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遠見結奈
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………………。
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……ん?
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阿野藤
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(んん?)
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あたしは首をかしげてしまう。廊下の先、放送室前あたりで結奈を見かけた。
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結奈、さっきまで教室にいたと思ったけど、こんなとこまで来てたんだ。バイト行かなきゃだけど、声くらいかけておこうかなって思って。
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で、気付いた。結奈、それと。
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そのそばの、オレンジ色した、光の柱っぽいもの。人影、みたい?
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ぼんやりとしたオレンジの光。眼鏡に反射しない光だから、すぐに、アレなんだっていうことはわかってしまう。
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眼鏡をかけていると世界の見え方がちがうってよく言うよね。レンズは光を全部とは言わないまでも反射するから、結晶みたいに、光は独特のかたちになって見える。
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ダイアモンドみたいって言う人もいるね。ロマンチックだとは思うけど。星空を見れば、宝石がいっぱいなのかな。
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でも、そういう、普通の、自然の光じゃ、ない。
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結奈の近くに立つ光の柱。アレがなにかを、あたしはわかってる。わかってしまうんだな、これが。それで苦労したことも何度かある。
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阿野藤
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(地縛霊かな、アレ)
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それもけっこう年季の入ったものみたい。たぶん、女性だと思う。光の色で性別が決まってるわけじゃないけど、そんな感じ。カンだけど。
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色や気配、波長や波動ってことになるのかな。光の強さはその霊の強さを示すみたい。それが、あたしの長年の経験からの実感。
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オレンジの光の柱。小さな玉じゃないってことは、けっこう強い力があるってこと。そう、感じるし。
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阿野藤
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(でも)
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阿野藤
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(あんまりヤな感じじゃないかな)
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阿野藤
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(やわらかい感じ……)
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やわらかくて、害のなさそうな波動を感じる。波長でも波動でもオーラでもなんでもいいけどさ。あ、なんかこういう言葉、ちゃんと使うと恥ずかしいな! ラノベの主人公かっ!
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でも、ま、眼鏡の女の子が主人公のラノベもあんまりないか。そういう、なんでもうまくいく感じの人生でもないしね、あたしは。
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こういうのってやっぱり邪魔なんだよね。見えてもいいことなんてほとんどないし。思い出すのは苦労したことばっかり。
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大人に言っても笑われるし、友達に言おうものならやっぱり笑われる。
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あたしの見えてるものと同じものが見えてしまう子が、おんなじように笑われたり、からかわれたりするの見てて、あんまり言わない方がいいのかな~って思うようになって。
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あたしが同じようにからかわれたりせず、不思議ちゃんにもならずにすんだのは、あたしが、こー……。
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……恥ずかしがり屋だったせい、かな。ちっちゃいころは、ほんとに引っ込み思案で、人とまともに話せないくらいだったから。このあたしがですよ。
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物心ついて、これが霊感だとか霊能力だとかというものと理解してからは、あたしはますます、誰にも話そうとしなくなった。話せないんじゃなくて話さない。
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慎重に、隠してきた。ゲームみたいに隠された力がきっかけで仲間ができたり、使命が降って湧いたりなんてありえないって、あたしはわかってたから。
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それに。やっぱりあたしは目立つのは好きじゃないし。
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今はちゃんと人と話せるようになったけど。というか、反動的に明るいユルカワ系(自称)キャラになってますけど。
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実のとこ赤面症がちだし、注目されるとかホントありえない。耐えられん!
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だからあたしは、なにも言わない。友達にも。結奈にも言ってこなかった。
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阿野藤
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(……それが)
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阿野藤
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(裏目に出たとかじゃないといいけど)
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秘かに、結奈のこと、心配してた。結奈、お昼は毎日、屋上でお弁当を食べていたから。だって、ここの屋上、いるんだよね、幽霊さん。入学してすぐに気付いた。
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一度、結奈に屋上に誘われたこと、あったけど、高所恐怖症だからって嘘をついて断っちゃった。
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あのオレンジさん、屋上から感じたのと、似てるな。あれが屋上の幽霊さんなのかな? 結奈、やっぱり見ちゃったのかな?
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そう言えば、こないだ、教室で結奈がちょっと騒いだ時も、感じたっけ。教室の中も、なんか変な感じしたし。
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あの日、結奈、屋上から戻ってきた時から、様子が変だったっけ……。
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やっぱり、結奈、屋上で見ちゃったのかな……? それがあの、オレンジさんなのかな?
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あのオレンジさん、ほんとに悪い方の霊じゃないといいんだけど。
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ちょっと隠れながらあたしは結奈とオレンジさんを観察する。ん~……。
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遠見結奈
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……。
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遠見結奈
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…………。
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遠見結奈
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……も、ちょっと気になったから、様子を見に来たのよ。
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阿野藤
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(なにか話してる? みたい?)
