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明日から夏休み。今日はその前の最後の日ってことで、授業は午前中だけでおしまい。長めのホームルームで休み中の注意を受けて、早くも放課後。
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いつも通りの放送室だけど、いつもより一人少ない。
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双野沙紗
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夏休みを一日早めるなんて、音七らしいっていうかさ。
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一木羽美
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もー、沙紗、音七は病気で休んでるんだから、そんな言い方しなくてもいいじゃん!
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そう、今日は音七がお休み。朝、いつもの待ち合わせの場所で、沙紗と音七を待ってる時に、メールが入った。
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双野沙紗
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いや、冗談だけどさ。
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一木羽美
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それはわかってるけどさ。
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熱出してだるいから休むって。一日寝てるって。
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熱が出た時の対処法としては間違ってないんだろうけど、一日寝てるって言い方がまた、音七らしいっていうか。
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双野沙紗
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どうする? 音七、いないけど、昨日の放送の反省会とかやる?
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一木羽美
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あ、そっかぁ。
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いつもだったら、放送の次の日は、反省会。今週はテストがあったから、木曜日がわたしたちの放送だった。だから、今日は反省会、やるはずだったんだけど。
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ついでに、来週の放送の内容、決めたりしてたんだけど。来週、もう夏休みだしなぁ。
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一木羽美
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合宿前に、一度、買い物とかにも行くし、その時にする?
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双野沙紗
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別にいいけど、反省すること、忘れてるかも。
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一木羽美
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うーん、そっかぁ。それじゃ、わたしたちだけでもやっとく?
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双野沙紗
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別にいいけど。
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一木羽美
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それじゃ、沙紗、なんか反省することある?
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双野沙紗
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羽美が変なキャラ出してきて、ウザかった。
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一木羽美
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ふぇ!? そんなことしたっけ?
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双野沙紗
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しただろ! 雑誌の性格診断なんか鵜呑みにして、気持ち悪い言葉遣いしてきてさ!
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一木羽美
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あ、ああ! だってあれは!
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やっぱり、雑誌に性格診断とか載ってると、つい、やってみたくなっちゃうじゃん!
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一木羽美
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しょ、しょうがないじゃん! わたしも、沙紗と音七にウザがられてるとか思ったら、不安になっちゃうんだもん!
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双野沙紗
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そ、そうだけどさぁ。なにも、あんな気持ち悪いキャラ出してくることないだろ。
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一木羽美
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き、気持ち悪いって! それは、確かにちょっと、似合わないかなぁ、とか思ったけど……。
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双野沙紗
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音七が気付いてくれなかったら、ずっとあのまま押し通すつもりだったのか?
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一木羽美
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そんなつもりなかったけど……。すごいよね、音七、わたしの選んだの、全部、見抜いちゃったんだよね。
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双野沙紗
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ああ……。一昨日といい、羽美は音七に迷惑かけてばっかだよな。……あたしもだけどさ。
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一木羽美
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そうだねぇ……。
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一昨日、わたしと沙紗は、放課後の屋上で、音七に説教をくらってしまった。あんなにまじめで、ちょっと怒った感じの音七、初めて見た。
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そこで音七は、わたしと沙紗が恋人同士ってことを認めてくれて、その上でちゃんと友達でいるから、しっかり付き合えって言ってくれて。
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わたしと沙紗のこと、認めてくれた。うん、すごくうれしかった。沙紗と恋人でいれること、それでも音七が親友でいてくれること。
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不安になっていたわたしには、すごく心強い言葉だった。
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でも、それだけ音七に心配かけてたってことだよね……。あのめんどくさがりな音七に、お説教させちゃうほど、わたしたちは。
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一木羽美
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よし、沙紗! 音七にお見舞いのメールをしよう!
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双野沙紗
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はぁ? 突然だな。
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一木羽美
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突然でもいいの! 音七は親友なんだから!ほら、ケータイ出して!
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双野沙紗
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え? 別々に出すのか?
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一木羽美
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当然でしょ! わたしからと、沙紗から!きっと音七、一人で寝てて、さびしいと思うんだから!
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双野沙紗
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いや、絶対にぐっすり寝てると思うけど。
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一木羽美
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そうかもだけど、メールするの!
