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あー、なんか学園祭前ってカンジがすんな。
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聞こえる音がいつもと違うもんな。人の声とか、なんか作る音とか、いろいろ合わさってガッコー全体が浮かれてる。
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こりゃ、負けてらんねぇ。オレは目の前に広げたスコアに集中する。
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古場陽香
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………………。
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教科書どころか本読むのも苦手なのに、スコアだけはなんとか読めるんだから不思議だよなー、我ながら。
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有遊愛来
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……陽香。
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古場陽香
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あ……、愛来。
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電話越しの先生と親の声の区別もつかねぇのに、声を聞いて愛来だとわかるってのも、不思議だよな。
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まあ、こんな腹の底にずんとくる声、他に知らねぇし。
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有遊愛来
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なんだか忙しそうだな、邪魔をしたか?
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古場陽香
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ん、全然。
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有遊愛来
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そうか。……ほら、差し入れだ。
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古場陽香
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おぉ、サンキュー、愛来! すっげうれしい!
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顔をあげれば、缶ジュースを渡しながら微笑む愛来。あー、何度見てもきれーだ。
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それなりに付き合いが長くなって見慣れてきたんだけど、それでもドキドキするっつーか、だからこそ超ドキドキするっつーか。
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てかさ、さっきの挨拶の流れとかも超よくねぇ? 名前で呼びあって、目と目があって、何年もこうしてきたかのように自然に会話してさ。
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告白の前だってのに、もう恋人っぽくね? なんかもうそんなカンジじゃね?
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古場陽香
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(オレンジジュースかぁ……。甘酸っぱいぜ)
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有遊愛来
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……これは、学園祭で発表するという曲か?
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古場陽香
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ん? ……あー、これはそれとは別。そっちはそっちで、こっそり猛練習中だけどさ。
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有遊愛来
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ああ、サプライズで秘密だもんな。
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古場陽香
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そうそう、誰かに聞かれたら困るからな。愛来も内緒にしててくれよ?
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有遊愛来
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ふふ、そうだな。約束する。
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小さくうなずく愛来。まー、約束なんかしなくたって、愛来は黙っててくれるよな。そういうヤツだ。
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古場陽香
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これはさ、うちのバンドの新曲。
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有遊愛来
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ああ、例の……。ストレンジマグネット?
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古場陽香
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そう! 今度のライブでオヒロメなんだぜ! これはこれでがんばんねーとな!
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有遊愛来
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そうか……。
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愛来はスコアを見つめながら、オレの脇に腰を下ろす。
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有遊愛来
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ストレンジマグネットは、どういうバンドなんだ?
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古場陽香
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へ?
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……ちょっとびっくりして、答えるのが遅れちまった。
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だって愛来は、マジメだしかっちりしてるし。オレのバンドになんて、興味ねぇと思ってたから。
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古場陽香
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ロック一筋!
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有遊愛来
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ふふ、それはそうだろうな。陽香がいるくらいだからな。
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古場陽香
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そうそう。
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古場陽香
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……つっても、そういうこと聞くと、マナはぷろぐれ? がいいなーって言うし、ニーニーはテクノよりにしたいとか言うんだよな。
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有遊愛来
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なんだ、それは。
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古場陽香
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んー、わかんねぇ。アンジュはアンジュでメタル取り入れたらって言うし……。
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古場陽香
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そういう話し合いになると、オレ、ロックがいい!って言うんだけどさ。ちゃんとロックだから安心しろって。
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有遊愛来
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ふぅん……。よくわからんな。
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不思議そうに首を傾ける愛来。……そっか、愛来でもわかんねぇか。
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有遊愛来
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すまないな、あまり詳しくなくて。
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有遊愛来
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だが、詳しくない分、知りたいと思う。だから、陽香のバンドについて、もっと聞かせてくれないか。
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古場陽香
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……お……。
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どうやら、愛来は本気で知りたいみてぇだ。それがわかって、オレはちょっとだけ言葉を見失った。
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古場陽香
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(……もしかして、オレのいるバンドだからか?)
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そんな風に考えちまったから。
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オレが、愛来や愛来が好きなものを知りたいと思ったみたいに、愛来もオレのこと知りたがってるのかなーと……。
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古場陽香
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(だとしたら、超ハッピーだけどな!)
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古場陽香
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えっと。バンドのメンバーは四人。さっき言ったヤツらと、オレと。
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古場陽香
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お、オレはギターやってんだ。
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有遊愛来
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それは知ってる。陽香のギターは元気がよさそうだな。
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古場陽香
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そりゃもう! 今握ってんのはすっげー威勢のいいギターでさ。しっかり押さえてねーと、オレの両手揺らしながら飛びそうになるんだ。
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有遊愛来
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ふふ、どういう表現だそれは。陽香らしいな。
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愛来が笑う。楽しそうに聞いてくれているのがうれしくて、自然とオレの語りにも熱が入る。
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古場陽香
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オレの他は、ベースのマナと、ドラムのアンジュ、ボーカルとギターのニーニー。
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有遊愛来
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ギターが二人いるのか?
