいたんじゃ?
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[Niki]
…………
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[Anri]
扉は……これで開きます?
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[Anri]
途中、ギャレー(調理室)に寄ってイライザさんに会おうしたけど、いなかった?
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[Anri]
そっか……
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[Anri]
……ニキ、馬鹿なボクを許しておくれ。きみを一人にしたりして、本当に悪かった。
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[Narration]
ニキはジェスチャーの動きを止めて、じっくりと考えた。
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[Narration]
しばらくして、ニキはめずらしく杏里の目を見つめ返しながら、こう応えた。
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[Niki]
…………
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[Anri]
……え。そんなことはない?
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[Anri]
今わたしには杏里がいる……から?一人じゃない?
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[Anri]
ニキ……
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[Anri]
ありがとう。そうだね。ニキ。
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[Anri]
ボクらはいつまでも一緒だよ。
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[Narration]
ニキは肯くと、何度かカードの挿入に失敗しながら鍵を開け、部屋の中へと消えた。
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[Narration]
一人残された杏里は、腰に手を置きながら深い溜め息をついた。
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[Anri]
やっぱり、怒ってたのかなあ……
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[Narration]
扉がまたすぐに開く。
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[Anri]
え……?
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[Niki]
…………
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[Anri]
明日から、ボクの捜査を手伝います?自分一人でやってみるので、気にしないでください?
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[Anri]
そ、そんなっ危ないよニキ……
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あららら。
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[Narration]
杏里が反論する間もなく、またニキは扉の向こうへと消えてしまった。
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[Anri]
そんな事いったって……不安だなあ……
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List of all oneshots
List of all series

(Recent Oneshots)

Isn't It Fine To XX Freely
That Red on Me
First Love Mint Blue
Summer Fuse
Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
Cubic Starship
Anaerobic Love
Missing Rink Side:Shuri
Missing Rink Side:Rina
Heart Pendant

(Recent Series)

The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
Motto Hanjuku Joshi
Yuunagi Marbled
Strange Babies