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恋をしてからというもの、オレは毎日ゼッコーチョーだ。
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体がやけに軽くて、階段なんて一段どころか二段抜かしで昇っちまう。
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短い休み時間だって、忙しい有遊サンを捜し出すためのハイパースピードだ。三段だってよゆーだぜ!
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古場陽香
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(……って、そうだ! もう有遊サンなんてタニンギョーギな呼び方はやめなきゃな)
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朝の別れ際に、有遊サン、こう言ったんだ。
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有遊愛来
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「有遊さん」か。そんなに堅苦しく呼ぶ必要はないよ。
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有遊愛来
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友達なんだから、「愛来」でいい。
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トモダチってすげぇな! こないだまで有遊サマだった有遊サンが、一気に愛来になっちまうんだから。
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古場陽香
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(へへ……。アキ、かあ。愛来……)
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古場陽香
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(おはよう、愛来。よう、愛来。一緒に帰ろうぜ、愛来)
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……うおおおおおお!! なんかイイ、すっげえイイな、それ!
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頭ン中で呼んでみるだけで、心臓ブッ飛びそうだぜ!
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古場陽香
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(愛来。愛来。愛来……)
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うん、愛来って、いい名前だよな。
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なんたってラブがカムって書くんだもんな。アキって音も、キリッとしてるし、呼びやすいし。
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そうそう、アリウ・アキって、イニシャルがAAになるのもイカしてるよな。並び立つ最初のアルファベット。最高にロックだぜ!
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古場陽香
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ヒュウウッッ!
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体中にみなぎるロックなパワーを感じながら、オレは階段の途中で飛び上がり、空中でエアギターをかき鳴らす。
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ギュイーン! 四段飛ばし!
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古場陽香
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うぎゃっ。
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……いってぇ。華麗に踊り場に着地する予定だったのに、最後の段に引っかかってコケちまった……。
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古場陽香
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(ま、でも、おかげで頭が冷えたってもんだ)
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古場陽香
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(……ちょっと練習してから行くべ、うん)
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これから初めて名前を呼ぶわけだかんな。最高にクールな「愛来」のために、オレは努力を惜しまないぜ!
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よし。目を閉じて、姿を思い浮かべて……。
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古場陽香
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(ああクソ、いつ見ても凛々しくってかっこいいぜ。なのに笑うとすげえかわいいなんて、ハンソクだよなあ……)
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や、見とれてる場合じゃねえ。そこに居ると思って、呼びかけてみるんだ、がんばれオレ!
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古場陽香
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……、あ……。
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古場陽香
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…………。
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……おいおい。どういうことだ。
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言えねぇ。言えねぇぞ、おい。たったの一言なのに。本番でもねぇのに。
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どうしたオレの喉! ヘイ、マイ喉! このチキン野郎! 愛来って名前のクールさに凍りついちまったのか?
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声が出ないだなんて、ロックもクソもねーじゃねーか。歌えねぇロッカーなんざ、ただのアレだ! ただの……、ええと……。
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「あ、陽香。こんなところで、なにぼーっとしてんの?」
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いきなり声をかけられて、オレはハッと我に返った。見れば、桐が階段を昇ってくるところだ。
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古場陽香
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ああ、キリ……。
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桐のことはキリって呼べんのになぁ。しかも、名前で呼ぼうなんて思ったこともねぇのに、気が付いたら呼んでたカンジ。
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ならどうして、有遊サンに限っては、あんなにつっかえちまうんだろう。
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……と、桐が去った後に考え込んでいたら、そこに通りかかったのは放送部の三人組だ。
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grpo_bu1
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grpo_bu1
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grpo_bu1
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一木羽美
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あっ、古場ちゃん。やっほー。
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そういや、こいつらはまだ名前で呼んだことがねぇ。一木サンに双野サンに三山サン、だ。
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古場陽香
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(……んー、ちょっとこいつらで練習してみっか。どんなステージだってリハは欠かせねぇもんだし)
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古場陽香
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(えーと、こいつらの名前はと。……ああ、三山サンのは憶えてんぜ。音が七つなんてぜーたくな名前だよな)
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古場陽香
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……よう、音七。
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三山音七
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え。なに~、いきなり。
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古場陽香
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(で、確か一木サンは……)
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古場陽香
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羽美、だよな。
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一木羽美
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なぁに?
