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へぇ、こんなとこにいるんだ。
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それが、最初の感想。屋上で、結奈の姿を見つけた時の。
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昼休みも半分を過ぎたころ。ちょっと授業が始まるまで、一眠りでもしようとここまで上がってきた。予想以上に暑いんで、どうしようかと思ったけど。
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教室に戻るのも、ちょっとかったるかった。学園祭が近いからさ、教室の中もちょっと慌ただしくて。
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日陰で横になろうか、ちょっと暑くてもいいからベンチで横になろうか、考えていたら、端っこのベンチに座ってた結奈を見つけた。
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どうしよっかな……。まぁ、別に用もないのに声、かけなくてもいいか。
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結奈もわざわざ一人でこんなとこにいるんだし。きっと、話しかけなくてもいいかなって思って。
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ん、でも。
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結奈、一人でいるんだよな。なんか、時々、うなずいたりしてる。考え事でもしてるのかな?
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ん~、それよりも、なんだ、あれ。誰かの話を黙って聞いてるって感じ。あれが結奈の考え事の時のクセなのかな?
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まぁ、どうでもいいかぁ。さて、どこで寝よっかな……。
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遠見結奈
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……あ、音七さん?
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三山音七
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ん?
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あ、見つかったか。結奈が、こっちを見てる。
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向こうから、声、かけられちゃったら仕方ないか。あたしは、結奈の方に歩いていく。
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三山音七
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や、こんちは~。
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遠見結奈
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こんにちは。どうしたの?
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三山音七
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ん~、ちょっと授業始まるまで、横になろうと思ってさ。
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遠見結奈
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そう? それじゃ、声かけない方がよかったかな。
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三山音七
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いや、別に気にしなくていいよ~。ここ、いい?
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遠見結奈
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ええ、いいわよ。
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そう言って、結奈は立ち上がって、フェンスに寄りかかった。わざわざベンチを空けてくれたってことは、ここで寝ていいってことかな? そういうつもりじゃなかったんだけど。
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まぁ、好意には甘えることにしよ。
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三山音七
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結奈、昼休みは屋上にいたんだ~。
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遠見結奈
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え? あ、うん。
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三山音七
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ふ~ん、そうだったんだ。そう言えば、去年も昼休みにはいなかったっけ。
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遠見結奈
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え、ええ、そうね。
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去年はそんなに仲がよかったわけじゃない。話すこともほとんどなかったし。
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ただ、毎日、昼休みになると教室から出て行って、終わる間際に戻ってきていたっけ。
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ということは、ずっと屋上に通ってたわけだ。阿野以外に友達がいたようにも見えなかったから、ずっとここでお昼、食べてたってことかな。一人で。
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三山音七
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それじゃ、あたしらの放送も聞いたこと、ない?
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遠見結奈
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あ、うん。ごめんなさい。
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三山音七
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いいっていいって。お昼に屋上にいる人は、わざわざ放送聞きたいとも思わないでしょ。
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遠見結奈
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そういうつもりじゃないんだけど……。
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三山音七
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いいってばさ。
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結奈って呼べるほど友達になってからを考えると、ちょっと不思議な気もする。
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けっして、積極性のない人間とも思えない。行動力や状況への対処能力も高いと思う。
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阿野の友達なんだから、他人への寛容性も十分にあると思うし……。それなのに、一人で屋上でお昼?
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そういうタイプにも思えないんだけど……。
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遠見結奈
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今日は、一木さんたちとは一緒じゃないの?
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三山音七
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さっきまでは一緒にお昼食べてたよ。
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三山音七
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ちょっと眠たかったからね。あたしだけ、断ってここに来たのさ~。
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三山音七
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そのくらいは、できるようになったってこと。ま、あまり変わんないけどね~。
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沙紗のことで、ちょっとだけ話したこと、ある。
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沙紗の羽美への片思い、気付いていたフシがあるってのには、驚いた。自分以外にも気付いている人がいるなんてさ。
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それも、全然、その時のあたしらには関係ない結奈が。どういうことだろう。いまだにわかんないんだけど。
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ああ、この際だから聞いておくか。
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三山音七
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ところでさ~、結奈。
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遠見結奈
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え? なに?
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三山音七
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なんで結奈は、沙紗のこと、気付いてたわけ?沙紗と羽美のこと、くっつけようとしてた感じだったけどさ。
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遠見結奈
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え? あ、えっと……。
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さすがに、ダイレクトに聞きすぎたかな?それも答えにくいことだよね、これ。
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遠見結奈
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たまたま、かな。
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三山音七
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たまたま、ね。
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質問、一つにしとくべきだったな。
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たまたま気付いたのか、たまたまくっつけようとしてたのか。全部ひっくるめて、たまたまなのか。
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不思議な存在だな、結奈は。ちょっと合理性に欠ける気がする。
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沙紗のことに気付ける人間なんて、すぐそばにいたあたし以外にあり得ないと思う。
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しかも、気付いてて、沙紗と羽美をくっつけるように行動する? だって、結奈と沙紗には特に親しい関係はないはず。羽美にも。
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なんのメリットがある? 二人をくっつけて、結奈になんの得がある?
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損得じゃないにしても、沙紗と羽美、女同士なんだよ? 普通、わざわざ、助けてあげようと思うかな?
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沙紗のことに気付けた情報、あと、くっつけようとした行動の動機。その二つが、結奈からは見えてこない。
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……不思議なヤツ。なんかあるんだろうけど、まぁ、それはどうでもいいや。知ってどうなることでもないし。
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それに、沙紗と羽美はうまくいったんだしね。あたしにとって、結奈は不利益な存在じゃない。不思議なとこもコミで。
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三山音七
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ま、いいや。ふぁ……。
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これ以上、考えても仕方ないや。そんなことを気にかけるより、ゆっくり寝る方がいいに決まってる。
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三山音七
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ごめん、変なこと聞いた。寝る~。
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遠見結奈
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あ、うん。どうする? 予鈴が鳴ったら起こそうか?
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三山音七
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いいよ、別に~。適当にほっといて……。
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一年の時は、ほんとになんの関係もない、ただのクラスメイトだったのにな。
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こんなふうに友達になるとは思わなかった。そして、こういう人間だってことも、知らなかった。
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おもしろいな、結奈って。その気になれば、羽美以上に他人を巻き込んだりできるんじゃないかな。
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そんだけの行動力、ありそう。対処能力も、ありそう。総じてリーダーシップ、ありそうなんだけど。
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なのに、よっぽどのことがない限り、前に出てこないみたい。こんなとこで一人でお昼食べてるなんてさ。
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まぁ、それも結奈が自分で望んだスタンスなのかね。だったら、あたしは別にどうこう言わない。
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三山音七
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おやすみ~……。
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遠見結奈
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うん、おやすみ。
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友達に対して、あんたはこうするべきだなんて、言いたくないからね。あたしも言われたくないから。
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それじゃ、お互いを尊重するってことで。なんかあったら、適当に声をかけあうってことで。そんなもんでいいかい? いいよね。
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んじゃ、ゆっくり寝させてもらうかね……。
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