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今日から試験準備週間に入った。
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テストが終わるまで、原則、部活動、委員会活動は禁止になる。特別な理由がない限り、授業が終わったら学校に残ることはできない。
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まぁ、図書室や教室で自習したりは黙認されるので、6時くらいまでは学校に残ったりはできるんだけど。遊んでたりしてるのが先生に見つかると注意されるくらい。
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永谷恵
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今日から試験準備週間なのね。
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遠見結奈
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あ、恵。どうしたの? なにか用?
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永谷恵
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ううん、別に~。
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用もないのに教室に来るなんて珍しい。暇な時はいつもサチさんと一緒にいるんじゃないの? ちがうのかな?
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永谷恵
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大変ねぇ、テストなんて。
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遠見結奈
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大変でもなんでも、学校なんだから仕方ないでしょ。
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永谷恵
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わたしには試験なんてないも~ん。みんな、この時期になると急に勉強しだすのよね、見てておもしろくて。
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遠見結奈
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別に、この時期しか勉強してないわけじゃないわよ。みんながそうかは別として。
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永谷恵
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気楽でいいわよ~、幽霊は。試験もなんにもない!
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一応、知ってるんだ、鬼太郎。本物の幽霊に言われると、説得力あるな。
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永谷恵
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あんたはちゃんと勉強しているの?
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遠見結奈
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してるわ、一応、ちゃんと。一夜漬けに頼らなくていいくらいは。
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永谷恵
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そんな感じね。つまんない子。
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遠見結奈
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悪かったわね。
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そんな評価、聞き飽きた。いいじゃない、これで。成績はそんなに悪くないんだし。
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永谷恵
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あんたって、要領よさそうだけど、つまづいて転ぶと起き上がるのに時間かかりそう。
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遠見結奈
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! ……すっごい、余計な、お世話。
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永谷恵
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やだ、こわ~い。
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……もう、相手にするの疲れるな、この子。
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永谷恵
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サチさんが今日からは勉強がんばりなさいってさ。
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永谷恵
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それを伝言しに来たの。
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ああ、そう。もとからそのつもり。この前、サチさん自身からもそう聞いたし。
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遠見結奈
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わかったわ。テスト終わるまで、お手伝いは中断ね。
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永谷恵
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そういうこと。あ~、久しぶりにお邪魔虫なしにサチさんと二人っきり!
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お邪魔虫って私のことよね? そっちから巻き込んだくせに……。
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……まぁ、勉強もあるから、お手伝いなしってのは助かるかな。どうせみんなテストがあるから、なにか起こることもないだろうし。
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昨日、牧さんに提供する場所の掃除と整頓をした。意外と順調に片付いたから、あとはもう二回くらい、時間がとれれば大丈夫。
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テストが終わるまでに、なんとか時間を作ってもう一回、テストが終わった日に仕上げておしまい、だろう。
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放送部の双野さんと一木さんについては……、双野さんがなにか行動を起こすまで見守るって決めてあるし。
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問題ないかな。
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遠見結奈
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それじゃ、私、そろそろ帰るわよ。
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今日、水曜はスーパーちゅー丸の特売日。絶対に見逃せない。朝、チラシもちゃんとチェックしてきた。
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それに、もう一つ、今日は阿野がお泊まりで、比奈と一緒にお泊まりの勉強会。なんとかして、二人をちゃんと教科書に向かわせないといけない。
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忙しくなりそう。比奈と阿野にご馳走する夕飯も、ちょっと手をかけてあげたいし。
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永谷恵
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それじゃ、わたしもサチさんのところに帰ろっと。
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そう言って、恵が教室の天井に消えていく。便利だなぁ。
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狛野比奈
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結奈ねぇ、おまたせ。
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入れ替わりに、比奈が教室に入ってきた。陸上部のクラスメイトに、お辞儀なんかして、私の机のそばまで来る。
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遠見結奈
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もう帰れる?
