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7月に入って、もうすぐ梅雨も終わる。いよいよ、夏本番って感じで、今年も暑くなりそう。
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そんな予感をさせる、百合霊二人のテンションだった。
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永谷恵
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さ、今月もがんばりましょうね、サチさん!
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榎木サチ
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ええ、そうね。
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とにかく、恵の方。
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昨日、なんでか知らないけどいきなり、恵は他人に取り憑くことができるようになった。最初の被害者は私だったんだけど。
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とにかく、サチさんを味方につけて説得して、無闇に人に取り憑かないことを約束させたけど、どこまで守ってくれるんだろう。
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憑依能力っていうのかな? 幽霊らしいと言えばそうなんだけど、そんな能力を今さらながら身につけたせいで、いつも以上に気合いが入っている感じ。
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いつものお昼の報告会は、そんな雰囲気で始まった。
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遠見結奈
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それで、牧さんと相原先輩、ずっと休憩所に来ていないんですか?
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榎木サチ
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ええ、先週は一回も来た様子がないわね。たまたまなのかも知れないのだけど。
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永谷恵
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きっと、なにかあったのよ!
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一週間か……、今までは週に3回くらいだってサチさんが言ってた。ちょっと間が空いただけなのかもしれない。
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永谷恵
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せっかく、奥校舎に行けるようになったんだから、わたしにもなにを話してるのか、聞かせてほしいのに!
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遠見結奈
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行けるようになったって言ったって、誰かに取り憑いてでしょ? のぞき見させる気?
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永谷恵
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あ、そうか……。もう、けっこう不便なのよね。
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遠見結奈
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それくらいでいいわよ……。
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榎木サチ
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それでね、牧ちゃんと美紀ちゃん、毎日、放課後は一緒にお仕事してるのよ。それは今まで通り。でも、ちょっと様子が変わってきているのよね。
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遠見結奈
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そうなんですか?
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榎木サチ
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ええ……。お互いに……、そうね、牧ちゃんの方が特にかしら。どこか、遠慮しているというか……。
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榎木サチ
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少し、距離をとってる感じがするのよね。ほんとに、なにかあったのかしら……。
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遠見結奈
>
かもしれませんね。調べてみた方がいいのかな。
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榎木サチ
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そうね。
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うーん、相原先輩に話を聞いてみるとか? 比奈に、牧さんの様子を聞いてみるとか?
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榎木サチ
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二人の間に距離ができたっていうと、月代先生と桐ちゃんも、そうね。こっちの方が問題かもしれないわね。
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遠見結奈
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ああ……。
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園生先生と剣峰さん。
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こないだ、学校中を追いかけっこしてようやく、二人を話し合わせることに成功したのはいいんだけど……。
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永谷恵
>
もう、園生ちゃんってひどいよね! 許せない!
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榎木サチ
>
そうね……。ちょっと桐ちゃんがかわいそうよね。
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その二人の話の一部始終を聞いていた百合霊の二人は、園生先生に対して、たいそう腹を立てているみたい。
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永谷恵
>
勘違いって決めつけるってどういうこと!?桐さんのせっかくの告白を、勘違いって!
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剣峰さん、園生先生に告白したみたい。でも、園生先生は、それを一時的な勘違いだって諭したんだって。
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今はそういう気持ちになっていても、そのうち、冷めるって。
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その園生先生の言葉が、サチさんと恵には許せないものに聞こえたみたい。
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遠見結奈
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園生先生の言うことも、間違ってるとは思わないけど……。
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永谷恵
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そうかもしれないけど! でも!
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特に、恵。数理部の部室の中に入って、直接、二人の話を聞いてたらしいだけあって、ほんとに園生先生の言葉が許せないみたい。
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永谷恵
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桐さんの告白に対して、自分の答えは出さずに、えらそうなこと言ってごまかそうとしているのよ! そんなの、桐さんの気持ち、無視しているのと一緒じゃない!
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榎木サチ
>
ええ、そうね。
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サチさんも密かに腹を立てているみたい。こういうふうにヒートアップした恵のこと、いつもならやんわりと止めたりするのに。
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遠見結奈
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サチさん、前に、二人がどんな答えを出しても、それはそれでいいって言ってたのに……。
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榎木サチ
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確かにそう言ったけど……、やっぱり、かなってほしいとは思っているのよ。恵も言ってるけど、月代先生、自分の答えは出していないと思うのよ。
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榎木サチ
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桐ちゃんのこと、恋愛対象に見られないなら、そう言ってほしかったの。桐ちゃんを好きになれないなら、そう、ね。
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榎木サチ
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一般論で諭す前に、まずは、それを桐ちゃんに伝えてあげてほしかったの。
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遠見結奈
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はぁ……。
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永谷恵
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園生ちゃん、最近は桐さんに対して、特に先生って呼びなさいってうるさいのよ? なんかもう、桐さんがかわいそうなくらい!
