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梅雨ももうすぐ明けるはず。まだ雨の日もあるけど、そんなの関係ない!
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わたしにはもう、真夏の太陽がさんさんと輝いてる! そんな気分だった。
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永谷恵
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それでね、その日はずっと、サチさんに膝枕してもらったの!
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永谷恵
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でねでね、次の日は一日中、学校デートしてね!
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永谷恵
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ずーーっと、手をつないでいたのよ!
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もう、サチさん、素敵! 大好き!
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6月をちょっと憂鬱に過ごしていたわたしだったけど、最後の金曜日に、そんなの全部、吹き飛んじゃった。
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わたしの大好きなサチさんが、ちゃんと二人の記念日を憶えていてくれたから! しかも、プレゼント付きで!
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結奈が来てから、ちょっとサチさん、わたしのことほったらかしかなって思ってたけど、そんなことなかった。
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ああもう、うれしい!
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永谷恵
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ほんとにサチさん、大好き!
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遠見結奈
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はいはい……。
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永谷恵
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なぁに? そのつまらない反応。
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遠見結奈
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さっきからずっと、そればっかじゃない。いい加減、聞き飽きてるの。
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永谷恵
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あら、わたしは何時間でも話せるわよ? せっかく、わたしの幸せのお裾分けしてあげてるのに。
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遠見結奈
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もう、お腹いっぱいなのよ……。
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永谷恵
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そんなこと言わないで、もっと聞いてよ~!
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わたしは結奈の肩に抱きつくようにして、ひたすらに今の自分の幸せさを伝える。
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結奈にもちょっとは感謝してるのよ? カップケーキ、作ってきてくれたし。味はわからないけど、気分的にはおいしかったんだから。
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今日のお昼、結奈はちょっと早めにお弁当を食べ終えて、借りていた本の返却日だからって、図書室に行くとこらしい。
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わたしは、もう、金曜日からのサチさんとの日々を誰かに話したくて仕方なくて。
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まぁ、話せる相手なんて、結奈しかいないから、こうしているわけだけど。
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永谷恵
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それでねそれでね、雲見櫓に行った時、サチさんがね!
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遠見結奈
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それ、さっきも聞いた気がするんだけど。
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永谷恵
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あ、そうだっけ? でも、もっかい聞いてよ!
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遠見結奈
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……勘弁してよ……。
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永谷恵
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いや! でね、サチさんね、わたしのこと、かわいいって何度も言ってくれるのよ。
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遠見結奈
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はいはい……。
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永谷恵
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ねぇ、サチさんってなんであんなにかっこいいのかな? 優しくて、美人で、大人っぽくて!
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永谷恵
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あ、結奈、言っとくけど、サチさんのこと、好きになったらダメだからね? 呪うからね?
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永谷恵
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でも、サチさんのかっこよさを認めるのはいいわよ? 恵の素敵な恋人をね!
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遠見結奈
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お願い……、もういい加減にして……。
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永谷恵
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いいじゃない。もうちょっとだけだからさぁ。
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遠見結奈
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図書室では静かにしないと怒られるわよ?
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永谷恵
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どうせ、わたしの声が聞こえる人なんていないもの。
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遠見結奈
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私には聞こえてるんだけど……。もう、どこまでついてくる気なのよ……。
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永谷恵
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サチさんの素晴らしさを語り尽くすまでよ!
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遠見結奈
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私、本の返却で図書室に来てるのよ。あなたのおしゃべりを聞くためじゃ……。
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永谷恵
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別に返却の邪魔したりしないわよ。ふ~ん、図書室ってこんなふうになってるんだ。わたし、来たことなかったから……。
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永谷恵
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え……?
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遠見結奈
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え……?
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え……? ちょっと待って、なにかおかしい。
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わたしと結奈、ほとんど同時に言葉を失って、そして、顔を見合わせた。お互いに、なにか変、そこに気付いた顔。
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永谷恵
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ここ、図書室……?
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遠見結奈
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え、ええ……。
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初めて、来た……。
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天井まで届く本棚がずらっと並んでいる。いろんな背表紙の本でびっしりと詰まっていて。
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本棚と本棚の間には、机が置いてあって、まだ午後の授業まで少し時間があるから、そこで本を読んでる人もいる。
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ここが、図書室……。奥校舎の1階にある……。
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わたし、生きている時は、この図書室に入ったこと、なかった。ううん、奥校舎にだって、来たことなかった。
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だから、わたし、幽霊になっても奥校舎には入れなかったのに……。
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遠見結奈
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ね、ねぇ、恵……。あなたって、奥校舎には行けないんじゃなかったっけ……?
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結奈も、同じことに気付いたみたい。
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永谷恵
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う、うん……。
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でも、今、わたし、図書室にいる。結奈と話しているうちに、いつの間にか、ここまで来ていた。
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全然、気付いてなかった。結奈に、今もそう、しがみつくみたいに抱きついて、ずっとしゃべってたから。
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永谷恵
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でも、ここ、図書室なんだよね……?
