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今までのオレは死んでいた。
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断言したっていい。今までのオレは死んでいたんだ。
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いやいや、生きていたけど。でも、死んでいた。リビングデッド!
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この学校に入って、オレは生まれ変わったんだ! リヴァイヴ! フェニックス!
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もう、なにもこわくねーってくらいに、完全に、カンペキに!
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古場陽香
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やっべー! 太鼓なってねー!? ロッケンロール!
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全力ダッシュするオレの耳に、ちょっとソウルの足りない、つまんねー太鼓の音が聞こえてくる。
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でも、まだ間に合う。アウトじゃねー。
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ギリギリ、ギリギリ! オレは最後の力を振り絞って、あのクソッタレな正門を駆け抜けた。
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古場陽香
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セーフ!
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いや、マジ、ギリギリじゃん。オレが正門を駆け抜けると同時に、太鼓の音が止んだんだから。
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うあー、マジ、ヤバかった。
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ジマンじゃねーけど、朝は弱い、まともに起きる気がしねー。
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だから、いっつもこんなギリギリの時間になっちまう。あー、今はオレの心臓がロックだ。超ハードなツーバスブッ叩いてる。
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正直、ロッカーなオレとしては、遅刻の回数なんかどーでもいいんだけど。
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オレの入った学校、シロジョは、校則、けっこー全然ユルユルなのに、遅刻だけはすっげー厳しく取り締まりやがる。
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なんでも、「キメる時はキメろ」ってことらしい。時間ゲンシュが校風なんだと。いーじゃん、ロックだ、気に入った。
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だけど、遅刻5回連続のバツだけは最悪だ。一週間の太鼓当番。当番中、毎朝、遅刻せずに学校に来て、あの気合いの入らねータイコ、叩かなくちゃならねーなんて!
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そんなの、ぜってーゴメンだ! だから、オレは5回目の朝だけは、こうして必死に走る。今日もなんとか間に合った。オレのロックは守られたんだ。
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古場陽香
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あー……、疲れた。
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オレは正門を振り返る。太鼓の音が止まった正門は、もう、きっちりと閉められてる。
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正門の脇の通用門だけが開けられて、間に合わなかったアワレな連中がかわいそうに取り締まられてる。
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ほら、今日もあの、風紀委員に!
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古場陽香
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へ、へへ……。
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ヤベぇ、笑いがこみ上げてきた。
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おっと、クールにいかなきゃ。ヘラヘラ笑ってちゃ、ロッカーはつとまんねぇ。
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そして、オレはまだ息が荒いまんまだけど、通用門の前に立つアイツを見た。
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古場陽香
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よっ!
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声かけてやる。どーだ、このよゆー。
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でも、アイツはこっちのことなんか見向きもしない。ちぇ、カッコいいじゃん、風紀委員のくせに。
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古場陽香
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今日は間に合ったべ? なんせ、横断歩道で困ってるバーサンがいなかったからな!
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カンペキ!
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どうよ。さすがにアイツも振り返るだろ。なんかちょうど、遅刻者の群も途切れたみたいだし。ほら。
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「そう、よかったな。来週はおじいさんに気をつけろよ?」
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オーケイ、わかってる。
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「早く教室に行け。ここで間に合っても出席に遅れたら遅刻だからな」
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あーもう、わかってるって。ほんとにクールだよな、イカしてる。
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オレは腰をあげて、玄関ホールに向かう。朝の楽しいヒトトキは、これでお終い。
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へへ、やったぜ!
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オレの体にロックがおりてきやがったのは、4月の始業式の日だった。ついこないだの。
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無事に進級できたし、春休みで気のゆるみまくったオレに、シギョーシキとはいえ、遅刻すんなってのが無理な話だった。
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やっぱ、タイコの音が聞こえていたんだけど、気合いなんて入るわけねー。ダラダラと閉じちまった正門の横、通用門をくぐろうとした時だった。
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「学生手帳、出しなさい」
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ウムを言わさねーってのは、このことだった。理由も事情も聞きやしねー。
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古場陽香
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あ、いや、その、さ。ちょっとヤムニヤマレヌ事情ってのがあってさ……。
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我ながら、情けねーこと、言ったと思う。しかし、そいつはオレのそんな言い訳、耳を貸す気もなかった。
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「出しなさい」
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ただ、それだけ。
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もう、ダメだ、その瞬間だった!