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双野沙紗
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はいはい、わかったよ。
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わたしも、ケータイを出して、音七へのメールを打ち始める。沙紗と二人で、ケータイでメールに文字を打ち込んでく。
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双野沙紗
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音七ってさ。
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一木羽美
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うん。
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メールの文章、考えて、それからケータイに打ち込んで。それを繰り返しながら、沙紗と話を続ける。
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双野沙紗
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案外、鋭いとこ、あるよな。
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一木羽美
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うん、そだね。
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音七、わたしと沙紗が付き合いだしたこと、ちゃんと知ってた。
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それどころか、沙紗がわたしを好きだってことまで気付いてた。いっつも眠そうな感じなのに、ちゃんと気付いてた。
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双野沙紗
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正直、あたし、音七にバレてると思わなかった。でも、ちょっと考えてみたら、けっこう、納得しちゃってさ。
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一木羽美
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……そだね。確かにそうかも。
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前に一度、音七に小学校の時のアルバム、見せてもらったことがある。
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その写真の音七は、けっこうぱっちり目が開いてて、すごい頭がよさそうに見えた。でも、ちょっと気むずかしそうで。あまり、笑ってる写真もなかったような。
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一木羽美
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きっと音七って、ほんとはすっごい鋭いんだよ。観察眼あるっていうのかな。
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普段の音七を見てると、そんなふうに思えないけど。でも、放送の時、いつもささっとこっちを助けてくれるのは、いつも音七。
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トラブルが起きても、いちばんいい方法で解決してくれるし。よっぽど注意してないとできないことだと思う。
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きっと小さいころは、もっとそういう鋭いとこ、表に出してたんだろうな。だから、あんな顔が写ってたんだ。
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双野沙紗
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普段、寝てる分だけ、起きてる時は鋭いのかな。
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一木羽美
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その反動で寝てばっかなのかな?
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双野沙紗
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逆かも。
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どうなんだろ。鋭いのに疲れちゃったから、眠ってばっかいるようになっちゃったのかな?眠くなってきたから、鋭いの目立たなくなっちゃったのかな?
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今の音七、見てると、眠たい顔してるのが、自然な音七に見えるけど。
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双野沙紗
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まぁ、さ。
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双野沙紗
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あたしたち、三人とも、めんどくさいとこあるからさ。性格的に。
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双野沙紗
>
もうちょっとまともだったら、もっと普通のヤツと友達になってるよな。ワケあり物件だから、三人でくっついたんだろうな。
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一木羽美
>
そうだね……。ん?
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一木羽美
>
ちょっと? それって、わたしもワケあり物件ってこと!?
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双野沙紗
>
そうだろ? 羽美みたいな友達依存症、あたしや音七みたいなヤツじゃないと、まともに付き合わないって。
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一木羽美
>
えー、なにそれ! ひどい、沙紗!
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双野沙紗
>
なら、友達やめる?
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一木羽美
>
……やめない。
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双野沙紗
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ほら見ろ。
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そう言って、沙紗はちょっと笑った。
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やだ。絶対に、沙紗と音七と、友達やめるなんてできない。もちろん、沙紗とは別れたくないし。
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だから、別にワケあり物件でもいいや。ちょっと釈然としないけど。でも、いい。
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一木羽美
>
ね、ねぇ、沙紗。
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双野沙紗
>
ん、なに?
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一木羽美
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夏休み、ど、どっか行かない?
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双野沙紗
>
え? ……え、えっと、それって、二人で?
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一木羽美
>
う、うん……。も、もちろん、音七と一緒に遊びに行く日もあるけど! そ、それ以外でも……、ど、どうかな?
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双野沙紗
>
い、いいけどさ……。……プールでも行くか?
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一木羽美
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え? プ、プール!?
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双野沙紗
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……合宿の後でもいいよ。
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一木羽美
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え、えっと、それなら……。
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双野沙紗
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合宿の前だと、羽美、ダイエット間に合わないだろ?
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一木羽美
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な、なんでそこまで言っちゃうのよ! そこはわかってても口に出さないでよ!
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双野沙紗
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わかりやすいんだよ、羽美は! 今日だって、ジュース、カロリーオフのにするか、迷ってただろ。
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一木羽美
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こ、これからがんばるんだもん!
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双野沙紗
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うん、がんばれ。水着、買いに行こ。
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一木羽美
>
う、うん……。
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それじゃ、2回、デートできるかな……? それまでに、なんとしてもダイエット成功させなきゃ。
>
沙紗のスレンダーな体の前で、絶対に今のままじゃ、水着なんて着れないし!
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双野沙紗
>
ん、こんなもんかな。うわ、けっこう長いメールになっちゃった。
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一木羽美
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あ、わたしも。
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今日、あったこととか、合宿に必要なものの買い出しのこととか。熱がひいたら遊びに行こうとか、いろんなこと。
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全部、打ってたらすごい量。沙紗も同じくらい、指を動かしてたから、二人して長文メールになっちゃった。
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双野沙紗
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どうしよ。このまま送る?
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一木羽美
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うん、送っちゃお。いっせーのせでね? せーの。
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一木羽美
>
送信!
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双野沙紗
>
ん。
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ケータイの画面に、送信中のアイコンが出てる。うん、これで音七に届くはず。
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一木羽美
>
返信、来るかな?
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双野沙紗
>
こないだろ。絶対、寝てるって。明日の朝に返信来てればいい方じゃない?
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一木羽美
>
だろうね。しかも、すっごい短い返事だよ、きっと。
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双野沙紗
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はは、想像できる。
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うん、いつも音七からの返信って、そんな感じだし。でも、それもいつも通りのことだから。
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音七はそう、それでいつも通りで、変わらない。変わらずに、わたしと沙紗の友達でいてくれる。
>
きっと、明日くらいに来る短い返信にも。そのメールの言葉にも。
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音七の友情がいっぱい詰まってるんだよね!わたしと沙紗の、長文のメールに負けないくらいの!
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