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狛野比奈
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ん。
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遠見結奈
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そう。それじゃ、阿野を起こして帰りましょ。帰りにちゅー丸に寄るからね?
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狛野比奈
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ん。
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遠見結奈
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阿野、起きて。比奈来たから、帰るわよ。
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阿野藤
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んあ~。
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机に突っ伏して寝ていた阿野を起こす。また寝不足なのかな、この子。これで今日の勉強会、大丈夫なのかしら。
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デザートの手作りパンナコッタを私の部屋に持ち込んで、勉強会を始める。
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パンナコッタはブルーベリーとイチゴの二色ソース。パンナコッタ自体の甘さはちょっと控えめに。
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ちょっとカロリーが気になるけど、勉強には糖分が必要だし、いいよね。
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私もこのところはよく動いてるし、比奈は陸上部。阿野は……、ちょっとは腹についてしまえ。
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狛野比奈
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結奈ねぇ、ここ。
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遠見結奈
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はいはい。あれ? さっきまで英語やってなかった?
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狛野比奈
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ちょっと飽きた。だから、数学に変えた。
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遠見結奈
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もう……、それで頭に入ってるのかしら……。
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そう言いつつ、比奈が指している問題集のページに目を落とす。
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遠見結奈
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うわ、ちょっとすぐにわかんない。阿野、ごめん、ちょっと見てあげてくれない?
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阿野藤
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ほいほい~。
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日頃からそれなりにまじめに、予習と復習はやっている。でも、どうしても得意不得意はできてしまう。
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文系は、まぁ平気だけど、理系はちょっと苦手。
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阿野は逆に理系の方が得意だから、こうして勉強会の時は、お互いの得意科目のノートを見せ合って、わからないところを教えあっている。
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比奈は、私の勉強方法を見習ってくれてるのか、日頃からコツコツやってくれているみたいだけど……。
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陸上部で毎日、練習をしているせいか、あまり夜は強くなく、どうしても机に向かっている時間が減っているみたいで。
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城女に入学して最初のテストくらい、そこそこの点数とらせて、おじさんおばさんを安心させてあげたいんだけど。
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まぁ、あまり比奈の成績には過度に期待してないみたいだけど。元気がいいって教育方針だし。
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でも、だからこそ。試験準備週間くらいは、ちゃんと見てあげたい。
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阿野藤
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そう言えばひなちゃん、こないだは大人気みたいだったね~。
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狛野比奈
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ん~。
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見てあげたいんだけどなぁ。早速脱線してそう。
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阿野藤
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みんなかわいいって言ってたよ?
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ああ、こないだ、お弁当箱返しに、私の教室に来た時のことかな。
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阿野藤
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なんか、ちっちゃくてかわいくて、なでようとするといきなり噛みついてきそうだって。凶暴カワイイってさ。おねえさん、鼻が高いな~。
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狛野比奈
>
ん~……。
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ちょっとほめてるの、それ。
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阿野藤
>
また、遊びにおいでよ。きっとみんな、またおかずわけてくれるから。
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狛野比奈
>
ん。
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比奈もごはんにつられるんじゃありませんってば。
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狛野比奈
>
アノちゃんも、うちのクラスで話題に、なってた。
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阿野藤
>
おお、マジデスカ! どんなどんな~?
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狛野比奈
>
お姫様みたいで、おっぱい大きい先輩だって。
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阿野藤
>
きゃ~、はずかしー!
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ねぇ、ちゃんと勉強してる? そろそろ注意しようかと思ったけど、阿野のペンは比奈のノートになにか書き込んでるし。
>
阿野藤
>
他は? なんてなんて?
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狛野比奈
>
んー……、あとは、最近、学校の怪談が流行ってる。
>
阿野藤
>
あれ? あたしの話題は?
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狛野比奈
>
もうない。
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阿野藤
>
あれれ~?