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榎木サチ
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ああいうこと、言ったからでしょうね。先生として、剣峰さんの気持ちを見守ろうとしているのでしょうね。
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永谷恵
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絶対、このままじゃすまさないんだから! とにかく、園生ちゃんには、はっきりしてもらわなきゃ!
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榎木サチ
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ええ、その方がいいわ。
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遠見結奈
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そうかなぁ……。
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永谷恵
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そうに決まってるの! それに、園生ちゃん、絶対、桐さんのこと、嫌いじゃないと思うわ!
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榎木サチ
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ええ。桐ちゃんの気持ちも、きっと勘違いなんかじゃないわ。それに、気付いてほしいわね。
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永谷恵
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桐さんの本気に気付くだけじゃダメです! いっそのこと、桐さんのこと、もっと好きになってもらわなきゃ!
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遠見結奈
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どうやってよ。
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永谷恵
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桐さんの魅力をもっとアピールすればいいのよ!
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遠見結奈
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だから、どうやって? 普段から数理部のたった一人の部員と顧問なのよ? お互いのこと、よく知ってるはずでしょ?
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永谷恵
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甘いわね、結奈! 魅力ってのは、普段は隠れているものなのよ。つまり、普段の桐さんとはちがう姿を見せれば、きっと園生ちゃんも桐さんの素敵さに気付くはず!
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遠見結奈
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だから、どうやって!?
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榎木サチ
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そうね……。ねぇ、結奈さん、この学校には、女の子がとびきり素敵に見える場所があるのは知ってる?
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遠見結奈
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え? とびきり素敵に見える場所?
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どこだろう。そんなとこがあるなんて、知らなかった。というか、なんか……、うさんくさい……。
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永谷恵
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あ、わかった! ある、ありますよね! えっと、そうだ、あそこ!
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永谷恵
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午前中、すっごい太陽の光が入る踊り場が星館校舎にあるわ! そこなら、どんな女の子だって、キラキラに輝いて見えるはず!
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榎木サチ
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そうね。あと、夕焼けが差し込んだ星館の大座敷も素敵な場所よ。そして……。
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永谷恵
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晴れた日の屋上!
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榎木サチ
>
ええ。その三ヶ所で桐ちゃんに会えば、月代先生もきっと、桐ちゃんの魅力に気付くはずよ。
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遠見結奈
>
はぁ……。
>
本当かな……。まぁ、ライティングで人の見え方ってけっこう変わるとは聞くけれど……。
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永谷恵
>
うん、決まり! 結奈、いい? 桐さんをそこに誘導して、園生ちゃんと会わせてあげるの!
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遠見結奈
>
ええ!? それって、けっこう難しくない?
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永谷恵
>
難しくてもやるの! そこで桐さんの姿を見れば、絶対、勘違いなんて言わせないんだから!
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遠見結奈
>
うーん……。
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榎木サチ
>
そうね。やってみましょう。桐ちゃんキラキラ大作戦ね!
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永谷恵
>
うわぁ、素敵!
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……そうかなぁ。時々、サチさんのセンスがよくわからなくなる。
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遠見結奈
>
はぁ……、なんていうか、ひと昔前のラノベみたいな展開……。
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榎木サチ
>
あら、らのべってなに?
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遠見結奈
>
え? あ、ああ、ラノベっていうのは、ライトノベルのことで……。なんて言えばいいのかな? 私たちくらいの年代向けの小説のことです。
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榎木サチ
>
そうなの。どんな内容?
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遠見結奈
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どんなって……。ええと、いろいろあるんですけど。ファンタジーとか、SFとか? いろんなジャンルがあって。
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榎木サチ
>
ふぁんたじぃ……、ああ、怪奇小説のことね。
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遠見結奈
>
え、ええ。あとは、恋愛小説もあるから。少女マンガがそのまま、小説になったみたいなのとか。
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他にもいろいろあるけど……、まぁ、別に今、細かく説明しなくてもいいか。私も、阿野に借りて読むくらいだし。
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榎木サチ
>
へぇ……、おもしろそうね。読んでみたいわ。
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遠見結奈
>
……まぁ、そのうち。私もたくさん持ってるわけじゃないんで。
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榎木サチ
>
そうね。でも、ちょっと楽しみ。
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永谷恵
>
わたしも読んだことありますよ、サチさん!コバルト文庫とか。あ、今度、図書室に行った時、借りてこよっかな?