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全身がシビれた。雷に打たれたらこんな感じじゃねーのかってくらい。
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オレはもう、その場で膝を付きそうになっていた。そんだけ、体中から力が抜けた。入んねー。
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そのまま、頭を下げて、許しを請いたい気分だった。オレの目の前に立ってるのはカミサマなんじゃないかと思った。
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そんだけ、オレは目の前のコイツにアットーされていた。そして、同時に。
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体はシビれて動けねーのに。
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なぜか、心臓だけが、すっげーロックを鳴らしていることに気付いた。
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ソイツの名前は、有遊愛来(ありう・あき)。同じ二年生。
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後から聞いた。二年生になったその日から、風紀委員会の正門遅刻取り締まりの責任者になったって。
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オレも今まで、遅刻の常習犯だったから、一年の時も顔を合わせたこともあった。でも。
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二年生になって、責任者になった瞬間、有遊サマの威厳、いや、オーラはそれまでと比べものもなく、強くて、まぶしくて、神々しくて。
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オレにはほんとに、ロックのカミサマに見えたんだ。もちろん、マリリン・マンソンには全然似てねーんだけど。
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なんてことない、昼休み。
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なんとか、午前中の授業は切り抜けた。すげーマジメに授業受けてきた。
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オレは別に、大学行きたいとか、そーいうのは考えてない。ロックで食ってくつもりだし、ロックに勉強は関係ないと思ってる。
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でも、ロッカー=バカと思われるのは仕方ないけど、バカ=ロッカーと思われるのはガマンならないじゃん?
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オレは世界のロッカーの名誉のために、必死になって睡魔と戦ったんだ。
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そんな激闘のあとの昼休み。
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学食に行ったオレは、そこで有遊サマを見つけた。
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おおう、少し離れていてもわかる、神々しさ。ダメだ、このままちょっとでも近づくと、土下座したくなる。
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ほんとに、ダメだ。どうしちまったんだ、オレは。毎日、少しずつ、転がる石のように、どんどんダメになっていく!
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わかってる、わかってんだ。
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オレは完全にイカれちまったんだ、有遊サマに。ヤられちまったんだ。
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ガッチリ、心臓、つかまれちまったんだ。
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朝は、いい。遅刻寸前の時間は、オレのステージだ。ロックがオレをステージに立たせてくれる。だから、なんとかちょっとだけ、話すこともできる。
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でも、それ以外の場所じゃダメだ。こんなふうにすぐにヤられちまう。目もあわせらんねー。話しかけるなんてぜってームリ!
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でも。
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このままじゃ、ダメだ。イヤだ。たとえ相手が有遊サマであっても、オレはロックでいたいんだ。抗って抗って、叫び続けなきゃならないんだ。
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なにを? もちろん、知ってる。愛をだ!
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この愛を叫んで、叩きつけて、有遊サマをコイビトにしねーと、オレのロックは達成されないんだ!
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だけど、これ以上近づけない。あとちょっとでも近づくと、オーラにヤられちまう。
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どーすりゃいいんだ……? オレ、こんなこと初めてだから、どうしていいかわかんねー。
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どうやったら、オレは完遂できるんだ?
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この胸の、ロックを!
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ロック!
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うわ、閃いた! マジで? そうだ、オレ、ロッカーじゃん!
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ロッカーなら、いや、ロッカーだからできること、あるじゃん! そうだよ! ロッカーには歌があるじゃん!
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ステージの上なら、オレは無敵だ。ゼッタイ、有遊サマにも届く歌をカマすことができる!
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やった!
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これなら、イケる! オレは、この想いを歌にして、有遊サマに愛を告げるんだ! サイコーのロックで!
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Isn't It Fine To XX Freely
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First Love Mint Blue
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Girl Who Can't Say No (Daga Kotowaru)
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The Rain and the Other Side of You
Hana ni Arashi
Kakegurui Yorozu
Tsubakuma!
Someday, We'll Get There
Honto no Kokoro
Hayate X Blade
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