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古場陽香
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ダブルギターってやつ。ボーカルやってっと、やっぱ一曲まるまる熱いリフってのはキツいからさ。
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有遊愛来
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そうだろうな。というか、弾き語りは想像するだに難しそうだ。
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古場陽香
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あー、うん。オレもちょっとやってみたんだけど、かなりムズくて、これが……。
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古場陽香
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どっちかひとつでも難しいってのに、両方はなー。すげぇよニーニー。
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オレは両手を目の前にあげて、指を動かしてみる。……なんかなぁ、まだ動きが固いんだよな。
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だけど、これがうまくできなきゃ、学園祭のステージ、うまくいくわけねーしな。
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古場陽香
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ニーニーのギターテク、すごいんだぜ。ソロの時とか、めちゃくちゃ指動いてる。虫みたいにグニャグニャって。
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有遊愛来
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ほう、すごいな。
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古場陽香
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うん、つーか全員古いメンバーで、オレひとりがメン募で加わった新顔でさ。ひとりだけうまくねぇから、まだレギュラーじゃねぇんだ。
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有遊愛来
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レギュラーじゃない、というのは……。
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古場陽香
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全部の曲に出してもらえるわけじゃねぇってこと。3人で完璧にいけちまう曲だってあるし。まぁ、あいつらが昔っからヤってる曲とかさ。
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古場陽香
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……オレ、親父の影響でわりと小さいころからギターは弾いてたんだけどさ。ロックに目覚めるのが遅すぎたんだよなぁ。
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親父のギターはアコースティックで、鳴く時も絶唱じゃなくてすすり泣きってカンジだからなぁ……。
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有遊愛来
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早く、レギュラーになれるといいな。
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愛来の呟きが耳に入って、オレはハッとした。
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愛来の話し方はいつだって落ち着いていて、センセイみたいだけど、それでもどんな気持ちが込められているのか、少しずつわかるようになってきたんだ。
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愛来は、本気でオレのこと応援してくれてる。
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古場陽香
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愛来……。
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有遊愛来
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とても楽しそうに語っていたから、わかるよ。よほど大事なバンドなんだな。
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有遊愛来
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陽香はルーズなところもあるけど、本気になったら誰より一生懸命だ。だから、きっとレギュラーになれるさ。
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もちろん、誰になにを言われても、言われなくても、がんばるつもりだったけどさ。
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やっぱり毎日の地道な練習ってのは、それなりに面倒で、不安で、結構削られるもんで……。
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でも、愛来にこんなこと言われたら、オレがんばるしかねーじゃんか。つーか、がんばる。
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古場陽香
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……うん。あんがと、愛来。
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有遊愛来
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というか、私のためでもあるんだ。陽香が出ているライブを一度見てみたいな。
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古場陽香
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ま、マジで?
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有遊愛来
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ああ。
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わお、なんだそれ。愛来がオレのライブ見に来るって? ……うわ、すっげぇうれしい!
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やっぱオレが一番オレらしくなるのって、ロックやってる時だし。やっぱ愛来には、オレが一番オレらしく輝いてるとこ、見せてやりたいし。
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古場陽香
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ちょ……、そういうことは早く言えよー、愛来ぃ。
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古場陽香
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誰より真っ先に招待してやるって! オレ、すげークールにキメてやるからさ!
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有遊愛来
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こら、痛い。
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浮かれて愛来の背中をバンバン叩くオレを、愛来は笑いながら軽くニラむ。
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……あー、なんかめっちゃいいカンジ。なんかもう、友達のダンカイも過ぎてるよな、きっと。
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愛来が風紀委員の仕事に戻っていってからも、オレはまだ浮かれていた。
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だって、そうだろ。オレが愛来に惚れたころ、愛来のことなんてほとんど知らなくて、怖カッコイイ女神サマみたいに思ってたのに。
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今はもう、そうじゃないことを知ってる。オレがしゃべることを真剣に聞いたり、バカやっても苦笑ひとつで許してくれるって知ってる。
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その距離感が、すっげー嬉しくて。
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きっと、愛来だってそうだろう。……そうだといいな。
>
オレの中にある大事なもの、ロックな部分、ちゃんと受け止めてくれてたらいいな。
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古場陽香
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(……よっし)
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オレは気合いを入れて譜読みに戻った。
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次のライブには愛来を招待して、ステージの上からクールに決めてやるんだ。
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そうだ、その前にラブロックでのサプライズ告白もあったし。オレ、すっげーがんばんねーと。
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古場陽香
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(……できんのかな。オレに)
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……おお、やべぇ。一瞬なんか寒いこと考えちまって、ブルッときたぜ。
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む、むしゃぶるいってヤツだよな。うん。でっけーステージに備えた、むしゃぶるいだ。
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オレはいろんな考えを振り切るように、ただひたすら目の前の音符を追った。
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