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遠見結奈
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え、ええ……。
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永谷恵
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なんで……?
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今まで、どうやったって奥校舎には入れなかったのに。どうして、いきなり入れるようになったの?
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考えても、理由なんてわからない。結奈と顔を合わせたまま、ただなんとなく、離れるのが怖くて抱きついたまま。
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遠見結奈
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と、とにかく、私、本を返してくるから。
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永谷恵
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あ、ちょっと待って! やだ、なんだか怖い。行かないでよ!
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遠見結奈
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ちょ、ちょっと引っ張らないでよ! 歩きにくい……、でしょ……?
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え? 引っ張る? 確かに、わたし、結奈にしがみついてる。結奈から離れるのが怖くて、勝手にどっかに行ってほしくなくて、ぎゅっと。でも。
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わたしは、幽霊だよ? 結奈を引き留めようとしたって、すり抜けちゃうはずなのに!
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どうして、今、わたし、結奈を引っ張っていられるの?
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もう、わけわかんない。とにかく、ただ、結奈の肩に回した手に力を込める。
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その時、じわって、口の中に、なにか広がってきた。
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それは、すごい久しぶりの感覚。甘い、味。
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永谷恵
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ん? あれ? 結奈、なんか口の中甘い。
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遠見結奈
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え? あ、飴、なめたままだった。どうしよう、図書室は飲食禁止なのに……。
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永谷恵
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でも、もうほとんど残ってないよ?
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遠見結奈
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うーん、そうなんだけど……。
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永谷恵
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ねぇ……。
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遠見結奈
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……なんで?
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二人してまた顔を見合わせる。もう何度目?
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永谷恵
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どうして、結奈のなめてる飴の味がわかるの?
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遠見結奈
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こっちが聞きたいわ。どういうこと?
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もうこの時、わたしはだんだん、今、なにがどうなっているのか、わかってきていた。
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理由とか、方法とか、そういうの全部すっ飛ばして、わかってきた。
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永谷恵
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これって……。
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なんでだろう、たぶん、わたしが幽霊だからかな。そんな直感。
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永谷恵
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わたし、結奈に取り憑いているんだね。
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grpo_bu0
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grpo_bu0
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永谷恵
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サチさん! サチさん!
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遠見結奈
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ちょ、ちょっと! だから引っ張らないでよ!
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榎木サチ
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あら、恵に結奈さん。どうしたの? もう用は済んだの、結奈さん。
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結奈の本の返却だけ済まさせて、わたしはもう一度、屋上へ。いやがる結奈を引っ張って戻った。
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永谷恵
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サチさん! わたし、すごいんです! すごいことできちゃった!
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榎木サチ
>
え……?
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遠見結奈
>
わかった! わかったから無理にそっちに行こうとしないで!
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永谷恵
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わたし、結奈に今、取り憑いているの! 結奈のこと、引っ張ってここまで来れたんですぅ!
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榎木サチ
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え……? 取り憑いたって……?
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永谷恵
>
こうやって、結奈にぴたってくっついてると、できるの! 結奈にこうやって、取り憑いてるとね……。
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遠見結奈
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ちょっと! これ以上、行かないで! フェンスがあるんだから!
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永谷恵
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少しは、結奈のこと、操ることだってできるの! ね、結奈!
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遠見結奈
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な、なに?
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永谷恵
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飴、食べて、飴! ほら、早くしなさいよ!ポケットにまだあるの、わかるんだから!
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遠見結奈
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ああ、もう!
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結奈の手を急かすように、ポケットへと突っ込ませる。ほら、あった! さっきからコロコロいってるの、わかってたんだから!
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遠見結奈
>
もう……。
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永谷恵
>
うわ、甘ぁい! ほら、結奈のなめてる飴の味とか、わかるの! ね、サチさん、すごいでしょ!
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榎木サチ
>
え、ええ……。
>
永谷恵
>
こうして取り憑いていれば、奥校舎にだって行けるんです! これで、いろんなとこに行けちゃうんですよぉ!
>
永谷恵
>
ふふふ……、結奈のこと、好きに操っちゃうことだってできるんだから……。
>
遠見結奈
>
言っとくけど、勝手に取り憑いたりしたら許さないからね!
>
……結局。
>
その後、サチさんと一緒に結奈と話し合って。
>
無闇に取り憑いたりしないこととか、結奈以外の人に取り憑いたりしないこととか、いろいろ約束させられちゃったんだけど。
>
いざという時には、結奈も協力してくれることになって。
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こんなことができるなんて、思ってもみなかった。結奈が来てから、ほんと、いろいろと変わってきてる。
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これなら、もうすぐ、サチさんの願いも叶うのかな。そうしたら……。
>
わたしも、サチさんと一緒に行けるのかな?どこにだろう。でも、サチさんの行く場所なら、どこにでもついていく。
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いつまでも、わたしはサチさんと一緒にいる。それは、ずっと前から決めていたことだから。
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