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双野沙紗
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……なに? いきなり名前で呼び出して。しかもいきなり呼び捨て?
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古場陽香
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(わ、双野サン、怒った? 怖ぇ! てか、なんで本人じゃなくて双野サンが怒るんだ?)
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古場陽香
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(で、そんな双野サンの名前は、ええっと……)
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古場陽香
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さ……。
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双野沙紗
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あ?
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古場陽香
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(そ、そんなににらむなよ)
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有遊サンの迫力は背骨にビリビリきて好きだけど、双野サンのはなんかこう、ジトッとしてゾーッとして、ヤな感じだな。
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古場陽香
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(く、くっそ。負けるな! 有遊サンが愛来になるんだぜ、有遊サンがオレの愛来に!!)
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古場陽香
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さ、……さささん! よう、沙紗さん!
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双野沙紗
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だから。なんなの、さっきから。
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古場陽香
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い、いや別に……。
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一木羽美
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沙紗、そんなに凄まないの。古場ちゃんはアーティストなんだからさ、色々あるんだよ、きっと。
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双野沙紗
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だって、羽美のこと、いきなり名前で呼び捨てに……。
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一木羽美
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気にしないよ、そんなこと。それより、ほら、早く行こうよ。
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三山音七
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んー、そだね~。
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双野沙紗
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…………。
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双野サンは、オレの横をすり抜けながら、最後にギロリとヒトニラミしてきた。うわ、おっかねぇ。
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……ま、でもこれで少しは心の準備ができたぜ。双野サンに比べたら、有遊サンの方が気が楽だし。……うん。
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古場陽香
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(おっと、休み時間が終わっちまう)
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やべやべ、早く有遊サンを捜さないと。せっかくのリハが無駄になっちまう。
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と、オレが改めて階段を昇りかけた時。
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有遊愛来
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ここにいたのか、陽香。
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古場陽香
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……!?
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古場陽香
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(え……、今)
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古場陽香
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(有遊サン、オレの名前……)
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それハンソクだよ、有遊サン! そんな、いきなりヨーカ、だなんて、その声で。
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オレの鼓動がズダンと鳴り響く。クソッ、このやかましいのはだめだ、ロックじゃなくてメタルの領域だ。
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あまりの衝撃に、オレの足下がぐらりと揺らぐ。そのまま、踊り場から落ちそうになる……。
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古場陽香
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おわっ!
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有遊愛来
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陽香!
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そんなオレの手をしっかりつかみ、踊り場に留まらせてくれたのは、有遊サンの手だった。
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もっと冷たくて固い感触だと思ってたのに。
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あったかくって、柔らかい……。
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有遊愛来
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……大丈夫か?
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古場陽香
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……ん。
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古場陽香
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助かった、あんがと、アキ。
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それは、オレの口からするりと漏れていた。
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不思議なもんだよな。ちょっと前まで、喉に引っかかってた言葉なのに。
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有遊愛来
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陽香の元気なところはいいが、気をつけるんだな。階段は危ないから。
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古場陽香
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う、うん。……へへ。
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……休み時間終了のチャイムが鳴り響く。
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いつもなら、せっかくのオウセを邪魔すんなって毒づくところだけど、なんでかな、今は全然気になんねぇ。
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オレ自身が口にした「アキ」って響きが、オレの胸の中で膨らんでいくような。
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そこからふわっとあったかさが広がって、指先までぽかぽかするような……。
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……なんだろうな、これ。不思議だな。
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古場陽香
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じゃ、じゃあ……、またな。愛来。
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有遊愛来
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ああ。……廊下は走らないように。
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次の授業は苦手な科目だったのに、それもどうでもいい。
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信じられないくらい足が軽い。階段何段飛ばしなんてのじゃなくて、このままどこまでも飛んでいっちまえそう。
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古場陽香
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(名前を呼んだだけで、こんな……)
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古場陽香
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(……やっぱすげぇな、トモダチって)
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……トモダチになることを薦めてくれた結奈は、ダンカイを踏まなきゃって言ってたけど。
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うん、これがそれか。今、オレ、ひとつ上がったんだわ。
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grpo
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