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……学校の怪談か……。
>
阿野藤
>
まぁ、そういう話題ってもう定番中の鉄板だよね。ね、結奈?
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遠見結奈
>
え? あ、ああ、そうね。うちの学校、古いからそういうのいっぱいありそうだしね。
>
阿野藤
>
そうそう。お化けの一人や二人、いるよね~。
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遠見結奈
>
え、ええ……。
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確かにいるわね、屋上に二人。実物を見た私としては、今さら怪談で怖がったりもできない。
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阿野藤
>
でも、怖いお化けばっかりじゃないかもね~。
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狛野比奈
>
ん?
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阿野藤
>
すっごいかっこいい人もいたんだよ、この学校。すっごい昔の人なんだけどね。せんそー前の学生さんなんだけどさ。
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阿野藤
>
屋上から落っこちそうになった友達を、我が身を投げ出して助けた人がいたんだって。もちろん、その人は死んじゃったんだけど。
>
阿野藤
>
とつじょ! 崩れ落ちる屋上のフェンス! 宙に身を投げ出される親友! それを見た彼女は、ただ、反射的に駆けだした!
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阿野藤
>
自分がどうなるかなんて考えなかった! ただ、親友を救いたかったのだ! 落ちかけた親友の手をつかみ、引き寄せる!
>
阿野藤
>
なんとか、親友を屋上に引き戻すことに成功した、しかし、その代償に……。
>
阿野藤
>
彼女自身が身を投げることとなったのだ。ゆっくりと、彼女に地面が近づいてくる……。
>
阿野藤
>
最後に彼女が見た光景は、屋上から自分を見下ろす親友の顔なのであった。ああ、親友が無事でよかった……。
>
阿野藤
>
なんてね。以上、脚色は阿野藤でお送りしました。
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狛野比奈
>
おお~。
>
阿野藤
>
そして、彼女のその勇気と献身を讃え、その死を悼んで植えられたのが、星館校舎の横の榎の木なのでした。
>
え……。
>
阿野藤
>
ここ、ほんとみたい。榎、植えてあるしね。
>
それって……。
>
サチさんのことかな……。きっと、そんな気がする。
>
阿野の話がどこまで本当かわからないけど、サチさん、自分は事故で死んだって言ってた。
>
遠見結奈
>
ね、阿野……、その屋上ってどこ?
>
阿野藤
>
え? 星館校舎でしょ?
>
遠見結奈
>
星館って新しく建てられた校舎でしょ? 戦前だったらなかったんじゃないの?
>
阿野藤
>
建て替えたんでしょ? 昔の星館校舎じゃない?
>
遠見結奈
>
あ、そ、そうか……。
>
きっと、サチさんのことなんだろう。あの人にも、学校に通っていた時代があったんだ。当たり前だけど。
>
そして、恵にも。二人の服、黒と白のセーラー服、あれは、昔のこの学校の制服。初めて会った時は知らなかったけど、あの後、調べて知った。
>
あれが、あの二人が生きていた時の姿だったんだ。その時の制服だったんだ。
>
どんな……、学生時代を過ごしていたんだろう。なにをしていたのかな。
>
そのうち……、そんなこと、話してくれたりするのかな……。
>
阿野藤
>
めずらしいね、結奈がこんな話に入ってくるなんて。
>
遠見結奈
>
あ……、そ、その……、そろそろ注意しようと思ったんだけど、無理に中断させるのも悪いでしょ。
>
阿野藤
>
ねぇ、結奈、もっとツンデレっぽく言って?
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遠見結奈
>
なに言ってるのよ。ほら、ちゃんと勉強に戻りなさい。比奈もよ。
>
狛野比奈
>
ん。
>
阿野藤
>
は~い。
>
うん、まずはテスト勉強、しなくちゃ。今はこっちに集中。
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いつも通りの学校生活はまもらなくちゃ。それでなくても、最近、ペース乱されてばっかりなんだから。
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