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遠見結奈
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……聞けたらなって思ってたんだけど。
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阿野藤
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(憑かれてるって感じの顔でもない、か。ちゃんと自分の意識があるよね、あれは)
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遠見結奈
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……なにかできることがあるかと思ったのよ。
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残念ながら地縛霊さんの方が、なにを話しているかはよく聞こえない。集中すればいいかも知れないけど、そういうのは極力したくないし。
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したこともないし、してどうなるかもよくわからない。そしたら、誰かに気付かれるかもしれないし。
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それに、見る限り、とりあえず悪い霊ではなさそうだと思う。
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阿野藤
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(結奈は会話をしてるし、視線もちゃんと光の方に向いてる)
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阿野藤
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(なら、相手の姿が見えてるってことかな?)
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霊は普通の人には見えない。地縛霊なんて特にその性質が強い。なのに、ああして見えて、なおかつ言葉も聞かせてるのなら。
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地縛霊が会話と交流をしようとしてるってこと。凶暴な霊ってのは、たいてい、自我なんて吹き飛んでるからまともに会話なんてできないし。
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見せて聞かせる時には、脅かそうとしたり、悪いことしてこようとするのが大半。なのに今の結奈みたいに普通に会話ができているってことは……。
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阿野藤
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(悪い霊じゃない)
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阿野藤
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(よね?)
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阿野藤
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(それに……)
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それに、なによりも。
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知らない人が見たんじゃなにもわからないだろうけど、結奈、ちょっといつもとちがうみたい。悪い意味じゃなくってさ。
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なんていうか、よくしゃべってる。あたしと話してる時ともちょっとちがう感じ。
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ちょっと怒ってるというか、不満そう? でも、あんなにしゃべってる。それだけ、気が許せる相手ってことなのかな。そんな感じで。
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阿野藤
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(なんだか……、結奈……)
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阿野藤
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(そっか)
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それならそれでいいのかも知れない。少し考えて、あたしは小さくうなずいていた。
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結奈の、あたし以外の人への態度、物静かなところは好きだけど、どこか、ガマンしてるような雰囲気もあるから……。
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あたしも、さんざん迷惑かけて、結奈が根負けしたみたいに、世話を焼いてくれてるわけだし。
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なんで結奈が、あたしや比奈ちゃん以外には、そんな態度取ってるのか、知らない。どうしてなのかなって思うけど、そんなこと、聞けないし。
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なにもせずに、なにもできずに、ただ隣にいただけ。あたしはさ。
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言わないことは言いたくないこと。あたしの恥ずかしぃなとことか、見えちゃうとことか。
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それは自分自身でよくわかってるから、結奈がなにかに耐えていることに気付いても、なにもしなかった。
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なにもできなかった。ちょっとつらそうだなって、ずっと隣で感じていたのにね。
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でも、今の結奈は……。
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あたしの面倒見る時とは、ちょっとちがうけど、それでも生き生きとしてる感じ? 状況は、もう、全然よく読めないけど……。
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阿野藤
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(なにかできることがあるかと思った。そう言ってた)
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阿野藤
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(一緒になにかしてるの? 霊さんと?)
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阿野藤
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(ほんとに、取り憑かれてそう言ってるって感じじゃない。操られてる感じもしないし。なら、結奈、自分からそうしてるってこと?)
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阿野藤
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(霊の、手伝い……?)
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状況は読めないまま。一体、結奈がなにをしようとしているのかもわからない。
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でも。あたしは、結奈をちょっと離れたとこからこうして、見つめながら思う。とりあえず今のあたしにできることはなに?
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結奈に声をかけて、なにと話しているのか聞いてみる? それで、あの霊をどうにかして祓ってみる? いや、そんなことしたことないし。
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ううん。そうじゃないと思う。ぴんと来ない。霊が見えるだけじゃない。あたしは、昔から、カンもよかったし。
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それがダメなら、なにをしたらいいんだろう。
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結奈と友達になってから、一年ちょっと。なにもできないでいた、あたしなんかに、なにができるのかな。
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阿野藤
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……とりあえず。
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阿野藤
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手伝ってみよっか。あたしも。
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どうしようもないぐらい消極的で、どうしようもなくズルい考え方をあたしはしているんだと思う。そうだよ。ズルいよ。
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あたしの知ってることは結奈には言わないで、勝手に手伝うだけなんだもん。言い出せないのに、勝手に。
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でも、あたし。結奈がなにかをしようとしてるなら。そんなふうに、見せたことない顔で、結奈がなにか、しようとしてるなら。
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……結奈を手伝いたいと思う。
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それで、あたしも、なにもできずにいたあたしも、少しくらい、役に立てるなら。
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それが、たとえ、霊からの頼み事だったとしても。
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阿野藤
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……ごめんね。結奈。
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阿野藤
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ちゃんとできないけど、あ、あたしもがんばるから。それで許してくれないかな?
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阿野藤
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ちゃんと言える時が来たら、あやまるからさ。ね、結奈。
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grpo
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