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遠見結奈
>
借りるのは私でしょ……。
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もう……、すっかり調子に乗ってるな、恵は。そんなにうれしいものなのかな?
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榎木サチ
>
さ、あとは沙紗ちゃんと羽美ちゃんね。この二人は特に問題ないかしら。それと、陽香ちゃんと愛来ちゃんも。
>
もう今さら、女同士がそもそも問題とか言わないけど。
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でも、陽香のことを聞かされた時は、本当に驚いた。そのちょっと前に再会……、というか、再認識した昔のクラスメイト。
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その変わりように驚いて、見せられたラブロックとかの歌詞に驚いてあきれて、最後に、陽香の恋する相手が女性だと知らされて。
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こうなると、もう、いろいろ麻痺してくる感じ。問題ない? うん、なにも問題ないんじゃないかしら。
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遠見結奈
>
ですね。なにかあったら、その時、考えればいいかな。
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遠見結奈
>
まずは、牧さんと相原先輩の様子を調べることと、剣峰さんの……。
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榎木サチ
>
キラキラ大作戦ね。
>
遠見結奈
>
……ええ、それで。作戦の方は、いろいろ考えてみます。まぁ、二人がうまく、その場所で会えるように、うまく誘導するしかないのかなぁ……。
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永谷恵
>
わたしたちも、園生ちゃんと桐さんが近くにいるようだったら、教えてあげるわ。
>
遠見結奈
>
うん、お願い。
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でも、どうにかするのは私なのよね。うーん、剣峰さんを足止めして、そこに園生先生が通りかかるのを待つっていうのが合理的かな……。
>
やってみなくちゃ、わからないかな。たまたま、二人が近くにいる時、うまく引き合わせるしかなさそう。
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考えていると、頭が熱くなりそう。実際、屋上の日差しはけっこうきつくて、気温も上がってきてる。
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もう、夏なんだな……。
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榎木サチ
>
そう言えば、もうすぐ夏休みね。
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遠見結奈
>
ですね。
>
榎木サチ
>
夏休みには、合宿があるんでしょう?
>
そう言えば、そんなのもあったな。
>
夏合宿。そろそろ、教室でも話題になっている。
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この学校には、雲見櫓って呼ばれている建物があって、講堂の隣にあるそこは、ここがお城だった時からの古いもの。
>
1階は部室が入っていて、2階は合宿所になっている。まぁ、ただ、小さい部屋がいっぱいあるだけなんだけど。
>
そこは、夏休み、申請さえすれば、部活に入ってなくても合宿ができる。ちょっとした城女の夏の名物行事。
>
仲のいい友達同士で、旅行気分で学校に泊まれるというもの。まぁ、去年は私は、参加しなかったけど。
>
榎木サチ
>
結奈さんは、夏合宿、参加するの?
>
遠見結奈
>
そのつもりはなかったんだけど……。
>
たぶん、夏休みに入ったら、学校に来る用事はほとんどない。登校日があるくらい。
>
夏合宿か……。放送部の三人は参加するかも。剣峰さんと園生先生も、数理部で参加するかもしれない。
>
遠見結奈
>
参加した方がいいのかな?
>
榎木サチ
>
そうね、できれば参加してみない? 私たちも、夏休みのあいだ、結奈さんに会えないのはさびしいし。
>
永谷恵
>
わたしはサチさんと一緒だからべつにさびしくないけどね。でも結奈、夏休み中ずっと、家の中にいるつもり?
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遠見結奈
>
少しは出歩いたりするし、予定だってあるわよ、失礼ね。
>
遠見結奈
>
でも、夏合宿って、部活参加以外の場合、二人以上で申請しないといけないんだっけ……。
>
榎木サチ
>
あら、そうだったの。誰か、お友達には頼めないの? ほら、阿野ちゃんとか、比奈ちゃんとか。
>
遠見結奈
>
比奈は、陸上部で参加するから。阿野は……、夏合宿の時期は、親戚の家に行ってるそうなので。
>
ついでに、コミケに参加してるみたい。今年も遠征だーって言ってたから。
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永谷恵
>
そして、他に友達はいないのね。
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遠見結奈
>
いいでしょ、それは別に! うーん……。学校に来ることはできるけど……。
>
遠見結奈
>
たとえば、合宿中の比奈に差し入れを持ってくるとか。それくらいしか、思いつかないかな?
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榎木サチ
>
無理しなくてもいいんだけど。でも、それでも顔を見せてくれるとうれしいわ。
>
遠見結奈
>
ええ。まぁ、何回か、顔を出しますね。
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永谷恵
>
なにか、お土産、持ってきてくれるとうれしいな!
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遠見結奈
>
はいはい……。
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